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魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第三章 マゼル学園入学編

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第539話 ラクナVSバジル

side バジル


 私の人形が――破壊された。


 本来ならあり得ない事態だ。

 大賢者の(ラーサ)を人質に取り、ファインにマゼルを始末させる――完璧だったはずの計画が、根底から崩れ去った。


 この私の計算が狂うなど。


「ラクナ――お前がどうしてここに?」


 アズールとかいうガキが、乱入してきた男に声を掛ける。

 ラクナ……こいつも魔法学園の生徒か。


「平気か?」

「え? あ、うん。ありがとう」

「て! 無視かよ!」


 ラクナはアズールを一瞥すらせず、ラーサにだけ声を掛ける。


 この状況で余裕を見せるその態度。

 癇に障る。


「ラクナありがとう」

「フンッ。別にお前の為にやったんじゃない」


 マゼルの声に素っ気なく返しながらも、ラクナは一歩前に出る。


「だが――そうだな。こっちの三下は俺が相手してやる。お前はそっちに集中しろ」


 マゼルへと視線を向けながら言い放った。


 三下、だと?


 先程から随分と好き勝手言ってくれる。

 高々、学園の生徒如きが――。


「私を三下扱いとは、随分と自信がおありのようですね」

「人形遊びが得意な程度でイキってる三下だろう、貴様は」


 即答だった。躊躇も迷いもない。


……腹立たしい。


「だったら見せて差し上げますよ。私の人形の力を」


 指先に意識を集中させる。


 張り巡らせた糸が震え、感覚が繋がる。

 まるで神経そのものが延長されたかのような感触。


――これが私のギフト【操糸操相(そうしそうあい)】。


 糸で繋いだ対象を自在に操る力。

 人形を操るのは序の口。必要とあらば、人間すらも操れる。


「いくら数を揃えても人形は人形だろう? 砕けろ!」


 ラクナの周囲に岩石が浮かび上がる。

 次の瞬間、それらが高速で回転し、弾丸のように撃ち出された。


 先程、人形を破壊した魔法。


 だが――


「見せてやりなさい。その力を!」


 糸を引く。


 人形たちが一斉に飛び出し、迫る岩石へと迎撃に入る。


――切断。


 鋭い手刀が岩を両断した。


「岩を切った!?」

「ハハハッ、残念でしたね。私の魔切りは操る人形を通してでも扱えるのですよ!」


 人形越しでも発動可能な魔切り。

 魔力を帯びた物体など、紙のように断ち切れる。


「――飛べ」


 ラクナが再び呟く。


 また岩か。芸がない。


「切ってしまいなさい!」


 糸を操り、人形に迎撃を命じる。


 だが――


 次の瞬間、視界に映ったのは。


 押し潰され、砕け散った――人形の残骸だった。


「馬鹿な……! 何故だ! 何故切れない!」

「いくら魔切りでも、“ただの岩”じゃ切れないって事だ」


 ただの……岩?


「まさか――魔力を抜いて……いや、あり得ない! 魔力を抜いた岩を操るなど不可能なはずだ!」

「全部を操る必要はない」


 ラクナが淡々と言う。


「潰すだけなら半分(・・)あればいい。それだけだ」


――半分?


 理解する。


 魔力を残した部分だけで制御し、残りを“非魔力状態”として叩きつけているのか。


 だから魔切りが通らない――!


「これでお前の玩具もなくなったな。覚悟は出来たか?」


「フハッ……フハハハッ!」


 思わず笑いが漏れた。


「中々やりますね。ですが――私の操る人形はまだある!」


 指を動かす。


 糸が張り直される。


 キリキリ、と軋む音。


「な! 俺の体が勝手に!」

「ど、どうなってるんだ?」

「ちょ、なにこれ気持ち悪い!」

「シグル! メーテル!」

「グルゥ!」

「ピィ!?」

「まさか……僕たちを人形代わりに!」


 Zクラスの生徒たち、そして獣。


 全てを糸で捕らえた。


「さぁどうですか? 仲間を攻撃できますかねぇ?」


 勝利を確信する。


 だが――


「アホかお前は」

「は?」


 ラクナが、心底くだらないものを見る目で言った。


「そいつらは仲間でも何でもない」


 淡々と。


「俺が攻撃するのに、抵抗なんてないさ」


 その言葉に、周囲がざわつく。


「ちょ、ラクナ!」

「ラクナてめぇ!」


 だがラクナは気にも留めない。


「壁にすらならんぞ」


――ハッタリだ。


 そう思った。


 だがその目は、冗談を言っている人間のものではなかった。


「うるさい連中だ。どうしても助かりたければ――」


 ラクナが視線だけで告げる。


体を石に(・・・・)でもして身を守るんだな」

「ハハハッ! 体を石にですか、面白い冗談――」


 その時だった。


 緑髪の女が前に飛び出したのは。


「私だって! やる時はやるのよ! キャ、キャァアアアァアアッ!」


 黒竜を見上げ、意味不明な悲鳴。


 次の瞬間――


 その女の体が石へと変わった。


 そして。


 糸で繋がれていた他の連中も巻き込まれ、次々と石化していく。


「な……!」


 制御が、切れた。


「残念だったな。これで終わりだ」


 上空から岩が降り注ぐ。


 だが――


「舐めるな!」


 ナイフを抜き、岩を斬り裂く。


「そんな、魔力を抜いているはずじゃ――」

「馬鹿が!」


 叫ぶ。


「私は預流向(よるこう)まで解放済みだ! この程度の岩、魔力がなくとも切るのは容易い!」


 そうだ。力で押し切ればいい――


 そのはずだった。


 だが。


 足元に違和感。


 視線を落とす。


 地面が――泥のように崩れていた。


「これは……!」


 足が沈む。動きが鈍る。


「これも魔法か! だがこんなもの――!」

「それで」


 ラクナの声。


「お前の魔切りは、同時に幾つの魔法が切れるんだ?」

「なに……?」


 その瞬間。


 頭上に影。


 見上げた先にあったのは――


 岩で出来た巨人。


 そして、無数の岩石。


「沈むか潰されるか、好きな方を選ぶんだな――三下」

「この……クソガキがぁあああぁあああッ!」


 巨岩が落ちる。


 圧し潰す力。


 逃げ場は――ない。


 まさか。


 この私が。


 この程度のガキに――


 絶叫と共に、視界が黒く塗り潰された。

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