表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜魔王~弐の姫外伝~  作者: 月哉
『覇王と死王』
11/67


それは死王にとって、とても面白くない。


本音を言えば、今直ぐ王都に行って姫を(なぶ)(ごろ)しにしたい死王。


しかし本当にソレをしてしまえば…きっと覇王は死王を許さない。


覇王の命が尽きるその時まで…彼は死王を嫌い、恨み、拒み続けるだろう。


とても面白くないが、覇王に拒絶されるのはもっと面白くない…それだけは嫌だった。


長い長い時間の中で、初めて出来た友達。


あんな女の為にせっかく出来た友を失いたくない。


仕方ないと思いつつも、死王は渋々と覇王の提案を受け入れた。


「…わかったよ。ハオ君がそうしたいなら…あの女はハオ君に任せるね。でも…絶対に殺してよ?あの女に情けをかけたり、手加減しちゃダメだよ?そうしたら、さすがの僕もブチ切れて…ハオ君を殺しちゃうから」


「…ふっ。あぁ、わかったよ。約束してやる」


覇王は死王の言葉に笑みを浮かべ、グラスを持ち上げた。


死王も覇王と同じようにグラスを上げ、二人は同時に酒を飲む。


グラスの酒を飲み干すと、覇王は酒を注ぎ直すが、死王は面倒になったらしく直接瓶に口をつけて飲み始めた。


「…お前な…子供がジュース飲んでるんじゃないんだぞ。酒飲んでる時くらいは、姿変えるか前のに戻すかしたらどうだ?」


「…んく……プハッ。ハオ君に言われたくないな。想造世界じゃ『20年は生きないとお酒飲んじゃダメ』って昔聞いたよ。いいの?」


「いいんだよ。どうせ向こうでも、学校や親に隠れて酒飲んでる奴は腐るほどいたし」


「僕だって、こう見えて1000年と……300…500…?……とりあえず!いっぱい生きてるからいいんですー」


「俺だってもうこの世界に来たからいいんですー。覇王様だからお酒飲んでいいんですー」


子供のように答える死王に合わせて、覇王もまた子供のように口を尖らせた。


しばしそのまま見つめ合う二人だったが…それは長く続かずに二人同時に吹き出す。


「…プッ!」


「フッ…フフ…ハハッ」


「アハッ!アハハハハハッ!ハオ君似合わなーい!」


「お、お前だって!年寄りのクセに若作りしすぎだろ!」


何故かツボに入り二人揃って声を上げて笑う。


とてもくだらない内容なのに、とても楽しく感じるのは…それは相手が大切な友だから。


友達と一緒なら…どんなに小さなことでも…楽しく感じるから。


「そういえば…お前も名前捨てたって言ってたな」


「うん。なになに?名前無いと呼びづらい?ハオ君が名前付けてくれるの?」


「そうだな………ん~…俺とお(そろ)いで『シオ』」


「なにそれ!却下っ!ハオ君とお(そろ)いは嬉しいけど『シオ』は無い!シオってお塩みたいじやん!」


「じゃあ『ソルト』」


「結局塩じゃん!やだよ!死王でソルトとかもうギャグじゃんか!」


「覚えやすいだろ。名乗る時はカッコつければいい。『我が名はソルト。死王なり』……プッ!ハハハッ!ただのダジャレだな!カッコつけたら余計にバカっぽい!アハハハハッ!」


「んもうっ!ハオ君のおバカっ!いじわるー!」


本当に話の内容はくだらないものばかり。


それでも二人は、言葉を交わし、笑みを交わし、酒を交わしていく。




それからも二人だけの酒宴は続いた。


だがいつの間にか、朝日が窓から差し込んでいる。


「…あれ?もう朝?よし、飲み直そっか」


「アホ。お前と違って俺は酔ってるし、眠いんだよ。お前、これだけ飲んで本当に酔ってないのか?」


「ほろ酔いはしてるよ~。ハオ君と飲むお酒は美味しいもん」


「ほろ酔い…ねぇ」


覇王はテーブルに所狭(ところせま)しと積まれ、そしてテーブルの下にも転がる酒瓶を見る。


これだけの量のほとんどを死王が飲み干したのだ。


「あ~、ハオ君疑ってるでしよ?ダメだよ。友達を疑うなんて」


「むしろ疑わずにいられないだろ、この状況。さて、俺はそろそろ本気で寝る」


「仕方ないな。じゃあ僕も今日は帰るよ。でも次来た時は…遊んでね!」


「まぁ…考えとく」


本音を言えば嫌だし、いっそ無視してやろうかと思ったが…その方が面倒だと知る覇王は仕方なくそう答える。


覇王の言葉に満足した死王は、余程嬉しかったのかスキップしながら部屋を出て行った。


「…魔王とか死王より……台風みたいだな、あいつ」


フッ…と笑いながら覇王も寝室へと向かう。


一人になると…頭の中を過ぎるのはいつも彼女の姿。


「……未練…か。確かにそうさ。…まだ…俺はあいつを…」


自分で言いかけた言葉に、覇王は首を振った。


「今更だ。俺と彼女の生きる意味も…道も…もう正反対なんだから。それでも…彼女を殺してでも…俺はこんな世界…壊してやりたいんだよ」


誰に語るでもなく呟く言葉。


誰に向けた訳でも無い言葉。


それは自分に向けた言葉。


「だから…その時が来たら本気で…全力で戦う。姫や女王がいたら…この世界はいつまでも変わらない。俺が…最後になる。俺が終わらせるんだ。俺もこの世界を作った…想造世界の人間だから」


強い決意を胸に覇王は眠りについた。




起きたらまた死王が遊びに来ていて、仕方なくそれに付き合った。



次の日はある魔王が傘下にしてくれと、部下を引き連れ訪ねて来た。



また別の日には、魔族達が目障りな人間の国を滅ぼしてほしいと頼みに来た。



それが終わるとまた死王が『今日こそ全力で遊ぼう!』と乗り込んできた。



覇王はそれなりに忙しくも、充実した毎日を過ごした。




姫と戦うその日まで。





覇王が竜王族を滅ぼした年から三年後。



この世界の命運をかけた姫と覇王の戦いが行われた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ