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魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第三章 マゼル学園入学編

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第540話 魔力0の大賢者、決着の一拳

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

「――まだやるつもりなんだね」


 ラクナを信じ、僕は視線をファインへと戻した。


 ラーサの言葉に思うところはあったはずだ。

 それでも――その拳に宿る黒き炎は、まだ戦いが終わっていないことを雄弁に語っている。


「――お前の妹に(サラ)が重なった」


 低く、噛み締めるような声。


「確かにサラなら、俺を止めてたかもしれない」


 一瞬だけ、ファインの視線が揺れる。


 だけど――次の瞬間には、それを押し殺すように強く僕を睨み据えた。


「だけどな。その程度で復讐を諦めきれるほど――俺は人間出来ちゃいない」


 拳に力が込められる。

 黒炎が、さらに濃く、激しく揺らいだ。


「刑務所にいる間、復讐のことだけ考えてきた」


 静かに。だが確かに滲む執念。


「それだけが、俺に残された唯一の生き甲斐だった」


 そこで一度、言葉が途切れる。


 ほんの僅かに――迷いのようなものが差し込む。


 だが。


「今更――俺の意思で(・・・・・)止められやしない」


 その迷いを、自ら踏み潰すように。


 ファインは構えを取った。


「それでも俺を止めるというなら――やってみろ、マゼル!」

「……わかった。決着をつけよう」


 互いに踏み込む。


 同時だった。


 床を蹴る音。空気が裂ける音。


 そして――


 リング中央で交錯する、二つの拳。


 漆黒と――白耀(はくよう)


 闇を焼き尽くすような黒炎と、澄み渡る光のような拳。


 視界が白と黒に塗り潰される。


 拳が届く寸前。


 ほんの一瞬だけ――


 ファインの表情が見えた。


 怒りでも、憎しみでもない。


 どこか――救われたような顔だった。


「――っ!」


 衝突。


 鈍い衝撃と、骨を震わせる感触。


 熱が伝わる。


 それは怨嗟の熱。


 そして同時に――


 確かに“生きている”人間の熱だった。


 拳がめり込み、互いの体が揺れる。


 だが次の瞬間。


 力が、抜けた。


 崩れ落ちたのは――


 ファインだった。


 仰向けに倒れ、荒い呼吸を繰り返す。


「……聞いたぜ――大賢者」


 空を見上げながら、ぽつりと呟く。


 その表情は――どこか、穏やかだった。


 さっきまでの険しさが、嘘みたいに消えている。


「フンッ。終わったようだな」


「ラクナ。そっちも片付いたんだね。ありがとう、助けてくれて」

「別にお前を助けたんじゃない。妹を助けただけだ」

「ははっ。そうだね」


 素直じゃない物言い。


 だけどそれが、今は少しだけ心地いい。


 張り詰めていた空気が、わずかに緩む。


「ファイン――」


 イロリ先生がリングへ上がる。


 ゆっくりと膝をつき、ファインの拳を取った。


「済まなかった。俺が不甲斐ないばかりに」

「……俺はさ」


 ファインが、力なく笑う。


「心のどこかで思ってたんだ」


 目を閉じる。


「あんたが、生徒を見捨てるわけないってな」

「ファイン……」

「マゼルの言うとおりだ」


 小さく、だがはっきりと。


「俺は心のどこかで、あんたを信じてた」


 その言葉は、自嘲にも似ていた。


「だから後回しにした。復讐者としても中途半端だったわけだ」

「それは違うと思うよ」


 静かに口を開いたのは、ゲシュタル教授だった。


「君は踏みとどまったのさ。それは決して弱さじゃない――強さだ」


 僕も、そう思う。


 復讐に全てを捧げることは簡単だ。


 でも、止まることは――難しい。


「ファイン――約束する」


 イロリ先生の声に、強い決意が宿る。


「ギャノンのやったことは、俺が必ず暴く。白日の下に晒してやる――勿論、あいつの協力者も全員だ」

「そういうことなら、ボクも手伝うよ」


 軽い調子で割って入るゲシュタル教授。


「そっち関係はイロリンよりボクの方が得意だからね」

「だからイロリンって呼ぶな」

「あはは」


 軽口に、空気が緩む。


 ファインの頬も、わずかに緩んだ。


――その時だった。


 空気が、変わる。


 肌を刺すような違和感。


 遅れて――嫌な気配。


 僕は咄嗟に前に飛び出した。


 直後。


 眩い閃光と――爆轟。


「ギャハハハハハハ!」


 響き渡る、耳障りな笑い声。


「馬鹿が! 油断しやがって!」


 煙の向こうから現れる影。


「何が罪を暴くだ!」


 嗤う。


 嘲る。


「最後に笑うのは――この俺(ギャノン)様なんだよ!」


 戦いは、まだ終わっていなかった。

本日発売の月刊コミックREX5月号にて本作のコミカライズ版の第68話が掲載されてます!

どうぞ宜しくお願い致します!

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