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竜魔王~弐の姫外伝~  作者: 月哉
二人の婚約
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あれから1ヶ月後。



ここは城にある女王謁見(じょおうえっけん)()


今ここには女王と宰相(さいしょう)しかいない。


女王は成海と絆の家庭教師、そして猛虎(もうこ)将軍からの報告書を(にら)みつけるように(なが)めていた。


その報告書とは絆と成海の勉学や剣術の成果、二人の授業態度など事細(ことこま)かに(しる)されていた。


睨みつけるように報告書を見る女王の姿は、誰の目にも怒っているのがわかる。


「ついに成海(なるみ)も……ファイアーボールを使えるようになったか」


ボソリと…しかし怒りや不満のこもった声で呟く女王。


(そば)で控えていた宰相は、それを知りつつもいつも通り女王へと発言する。


「一人目に比べ二人目は魔力の発達が(とぼ)しい傾向(けいこう)にあります。それを考えれば…姫様の成長は」


「わかっている!そのせいで優貴(ゆうき)は多くの魔族を吸収し魔王になったのだ!膨大(ぼうだい)な魔力を扱えるように!覇王(はおう)となる為…この世界を滅ぼす為にっ!!」


「……陛下」


持っていた報告書をグシャリと握りつぶしながら、女王は怒りの矛先(ほこさき)を宰相へと変えた。


宰相はただ悲しげに女王を見つめ返す。


「この報告書を見たかっ!成海(なるみ)は勉学において(きずな)より遥かに優れている!その差は圧倒的だ!魔法が使えぬと油断しておれば、もう攻撃魔法を使えるようになったなど!攻撃魔法を覚え!この世界をどうする気だ!!」


「陛下。絆様も姫様も陛下のお言いつけ通り、日々学んでおるだけにございます。姫様には邪心(じゃしん)など」


「何を言っている!宰相ともあろう者が!二人目を(かば)うなど恥を知れ!絆も絆だ!二人目に(おと)るなど!王位継承者としてなんと情けない!」


激昂(げっこう)する女王にはもはや何を言っても無駄だった。


女王は玉座の肘置きをダンッ!と叩くと頭を抱える。


「二人目が…二人目が一人目より(すぐ)れるなど…あってはならない。そんなこと……認める訳にはいかない」


それはつまり『女王は成海のことを一切認めていない』ということ。


成海個人ではなく『二人目』という、どうしようもない理由だけで。


成海はあのメイド達の陰口を聞いた後も、絆やエリカと共に日々を過ごし、勉強や剣術、魔法に(はげ)んできた。


この世界に認められるように、と。


成海は毎日遅くまで部屋で勉強し、この世界について学んだ。


毎日欠かさず将軍から魔法の授業を受け、やっと先日小さなファイアーボールを出せるようになった。


あの報告書の内容は、成海の努力の成果でもあった。


しかしそんな成海の努力の結果こそ、女王の逆鱗(げきりん)()れる行為だったのだ。


「無能な二人目ならば目を(つむ)ってやったというに。成海…あやつも所詮(しょせん)は二人目。この世界を乱す元と()()る存在か」


「お言葉ですが陛下…それを判断するのは時期尚早(じきしょうそう)ではありませぬか。姫様は下々への気配りも出来、絆様やエリカ嬢とも仲が良く…この世界を滅ぼす存在とは思えませぬ」


宰相はあえて女王の望まない言葉を紡ぐ。


怒りに触れると覚悟して放った言葉だったが、女王はピクリと反応した。


「………エリカ?…そうだ。…エリカと絆の婚約の話があったな」


「???はい。姫様が現れた事でそれを先延(さきの)ばしにして参りましたが…絆様とエリカ嬢の婚約が何か?」


「そうだ。…婚約だ。その手があったではないか」


「陛下?」


「直ぐに絆を連れて参れ!今すぐにだ!!」


「………かしこまりました」


女王のいきなりの命令に困惑しつつも、宰相は謁見(えっけん)()を出て近くの使用人に絆を連れてくるように命じる。


宰相が謁見の間に戻ると、先程までの怒りは何処に行ったのか、楽しげに微笑む女王の姿があった。


あまりにも違和感のある姿に宰相は今まで何度も感じた不安を抱く。


(陛下……最近の陛下はとても情緒(じょうちょ)が不安定でおいでです。怒り出す頻度も増えた。それはやはり…姫様の存在が陛下を………いいや…それだけではない。姫様だけが問題ではない)


宰相は今の女王の怒りの原因が成海である事を知っているが、自分の考えを否定した。


確かに女王は、成海が来てから怒りやすくなった。


しかし…それより前からこの兆候(ちょうこう)は現れていたのだ。


それこそ絆が現れてからも…その前も…急に怒りだし臣下を断罪する姿を何度も見てきた。


その都度自分が(なだ)めようとするも…半分は話を聞いてすらくれなかった。


(元々陛下は気性の荒い方だが…私が宰相についた頃はこうではなかった。魔族へ怒る事があっても…ここまで周りに当たり散らす方では無かった)


自分の知る女王は…もっと聡明(そうめい)で世界を愛する女王だった。


世界を救ったことに、この世界の女王であることに誇りを持つ…そんな女王だった。


なのに何故?


(ここ数年…それこそ10年ほど前は、陛下のこんな姿…予想すら出来なかった。またヴィクターに陛下へ薬を献上(けんじょう)するよう(めい)じなくては)


「宰相。なにを一人で突っ立っておる。ここへ参れ」


「………はい。陛下」


ニコニコと楽しげな笑みを浮かべる女王に、宰相は懐かしさと不安を覚えながらも彼女の傍へ戻った。




数分後。


絆が(あわ)てたように謁見の間の扉を開け、その場で勢いよく頭を下げた。


「陛下!えと…失礼します!」


「うむ。よく来た絆。近くに参れ」


「あ、は、はい」


絆は少しビクビクとした様子で女王の正面まで歩くと、その場に(ひざまず)いた。


いかに勉強の出来ない絆でも、これが最低限の礼儀だと(わきま)えている。


しかし頭を下げた絆は冷や汗をかきながら、不安そうな表情を浮かべていた。


(いきなり陛下からの呼び出しなんて…これって絶対お説教だよな。この前のテストで12点しかとれなかったことを怒られるとか?それとも…廊下を走って高そうな花瓶(かびん)を割ったこと?それとも…)


自分がしでかした内容を思い出し、一人で冷や冷やしている絆。


だが女王は楽しげに絆を見つめると彼に声をかける。


「頭を上げよ、絆」


「は、はい!あの…陛下!本当にすみませんでした!!」


一度頭を上げた絆だが、大声で女王へ謝罪するとまた勢いよく頭を下げた。


絆の行動の意味がわからず首を(かし)げる宰相だが、女王はやはり楽しげに笑っている。


「ふふ。何を謝る?別にお前を怒るために呼び出した訳じゃない」


女王の言葉が意外だったのか、絆は恐る恐る顔を上げポカンとした表情で女王を見つめ返した。


「……え?そうなんですか?…じゃあ…俺になんの用があって?」


「絆様。陛下の御前(ごぜん)です。お言葉には」


「よい、宰相。絆…お前に聞きたい事がある」


「俺に…ですか?」


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