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愚者の行進  作者: 苔氏
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血煙の赤門、不屈の戦士

キースの決死の勝利によって『青の門』を突破した一行の前に、次なる試練が立ちはだかった。

燃え盛るような赤のネオンが周囲を不気味に照らし出す、重厚な黒鉄の門――『赤の門』。

その中央に、巨大な斧槍ハルバードを携え、全身を漆黒の魔導アーマーで固めた巨漢が立っていた。【皇帝】の近衛兵を束ねる『至高の番人』である。

「ここを通る資格があるか、余が直々に検分してやろう。ルールは一つ、武器を用いた『無制限の命懸けの決闘タイマン』だ。どちらかが動かなくなるまで、一切の干渉は許されん」

番人が床を斧槍の石突で叩くと、周囲に真っ赤な魔力の結界が展開され、ガルードと番人だけが隔離された。

「……ガルードさん」

進が怯えた声でその背中を見上げる。中層の決闘場では無双したガルードだったが、目の前の番人が放つ、肌を刺すような濃厚な殺気は尋常ではなかった。

「案ずるな、坊主。ここで待っていろ」

ガルードは低く応え、背中から身の丈ほどもある無骨な大剣を引き抜いた。その巨躯が、結界の中へと静かに進み出る。

激突は、一瞬だった。

キィィィィィン!!!と、鼓膜を引き裂くような金属音が響き渡る。

ガルードの大剣と番人の斧槍が正面からぶつかり合った。だが、次の瞬間、目を見張ったのはガルードの側だった。中層の兵士を片手でひねり潰したガルードの怪力を、番人は正面から完全に押し返したのだ。

「フン、大罪人とてこの程度か!」

番人の容赦ない追撃が始まる。魔導アーマーの出力に任せた超高速の斬撃が、ガルードの肉体を襲う。

ガルードは大剣を盾にして防ぐが、一撃の重さが規格外だった。

ドガッ!!と鈍い音が響き、ガルードが大きく後方へ弾き飛ばされる。その際、防御が間に合わなかった左肩の肉が深く切り裂かれ、鮮血が床にドクドクと溢れ出した。

「ガルードさん!!」

進が悲鳴を上げる。

だが、地獄はここからだった。番人の斧槍が、ガルードの右膝を正確に捉えて強打した。

ゴキィッ!!!

結界の外まで生々しく響き渡る、骨が砕ける音。

「……ぐ、うぉっあ!」

ガルードの巨体がガクリと崩れ、右膝の骨が完全に折れて異常な方向に曲がる。激痛に顔を歪めながらも、ガルードは地面に大剣を突き立てて無理やり身体を支えたが、大量の冷や汗がその顔を伝って流れ落ちる。

「終わりだ、罪人」

上段から振り下ろされる、命を刈り取る一撃。

視界を血に染め、片膝を突き、骨を砕かれた絶体絶命の窮地。

しかし、ガルードの目は死んでいなかった。彼は避けることを完全に諦め、あえてその一撃を『自身の左腕』で受け止めた。

ザシュゥゥゥッ!!!

番人の刃がガルードの左腕の骨にまで深く食い込み、肉をズタズタに引き裂く。凄まじい出血。だが、ガルードはその左腕の筋肉を限界まで硬化させ、番人の武器を肉体で「噛み込んで」固定した。

「な……っ!? 腕を捨てて、武器を止めただと!?」

番人が驚愕し、斧槍を引き抜こうとしたが、ガルードの肉に挟まってびくともしない。

「……坊主が、見ているんでな」

ガルードが、血にまみれた牙を剥いて獰猛に笑った。

「ここで、無様な姿は見せられんのだ……ッ!!」

残された右腕一本。ガルードは砕けた右膝に、千切れかけた左腕の痛みを完全に精神力でねじ伏せ、大剣を逆手に握り直した。

「おおおおおおおおおおおッ!!!」

咆哮とともに、全ての魔力と執念を乗せた捨て身の突きが、番人の胸元へ放たれた。

ガギィィィィン!!!

大剣の先端が、番人の漆黒の魔導アーマーを、その中身の肉体ごと背中まで貫通した。

「が……はっ、あ……余が……敗れる……だと……」

番人は口から大量の血を吐き出し、そのままゆっくりと床へ崩れ落ちた。動かなくなった番人の手の甲の数値が、システムによってガルードへと強制譲渡され、番人の身体は静かに光となって消滅していく。

「はぁ、はぁ、はぁ……っ」

結界が解けると同時に、ガルードの大剣がカランと床に落ちた。

ガルードはその場に崩れ落ちるようにドサリと膝をつく。

左腕は骨が見えるほど深く抉られて垂れ下がり、右膝は完全に折れ、体中から流れた血で床に巨大な血溜まりができている。中層での無双が嘘のように、彼は肉体の限界を迎えてボロボロになり、激しい呼吸のたびに肩が小さく震えていた。

「ガルードさん! しっかりして、ガルードさん!」

進が涙を流しながら駆け寄る。ガルードは血に汚れた大きな手で、進の頭をそっと撫でようとしたが、その手にはもう、持ち上げるだけの力すら残されておらず、床に力なく落ちた。

「……案ずるな。かすり傷だ……。さあ、前へ、進め……」

赤の門が、重々しく開く。

キースに続き、ガルードまでもが肉体を破壊され、辛うじて生き残るような壮絶な勝利。一歩進むごとに、自分を守ってくれる盾がボロボロに壊れていく。その生々しい恐怖と圧倒的な絶望感に、進の呼吸はさらに浅くなっていくのだった――。

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