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愚者の行進  作者: 苔氏
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傲慢の終焉、そして白光の夜明け

「……僕たちの、勝ちだ……っ」

顔中を涙と鼻水で汚し、濡れたズボンのまま立ち上がった進の宣言。それは小さく、掠れた声だった。しかし、最上層の玉座の間を震わせるには、それで十分すぎるほどだった。

「バカな……、あり得ん! お前たちのような無価値な羽虫が、余の用意した完璧な地獄を耐え切るなど……そんなことが、あってたまるかッ!!」

玉座から身を乗り出し、皇帝が狂ったように絶叫する。その端正だった顔は怒りと屈辱で醜く歪み、周囲を威圧していた圧倒的な覇気は、いまや見る影もなく霧散していた。

その時、玉座の間のシステムが、冷酷なエラー音を鳴り響かせた。

『警告。システム全体の統御権が消失。……【皇帝】の固有権限を剥奪します』

「な……ッ!?」

皇帝が自身の両手を見つめる。その指先から、パラパラと灰のような黒い粒子が溢れ出し、虚空へと溶け始めていた。進が精神力でゲームを完全攻略した瞬間、このデスゲームそのものが皇帝の手から離れ、崩壊を始めたのだ。

「余が消える……? この世界を統べる、絶対の王であるこの余が……このような、排泄物に塗れたガキどもに敗北して消え去るというのか……ッ! 認めん、認めんぞぉぉぉぉッ!!!」

自身の消滅を前に、皇帝は狂乱し、呪詛の言葉を吐き散らしながら進へと手を伸ばそうとする。しかし、その身体は足元から急速に光の塵へと変わっていく。

どれほど叫ぼうとも、どれほど拒もうとも、絶対のルールに守られていた傲慢な王は、ルールを破られた瞬間にただのデータへと還る運命だった。

「おのれ……大罪人どもめ……! ガキどもめぇぇぇぇッ!!!」

最後にひときわ大きな絶叫を残し、皇帝の肉体は完全に弾け飛び、無数の黒い粒子となって、最上層の虚空へと惨めに消え去っていった。

絶対的な支配者の、完全な消滅。

皇帝が消えたその瞬間、玉座の間の空気が劇的に変わり始めた。

どんよりと部屋を包んでいた悍ましい気配が消え、世界のシステムが再構築されていく。

ガガガガガ……ッ!!!

重々しい地鳴りのような音が響く。進が驚いて目を凝らすと、皇帝が座っていたあの禍々しい、漆黒の玉座が強烈な光を放ち始めていた。

黒い塗装が内側から剥がれ落ちるように、あるいは光の絵の具で塗り替えられていくように。不気味な黒鉄の玉座は、またたく間に、およそこの都市には存在し得なかった、一点の曇りもない「純白の玉座」へとその姿を変えていった。それはまるで、傲慢の王による支配が終わり、この場所が本来あるべき清浄な姿へと還った証のようだった。


そして、変化は最上層だけにとどまらなかった。

キキィィィィン――ッ!!!

都市の天辺から、波紋のような白い光の衝撃波が、階層を突き抜けて国中へと一気に広がっていく。

禍々しいネオンで不気味に発光していた鉄殻都市の街並みが、その光に洗われていく。狂ったように鳴り響いていたデスゲームのシステム音は完全に沈黙し、空を覆っていた重苦しい鉄の雲が割れ、そこから本物の、温かい太陽の光が都市へと降り注いだ。

国は、正常な姿を取り戻していく。

しかし、キースたちがそれぞれのあの凄絶な肉体的精神的ダメージは簡単に消え去るわけではない。彼らの精神は、いまや完全に削られ、心も体もボロボロの満身創痍の状態だった。

だが――。

「進……ッ! ニコ……ッ!!」

ゲームの終了と皇帝の消滅を確認した瞬間、後ろで倒れていたキース、ガルード、ルナ、ハクの4人は、満身創痍の身体を引きずるようにして必死にその身を起こした。

限界を超えた疲弊に激しく息を切らせ、もつれる足取りのまま、彼らは床を汚して立ち尽くす二人の少年に向かって、なりふり構わず必死に駆け寄ってきた。自分たち大人が不甲斐ないばかりに、この幼い子供たちにどれほど過酷な地獄を背負わせてしまったか。その申し訳なさと、二人を今すぐこの手で抱きしめて救いたいという一心だった。

「はぁ……、はぁ……」

4人が必死にこちらへ走ってくる足音を聞きながら、進は、床でようやく目を覚ましたニコを優しく抱き寄せた。

ニコは、激痛からの解放と皇帝に勝利した安堵から涙を流しながら進の身体にすがりつく。

そのニコを抱きしめる進もまた、4人分の倍加した地獄の激痛、そして何より「みんなを守り抜いた」という強烈な安堵感から、大粒の涙をボロボロと流した。二人の精神もまた、大人たちと同じく、これ以上は一歩も進めないほどの満身創痍だった。

「やった……やったよ、ニコ……」

「うん……進、ありがとう……っ……」

眩い太陽の光が、開かれた最上層に降り注ぎ、純白の玉座を優しく照らし出していく。世界が完全に正常へと戻っていくその美しい光景の中で。

お互いを壊れそうなほど強く抱きしめ合ったまま、進とニコの二人は、張り詰めていた精神の糸がぷつりと切れたように、同時に深い意識の闇へと落ちていった。文字通り、持てる魂のすべてを使い果たした、寄り添い合っての完全な気絶だった。

「進ーーーッ!! ニコーーーッ!!lll」

満身創痍のキースたちが、床に倒れ込む二人を必死に受け止める叫び声が、遠く遠くへ遠ざかっていく。

鉄殻都市に、長かった絶望の夜は明けた。全員が心身ともに深い傷を負った満身創痍の状態で、しかし確かに未来への一歩を掴み取り、少年たちの命がけの戦いはここにひとつの結末を迎えたのだった。

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