表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第三章 マゼル学園入学編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

544/547

第541話 魔力0の大賢者、ギャノンに問う

「――一つ、聞きたいんだけどさ」

「あん?」


 爆煙の中から声を投げると、ギャノンが不機嫌そうに応じた。


 瓦礫の落ちる音。焦げた匂い。

 それでも、僕の視界ははっきりしている。


「君は――どうして魔法学園に通ってるの?」

「――二十本分、全部ぶち込んで無傷かよ。ムカつく野郎だ」


 吐き捨てるような言葉。

 だが、僕の問いには答えていない。


「答えてよ」


 もう一度だけ、静かに促す。


 ギャノンは舌打ちし、肩をすくめた。


「ハハッ、理由だぁ? そんなもん決まってんだろ」


 口角を吊り上げる。


「楽をするためだよ」

「……楽?」

「そうだ。学園に優秀な奴が入ってくりゃあ、そいつを手駒にする」


 指を鳴らす。


「無能な馬鹿には薬を売りつける。そんで金を巻き上げる。簡単だろ?」

「魔法薬って……違法の、だよね?」


 横から割って入ったのはドクトルだった。

 その声音には、明確な嫌悪が滲んでいる。


「あぁそうだよ」


 悪びれもせず、あっさり肯定する。


「そこにいる馬鹿の妹みてぇにな。廃人になるまで搾り取ってやるのさ」


――笑う。


 心底楽しそうに。


 その声が、耳障りに響いた。


「……っ」


 ファインの、押し殺したような呻きが聞こえる。


「違法魔法薬を売っていると、認めるんだな」


 イロリ先生の声は静かだった。

 だが、その奥にある怒りは隠しきれていない。


「認めるぜ」


 ギャノンは肩を回しながら続ける。


「だがな、それで俺をどうにか出来ると思ったら大間違いだ」


 ニヤリと笑う。


「この事業には、親父も関心を持ってるんでね」

「なにそれ」


 リミットが吐き捨てる。


「最後は父親頼みってこと? 恥ずかしくないわけ?」

「思わねぇな」


 即答だった。


「利用できるもんなら、俺は何だって利用する」


 言葉に一片の躊躇もない。


「親父は各界の重鎮にも顔が利く。あの人の力があればな――」


 笑う。


「一家全員処分したところで、どうとでもなる。罪をなすりつけることだってなぁ」


 胸の奥が、じわりと熱を帯びる。


 怒りだ。


 だが、それを押し殺す。


「……そうやって、お前は」


 自然と声が低くなる。


「自分の欲を満たすために、他人を犠牲にしてきたのか」

「何だよ、説教か?」


 眉をひそめるギャノン。


「ムカつくなぁ……だったらよ、俺も最後の手段に出るぜ」


 取り出したのは――一本の注射器。


 濁った液体が中で揺れている。


「そこに転がってる馬鹿の妹のせいでよ、俺は一年も休学するハメになった」


 嗤う。


「だがな、この薬の実験台になってくれたことだけは――感謝してやるよ」


 そして。


 躊躇なく、自分の首へと突き立てた。


「キタキタキタァアアアアッ!!」


 血走った瞳。歪んだ笑み。


 空気が震える。


 膨れ上がる魔力。


「俺の魔力は通常で2800! それがこの新薬で数倍に跳ね上がる!」


 ビリビリと空間が軋む。


「今の俺は――軽く1万を超えてるッ!」


「1万……!? 私よりずっと上……」

「マジかよ……」


 リミットとアズールが息を呑む。


 確かに、魔力だけ見れば――異常な数値だ。


 だが。


「これで終わりだァ! くたばりやがれぇええええッ!!」


 指先を向けた瞬間。


 魔弾が解き放たれる。


 連射。


 連射。


 連射。


 空間を焼き、地面を抉り、爆発が連鎖する。


 轟音。閃光。衝撃波。


 リングが崩れ、瓦礫が宙を舞う。


「どうだァ! これで木っ端微塵に――!」

「……何これ?」

「は?」


 右手を軽く振る。


 それだけで。


 巻き上がっていた土煙が、突風で一気に吹き飛んだ。


 視界が開ける。


 そこに立っているのは――無傷の僕。


「偉そうなこと言って、土埃を増やしただけ?」

「ば、馬鹿にしてんじゃねぇ! リロードッ!」


 指先が光る。


 魔力が圧縮される。


「グランドバーストキャノン!!」


 両手を叩きつけた瞬間。


 僕を中心に、地面が爆ぜた。


 抉れ、裂け、吹き飛ぶ。


 リングの一部が完全に消失し、巨大なクレーターが生まれる。


「これなら効いただろうがァ!!」

「……痛くも、痒くもない」


 軽く跳び、残ったリングへと着地する。


 ギャノンの瞳が――揺れた。


「お前の魔法は、全く怖くない」


 一歩、前へ。


 自然と圧が滲む。


「これが薬の力?」


 言葉に、熱が乗る。


「こんなものなら――」


 思い出す。


 あの拳の重さ。


 あの熱。


「ファインの拳の方が、ずっと熱かった」


 静かに。


 だが、はっきりと。


「ファインの拳の方が――僕の心に響いた!」

「だ、黙れッ!! 今度は全弾だァ!!」


 焦り。


 怒り。


 それらを塗り潰すように叫ぶ。


「フルチャージキャノン!!」


 両手から放たれる、極太の光線。


 一直線に僕を呑み込もうと迫る。


 だが。


 僕は片手を上げる。


 ただ、それだけで。


――弾いた。


 光の帯が軌道を逸れ、空を穿つ。


 雲が裂ける。


 沈黙。


「……これで、全力?」


 一歩。


 また一歩。


 距離を詰める。


「こんなものが――お前の求めた力か」


 声が低くなる。


 抑えていたものが、滲み出る。


「こんな、くだらない力のために――」


 拳を握る。


「お前は、ファインの夢を奪ったのか」


 さらに一歩。


「家族の希望を」


 そして。


「妹の未来を奪ったのか――ギャノン!!」


 空気が、軋む。


 圧が、場を支配する。


 ギャノンの額に、脂汗が浮かぶ。


「は……ははっ」


 だが、次の瞬間。


 その顔が歪んだ笑みに変わる。


「す、すげぇ……!」


 震えた声。


「マゼル、お前……すげぇじゃねぇか!」


 瞳に宿るのは、恐怖ではない。


 狂気。


「お前こそが、俺の求めていた男だ!」


 一歩、踏み出す。


「そうだ……俺と組もうぜ!」


 両手を広げる。


「お前と俺が組めば――世界を牛耳ることだって出来る!」

「……くだらない」


 即答だった。


 迷いも、揺らぎもない。


「そんなものに、興味はないよ」


 そして。


 拳を構える。


「それで――」


 静かに告げる。


「ぶっ飛ばされる覚悟は、出来たか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ