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魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第三章 マゼル学園入学編

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第545話 魔力0の大賢者、後始末と決別

 ウィンガル先生とシェリー先生に、ここで起きた一連の出来事を説明した。


 途中、ウィンガル先生は何度か眉を顰め、鋭い視線をファインやバジルに向けていたが、最後まで黙って聞き続けた。


 そして話が終わると――倒れている二人を交互に見た後、静かにファインの前へ歩み寄る。


「事情は理解した」


 低く、しかし断定する声。


「だが――お前のやったことが許されることはない。相応の罪は償ってもらう」

「……わかってるさ」


 ファインは短く答えた。


 抵抗する素振りは一切ない。ただ、どこか肩の力が抜けたような、受け入れた者の静けさがあった。


「好きにしろ」


 その言葉に、ウィンガル先生が僅かに頷く。


 そしてシェリー先生へ視線を送った。


 次の瞬間――


「陰と陽、相反せし理よ――巡りて縛れ」


 静かな詠唱。


「――陰陽封鎖(いんようふうさ)双極拘環(そうきょくこうかん)


 足元に淡い陣が浮かび上がる。


 黒と白、二色の光が絡み合い、ファインとバジルの手足に沿って走った。


 カチリ、と音がしたような気がした。


 次の瞬間――


 両者の手首と足首に、陰陽の紋様を刻んだ“枷”が具現化する。


 それは鎖ではない。


 だが、見えない力で完全に拘束され、指一本すら自由に動かせない状態へと固定されていた。


「これで、逃げることも抗うことも出来ぬぞ」


 シェリー先生が淡々と告げる。


 陰と陽が均衡を保つ限り、この拘束は絶対に解けない。


 まさに“封じ”の魔法だった。


 その時――


「……少し、ファインと話してもいいか?」


 連行される直前、イロリ先生が口を開いた。


 その声は、どこか躊躇いを含んでいた。


「……一分だ」


 ウィンガル先生が懐中時計を開く。


「それ以上は認めん」


「それでいい。……悪いな」


 短く礼を言い、イロリ先生はファインの前に立った。


 二人の距離は、ほんの一歩分。


 だが、その間に積み重なった時間はあまりにも重い。


「ファイン……」


 一度言葉を切り。


 そして――


「俺は結局、お前を守れなかった」


 拳が僅かに震える。


「……済まなかった」


 深く、頭を下げた。


 教師としてではなく、一人の人間としての謝罪だった。


「頭を上げろよ、先生」


 ファインが苦笑混じりに言う。


「しかし――」

「いいから」


 少しだけ、声が強くなる。


 イロリ先生が顔を上げた。


「俺はな」


 ファインは視線を逸らさずに続ける。


「あんたが先生で良かったって……今は思ってるんだぜ」


 その言葉は、決して軽くない。


 長い時間を経て、ようやく辿り着いた本音だった。


「ファイン……」


 イロリ先生の目が揺れる。


「俺にとって“先生”って呼べるのは、あんたしかいねぇよ」


 そして、少しだけ口元を緩めた。


「それは……あいつらだって同じだろ?」


 視線が僕たちへ向けられる。


 誰も否定しなかった。


 否定する理由がなかった。


「……ま、それでも」


 ファインが視線を戻す。


「まだ申し訳ないって思ってるんならさ――教師、辞めんなよ」


 その言葉に、空気が止まる。


「俺の後輩はよ」


 鼻で笑うように続けた。


「揃いも揃って、一癖も二癖もある連中ばっかみたいだからな」

「……それは間違いないな」


 ウィンガル先生が即答した。


 そこは納得するんだね。


「……あいつらを導けるのは、あんたしかいねぇよ」


 ファインの声が、少しだけ柔らかくなる。


「だから――」


 ほんの僅か、間を置いて。


「二度と、俺みたいなのが出てこないようにしっかりやれよ。先生」


 その一言に、全てが込められていた。


「――ジャスト一分。そこまでだ」


 ウィンガル先生の声が静かに響く。


 時間は、終わりだ。


 ファインとバジルが連行される。


 その背中を、イロリ先生はただ見送っていた。


 何も言わず。


 ただ、拳を握り締めながら。


 その時――


「やっと捕まったか」


 空気を壊す声。


 振り向くと、そこにいたのはリカルドだった。


「――伯父様」


 ラクナが低く呟く。


 リカルドはそれを一瞥しただけで、興味を示さない。


 そのままファインへ視線を向けた。


「全く」


 ため息混じりに吐き捨てる。


「罪人として捕まっただけでは飽き足らず、魔狩教団にまで堕ちるとはな」


 冷たい視線。


「学園の面汚しもいいところだ」


 その言葉に、場の空気が凍る。


 誰もが不快感を覚えていた。


「だから私は言ったのだ、イロリ」


 リカルドは続ける。


「こんな屑を擁護する価値などないとな」


 鼻で笑う。


「私の判断に、狂いは――」


――ドゴォッ!!


 鈍い音。


 次の瞬間、リカルドの体が大きく吹き飛んだ。


 地面を転がり、数メートル先でようやく止まる。


「な……き、貴様ッ!」


 顔を押さえながら、怒りに満ちた声を上げるリカルド。


 その前に立っていたのは――


 イロリ先生だった。


 拳を握ったまま、静かに立っている。


「……ファイン」


 振り返る。


 その顔には、ほんの少しだけ困ったような笑み。


「悪い。……我慢、できなかった」


 その一言に、全てが詰まっていた。


 リカルドは、憎々しげにその背中を睨みつけていた――

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