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竜魔王~弐の姫外伝~  作者: 月哉
別離と邂逅
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巨大なコウモリのような漆黒の翼と黄金の瞳をもつ種族は、数多(あまた)の種族が存在するこの世界でも一つだけ。


そしてその種族は、200年ほど前にたった一人を残して滅んでおり、生き残ったその者は現在……最強の魔王として世界中に知られている。


「ど、ドラゴンロード!?」


二つの特徴で、魔族達は目の前にいる者が何者か……いや、この世界最強の魔王『竜魔王(りゅうまおう)』だと気づく。


「ほ、本当に来た!?」


「ま、まさか!クイーンの要求に応えてくれるのか!?」


「あの竜魔王が!最強の魔王が俺達に味方してくれる!?」


竜魔王がこの地に来たのは、この虫型魔族達を束ねる魔王…彼等のクイーンに呼ばれたからだった。


まさか本当に来るとは思っていなかった為、動揺している魔族達。


それでも相手は世界最強の魔王であり、自分達を束ねるクイーンの要請で訪れた、いわば王の客人。


魔族達は竜魔王へ一斉に頭を下げる。


「よ、ようこそお越し下さいました!」


「く、クイーンなら!奥の宮に居られます!」


「お、俺達が案内を!……………は?」


最後の一人、カマキリの魔族が少しだけ頭を上げ、チラリと竜魔王を見ると竜魔王はこの魔族達に背を向けていた。


それどころか……あの人間の女を優しく地面に寝かせている。


「あ、あの?ドラゴンロ」


尾を斬られたサソリの魔族が恐る恐る竜魔王へと声をかけるが……その言葉は最後まで続く事はなかった。


竜魔王が虫型の魔族達に振り返った瞬間、魔族達の体は全身が切り裂かれ、辺りに血が飛び散る。


「「「ぎゃああああああああ!」」」


痛みに(もだ)え苦しむ魔族達だったが、竜魔王はそんな彼等を冷たく…そして汚物でも見るような眼差しを向けた。


「誇り高き竜王族のこの俺が、虫けらの味方だと?魔族だからと図にのるな」


「な、何故!何故ですか!?貴方様は!クイーンの為に!」


血だらけになっても叫び続けるクワガタの魔族に、竜魔王は冷たく言い放つ。


「俺がここに来たのは害虫駆除の為だ。だから」


竜魔王は右手を前に出し魔族達に掌を向ける。


「汚い虫はさっさと潰れろ」


「っ!!?」


パンッ!!


「ぐぁあああ!」


竜魔王がそう告げ軽く拳を握り締めた直後、クワガタの魔族とサソリの魔族の体が一瞬で弾け、(ちり)となり消えていった。


他の二人と違い負傷していなかったカマキリの魔族は、瞬時に攻撃が来る事を見抜き、ギリギリでそれを避ける。


それでも…体の半分は消えてしまった。


「く、クソ!クソぉぉぉぉ!」


「うるさい。だから虫は嫌いなんだ」


「ただで死んでやるかぁ!!」


カマキリの魔族は残った片手…(かま)で空中を何度も切り裂く。


それはカマイタチのような斬撃となり竜魔王へ向かっていくが、そんな物、竜魔王にはそよ風と同じ。


彼は避ける事もせず、斬撃は竜魔王の体に当たるが弾かれるだけ。


その弾かれた攻撃の一つが後ろで横たわる成海の手へと当たり、彼女の手に巻いてあったハンカチがちぎれる。


「これぞまさに……虫唾(むしず)が走る…だな」


竜魔王は忌々しげに呟くと、カマキリの魔族を睨みつけ軽い眼光を放つ。


竜魔王は本当に軽く、ほんの少し魔力を込めて睨んだだけ。


それでもこの虫型の魔族には大きすぎる攻撃だっのか、今度こそカマキリの魔族は他の二人と同様にパンッ!と破裂音を響かせ、(ちり)となり消えてしまった。


「これでうるさい虫は消えたな。……さて」


竜魔王は地面に横たわる成海へと振り向き、彼女の直ぐ傍で片膝を折りその体をまじまじと見つめる。


成海の腹部にはあの巨大なサソリの尾が刺さったままで、今も腹部から血が流れ続けていた。


黒い瞳は竜魔王を見つめているが、段々とその光は失われている。


もうろくに目も見えておらず、目と鼻の先にある竜魔王の姿すら彼女にはハッキリと映っていないだろう。


そんな死にかけの人間の女を見つめる竜魔王の顔には……歪んだ笑みが浮かんでいた。


(………この力…気配……やはり間違いない。奴と同じ。俺の一族を滅ぼした……あの覇王と同じ存在)


憎い仇と同じ存在であるはずなのに、竜魔王の中には成海に対する嫌悪も憎悪も湧いてこない。


それは……それ以上の感情が…欲望が、彼の心を支配していたからだった。


竜魔王はここ最近、魔族や人間、数多の種族が噂していた話を思い出す。


(想造世界から来た女王は…もうすぐ力を失う。だから次の王となる使命を持った者が二人、この世界に現れた。一人目は男で…二人目は確か……女だったはず)


この世界を束ねる、異世界から来た人間の女王。


その王位の交代が近々行われる事、王位継承者が新たに異世界から二人来た事は、世界中ありとあらゆる種族の間で噂になっていた。


竜魔王は他の種族と一切の関わりを断っているが、それでも風の噂というものは流れてくる。


だからこそ確信した。


目の前で死にかけている人間の女は、ただの人間の女ではない。


想造世界という、この世界の元となった異世界から来た……王位継承権を持つ者の一人。


そして


かつて世界最強と言われた自分の種族を一瞬で滅ぼした……あの覇王と同じ。


この世界すら滅ぼせる力を持つ者だ、と。


(覇王と同じ存在なら……この女も強くなる。この女なら……女王や覇王と同じ…俺や他の魔王よりも恐ろしい力を持ってる)


覇王が世界最強の竜王族を滅ぼせたのは、多くの魔族を吸収したからだけではない。


異世界から来た女がこの世界の女王として君臨し続けていられるのは、政治力や人徳だけではない。


想造世界から来た者は……誰一人として例外なく……魔王よりも恐ろしい力を持っている。


想造力という……彼等にしか使えない絶大な力を。


その力を持つ者を見た事で、竜魔王の中には…かつて諦めた想いが蘇る。


それは今、かつて頭を過ぎった時よりも鮮明に……(よこしま)に…強く。



(俺だけじゃ無理だ。不可能だ。でも…この女がいれば……この女を使えば……俺はこの世界を滅ぼせる!)


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