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ダンジョン

 レオニーの背中を追って団子屋の奥に向かう。


 ちょうどシャッターが閉まって、団子屋の中が暗くなった。


「――」


「え? 今なんて……?」


 俺には到底理解できないような言語が発せられて、その瞬間、壁が動き始めた。


「え、え」


 そこに現れたのは、地下へ続くであろう階段だった。


 ひんやりとした冷気があがってきて、思わず身震いする。


「彩葉、鍛錬場使ってくるさかい。夕飯頼んだで」


「夕飯までに帰ってきてね? お母さん!」


「玖我くんの分も、よろしゅう頼むな」


「すみません、お願いします!」


 スタスタと下がっていくレオニーの背中を追い、階段を下がると、自動的に壁が閉まっていった。


 一瞬暗くなったかと思うと、ボッ! と松明かなにかが着火し、あたりを見渡せるようになる。


 一分ほど階段を降りると、急に辺りが眩しくなって、俺は思わず腕で光を遮った。


「ここは……?」


「この世界にはな、驚くようなことが、あほみたいにぎょうさんあるんや」


「……!! な、これ……!」


 地下にきた。


 そう、そのはずだ。


 それなのにここは……。


 ――太陽があって、森や平原が広がっている……!!


 俺はこれを知っている。


 これは……ダンジョン化だ。


「世界中でな、こう言う空間は、しこたま見つかっとる。それこそ、何十年、何百年も前からや」


 間違いない、これはダンジョンだ。


 まさか、そんなはずは……原作では、ダンジョンが初めて出現したのは今から二年も後のこと。


 それが、何百年も前から、あったなんて……。


万武盟(ばんぶめい)や。中国で言う武林――その世界版みたいな連盟がな、この存在を、ずっと隠し通してるんや」


「万武盟――!」


 聞いたことのある連盟どころじゃない。


 原作において、覚醒者であるダイバーを束ねる協会の前身じゃないか。


 なるほど……あの世界恐慌なみの動乱からすぐ、ダイバーたちを束ねることができたのは、もともとダンジョンという存在を知っていたからなんだ。


「この空間にはな、ようわからん生き物が、うじゃうじゃおる。そいつらを倒せる者だけが万武盟に加盟して、地上に影響が出んよう、定期的に討伐しとるんや」


「でも……危なくないですか? 生身の人間ですよね?」


「せやな。せやから、万武盟に入れるんは、限られた人間だけや。……その条件、わかるか?」


「わ、かりません……」


「真伍の修羅意拳。ウチの護界殺刀(ごかいさっとう)。そして、百獣真伝(ひゃくじゅうしんでん)。この三つの武術のいずれかを学んで扱える者やないと……万武盟に入るどころか、この空間のことすら、知ることはでけへんのや」


「え、でも俺は……」


 どの武術も扱えないけど、と考えた瞬間、レオニーがにやりと笑う。


「お前は、ウチの弟子になるっちゅうわけや。つまり、護界殺刀が使えるようになる。……知る機会が、ちょい早うなっただけやろ?」


「え……あの、もし、俺がその、護界殺刀? を扱えるくらいにまでなれなかったら……」


「その時はまあ……この空間、警察も入れへん場所やさかいな」


 ……つまり、そういうことか……やばい、逃げ道が一切なくなってしまった……。


「まあ、扱えるようになるまできっちり教えたる。せやから、安心しとき」


「うっ、は、はい……」


 ばんばんと肩を叩かれて、大きく体が揺れる。力強いなこの人……。


「で……今からウチが師になるわけやけど……」


「え? はい。……あ! し、師匠!」


 はっと思い至ってそう呼ぶと、レオニーは満足そうに大口を開けて笑った。


「それや、それ。弟子取るんなんて久しぶりやさかいな、一回は言わせときたかったんや」


「改めて、玖我真昼です。よろしくお願いします、師匠」


「おう。よろしゅうな、真昼」


 そういって、がしゃがしゃと頭を掻き回される。


 相変わらず体はぐらぐら揺れて、いつかなれる日が来るんだろうか、と苦笑した。


「今日はここを見せときたかったんや。疲れとるんやったら、もう家戻るけど……どうする?」


「明日からはここで稽古するんですか?」


「その通りや。まあ最初はな、森の中走ってもろたり、筋トレしてもろたり……そんな感じからやな」


「じゃあ……今日、さわりだけやってみたいです。それでもいいですか?」


「ま、さわり程度やったら疲れへんやろ。よし……ほな、こっちついておいで」


「はい!」


 丘の向こうにあった森に向かっているらしく、俺はレオニーの背中をすこし早足で追った。


 森に入ると、ぞわりと鳥肌が立つ。


「カンはええ感じやな。……気付いたか、あいつの気配に」


「あいつって……まさか」


「そうや。ダンジョンにはな、ボスがおる。ファンタジー小説でもかじっとるやつやったら、すぐわかる話や。……せや、ここにはボスっちゅうやつがおるんや」


「ボス……それは、倒さなくてもいいんですか? そもそも、万武盟はダンジョンをどうやって管理しているんです?」


「大抵のダンジョンはな、さっさとボス殺してしまいや。せやけど、ここは違う。……ボスを手懐けた者がおる。せやからこそ、ここは護界殺刀の鍛錬場として、許されとるんや」


「ボスを手懐ける!?」


 そんなの、原作の中にも出てこなかった設定だ。


 裏設定としてはあったのか? それとも、この世界は原作とは少し違う、パラレルワールドというやつなのか……?


「ボスを手懐けたんは、ウチの親父や。若い頃にな、ダンジョンの出現に出会して、そのままボスを手懐けよった。その上に家建てて、ずっと管理しとったんや。……団子屋始めたんは、ウチやけどな」


「師匠とかは襲われないんですか?」


「昔はな、何度も殺されかけたわ。せやけど今は……ウチも、ちゃんと認められとる」


「へえ……」


「真昼もや」


「え?」


「最終段階では――ここのボスに、直々に認めてもらうさかいな」


「……はい」


「ま、安心しとき。ウチみたいに傷のひとつやふたつは残るやろけど……死なせへん。ちゃんと、そばに立っといたるさかい」


 なるほど、その傷はボスにつけられたものか……。


 裂傷、つまり、爪や……牙が武器となるボスか。剣や刀といった刃物の傷にしてはガタガタすぎるしな。


「今日はボス――シルヴァリオンに挨拶だけしといて、あとはちょい湖で涼んで、終いにすんで」

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