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竜魔王~弐の姫外伝~  作者: 月哉
一人目~王位継承者~
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4


「私は絆を…あの子を信用しきれない。…あの子に…この世界を任せていいものか…決めかねている」


自分の正直な気持ちを吐き出す女王。


それに対し、宰相も自分の考えを告げる。


「陛下。その想いはごもっともでございます。だからこそ…後見となる力ある貴族が必要…と、陛下も考えておられるのでは?」


「わかっている。それでも…この中から選ぶ気など起きるはずもない」


女王はヴィクターの持つ手紙を見て、またうんざりと頭を抱えた。


「どうすればいい?この世界の為に…私はどうすれば……何をすれば…」


「陛下」


悩む女王にヴィクターは自分がここに来た目的を話そうと口を開きかけてやめる。


それを告げるには…この宰相が邪魔だ。


自分一人なら、いくらでも女王を意のままに出来る。


ヴィクターがその気になれば、女王を操る事も出来るのだ。


しかし…それを誰かに見られるのは厄介極まりない。


その時、この謁見の間にある者が現れた。


それは一人の兵士。


「申し上げます!陛下!また魔族が街を襲ったとの情報が入りました!」


魔族…という言葉を聞いただけで、女王は表情を険しくし拳を握りしめる。


「…クソ……貴族以上に忌々しい魔族共め。直ぐに軍を派遣し、その魔族共を討伐しろ!」


「陛下。連日の魔族襲撃の件や先程の件で陛下はお疲れでしょう。軍の事は宰相と将軍にお任せし、陛下は少し休まれてはいかがですか?私がまた…心安らぐ薬をお出しします」


ヴィクターは今が機会とばかりに女王と宰相に進言する。


女王はヴィクターの言葉に頷くと宰相へと声をかけた。


「うむ。…そうだな。頼めるか、宰相」


「お任せ下さい。そこの者!私について参れ!」


「はっ!かしこましました!宰相閣下!」


ヴィクターの思惑(おもわく)など知らず、宰相は兵士と共に謁見の間を出て行った。


扉が閉まったのを確認すると、ヴィクターは女王へと歩み寄り別の小瓶を渡す。


「陛下。こちらをどうぞ。いつものお薬です」


差し出された小瓶を、今度はそっと受け取る。


「いつもすまないな。こればかりはヴィクターにしか頼めない」


「いえ。陛下の為ならば、いくらでも。この秘術は…娘にも伝授しております」


「娘…エリカに?あの子は賢い子だからな」


「陛下にお褒め頂き、親として身に余る光栄にございます。して陛下…私がここに参りましたのは…娘の事でお話が」


「エリカの話?あの子がどうかしたか?」


自分とも懇意(こんい)にし、よく城の図書室にも来ているエリカの話と聞いて女王も興味を持つ。


ヴィクターはそんな女王の瞳を真っ直ぐに見つめ返した。


王都に来た時、捨てたはずの野心。


それは彼の心の中で(よみがえ)り、もうヴィクター本人には止められない。


七つの王族として、女王に、そして世界の為に生きようと決めた。


だからこそ女王に仕え、女王の為に生きようと思っていた。


たった今差し出した小瓶とて、女王の為。


今までは女王の心を安らげる為に、と連日薬を…薬となる自分の血を捧げてきたヴィクター。


女王の体には自分の血が…どんな毒にも薬にもなるリスクの一族の血が入り、蓄積されている。


彼女の…世界の女王を意のままに操る事は………けして不可能ではない。


「ヴィクター?黙り込んでどうした?」


「申し訳ございません、陛下。娘のエリカですが…親の私から見ても…あの子は美しい。その上、賢く品があり、淑女として、王族の娘として優れた娘でございます」


「ふふ。親の欲目…とは言えないないな。あの子が美しく、いい子なのは私も知っている。エリカは素晴らしい女性だ」


「ありがとうございます。だからこそ私はそんな娘に…相応(ふさわ)しい相手を、と」


相応(ふさわ)しい相手?それは一体…………っ!?」


その言葉で、今の今まで貴族達からの手紙を見ていた女王は…ヴィクターの企みに勘づいた。


そして軽蔑するようにヴィクターを見つめる。


「まさかとは思うが…ヴィクター」


「陛下。私の目を…よくご覧になって下さい」


自分の言葉を遮るヴィクターに、女王は眉をひそめた。


だが『目を見ろ』と言われれば、無意識にでも、女王の視線はヴィクターの瞳へと向く。


新緑の瞳を見つめると…女王の意識は段々と眠気を催したように、薄らいでいった。


上手く思考が働かず、うつらうつらと頭も軽く揺れている。


「…ヴィ…クタ……まさ…か……毒…を?」


女王の問いに微笑みながらもヴィクターは首を横に振る。


これは毒ではない。


いかにリスクの一族といえ、自分より魔力の強い物に毒を発生させることは、それなりのリスクがある。


相手が女王なら尚更だ。


しかし…殺傷性の高い毒ではなく、薬ならば容易い。


それも連日同じような薬を発生させているのなら、成功率は更に高まるだろう。


その薬は……強いて言うなら…麻薬のようなもの。


それをヴィクターは自分の血を使い、女王の体に発生させたのだ。


何日も…何年も……女王の望むままに。


だからこそ、ヴィクターは微笑みながらいつものように女王へ告げる。


「いいえ、陛下。これはいつものお薬と同じです。陛下がいつも心安らぐ、あの夢と…同じなのですよ」


「…そぅ…か……夢…か」


その言葉に女王も微笑みを返す。


そう…これはいつものこと。


女王がヴィクターの血を飲むのも、それにより麻薬のような幻覚症状が出るのも。


わかっていて…女王はそれを飲んでいるのだから。


わかっているからこそ…一時の夢に…一瞬の幻に……かつて愛した彼を求めているのだから。


女王の意識が完全に呑まれた時…ヴィクターは女王へと(ささや)く。






「陛下。どうか我が娘エリカを…絆様の妃……未来の王妃に…」



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