1番似合う服を選ぶのは誰!?
食事を終えた5人は、そのままショッピングモールの中を歩いていた。
「次、どこ行く?」
透が尋ねると、姫華がぴたりと足を止めた。
「……決めました」
「え?」
姫華は、何やら真剣な顔をしている。
「誰が一番、紬先輩に似合う服を選べるか勝負です!!」
「……へ?勝負?」
「はい!」
姫華が、びしっと私を指差す。
「紬先輩のファッションショーの開催です!」
「えぇ!?」
突然の宣言に、紬は思わず大きな声が出てしまう。
しかし、
「面白そう」
蒼真が小さく呟くと、
「……いいね」
凪まで頷いている。
「えっ、2人とも!?」
まさかの賛成だった。
「へぇ」
隣で透が楽しそうに笑い、
「それ、面白そうだね」
「透さんまで!?」
私は思わず振り向く。
すると、透はにこりと微笑んだ。
「もちろん、僕も参加するよ」
「え?」
「僕が負けるわけないでしょ?」
透はやけに自信満々だったが、
「いやいや、リーダー!」
姫華がすぐさま反論する。
「そういうのって、女性目線の方が強いんです!」
「そうかな?」
「そうです!」
「でも、僕は紬ちゃんのこと、一番知ってるよ?」
「うっ……」
姫華が言葉に詰まり、
「しかも」
透は、私の方を見て優しく笑った。
「紬ちゃんに似合う服なら、いくらでも分かる。今着てるワンピースも、僕が選んだからね」
「……」
その笑顔に、紬は思わず胸がどきりとした。
「透さん……」
透が微笑み、
「だから、僕の勝ちかな」
「むむむ……!」
姫華が悔しそうに唸る。
「……」
そんな時、蒼真がじっと紬を見ていたが、
「蒼真くん?」
「……っ…」
慌てて目を逸らした。
「い、いえ!」
「?」
何だか少し顔が赤い気がする。
「……」
凪がぽつりと呟き、
「……大変だ」
「何が?」
姫華が首を傾げる。
「……リーダー、本気だよ」
「……あ」
姫華も透の目が、妙に真剣になったのを見てしまった。
「え……」
紬は苦笑し、
「そんなに本気にならなくても……」
「駄目だよ」
透が即答した。
「勝負なら、本気でやらないとね」
「えぇ……」
(どうしてこんなことになったんだろう…)
「よし!」
姫華が拳を握り、
「絶対に負けません!」
「僕も」
「……俺も」
やけに3人とも、やる気満々だ。
「じゃあ1時間後、此処に集合ね」
「了解です!」
「はい!」
「……分かりました」
4人は、それぞれ別の方向へ歩き出した。
そして、その場に残された紬は、
「……なんで?」
思わず、小さく呟いた。
けれどもう、4人の姿はすでに見えない。
「ふふ……」
何だかおかしくなって来て、小さく笑ってしまった。
紬はベンチに座り、バッグからスマートフォンを取り出す。
画面を開いて、写真フォルダを眺めていると、自然とある1枚で指が止まった。
「……」
それは、前撮りで撮ってもらったウエディングフォトだった。
純白のドレスを着て、隣にはタキシード姿の透が、今まで見たことがないくらい幸せそうに笑っている。
「楽しかったなぁ」
紬は思わず頬が緩み、そんなことを思い出していると、
「あれ?」
聞き覚えのある声がした。
「紬ちゃん?」
「……え?」
紬が顔を上げると、そこには、美味しそうなフラペチーノを持った玲さんと、コーラの缶を片手に持った紅蓮が立っていた。
「あ……!」
紬は思わず目を丸くする。
「玲さん!紅蓮!」
「よっ」
玲が、にっと笑い、
「奇遇だな」
「2人とも、お買い物ですか?」
「そうなんだ」
玲がフラペチーノをひらひらと揺らした。
「今日は休みだからな」
紅蓮が、じっと紬を見て、
「……お前」
「なあに?」
「透と家具買いに行ったんじゃねぇの?」
「あ、うん。そうなんだけどさ…」
「……?」
「……あ」
紅蓮が、何かを察したような顔になる。
「喧嘩か?」
「えぇ!?」
紬の声が思わず裏返った。
「ち、違うよ!」
「じゃあ何で1人なんだよ」
「それは……。たまたま姫華ちゃん達と会って」
「へぇ」
玲が楽しそうに目を細め、
「それで?」
「何故か、私のファッションショーが始まりまして……」
「……」
「……」
2人が固まった。
「……え?」
「誰が一番、私に似合う服を選べるか勝負だそうです」
「……」
「……」
再び沈黙が走り、そして、
「ぶっ……!」
玲が吹き出した。
「はははっ!」
そのままお腹を抱えて笑い始め、
「ちょっ……玲さん!?」
「いや……」
笑いを堪えながら、玲が顔を上げる。
「お前達、本当に平和になったな……!」
「えぇ……」
その隣では、
「……くくっ」
珍しく、紅蓮まで笑っていた。
「紅蓮まで……」
「悪ぃ」
そうは言うが、全然悪いと思っていない顔だった。
「いやぁ……」
玲が楽しそうに、
「透、絶対本気だろ?」
「あ……はい」
「だよなぁ」
そういうと、再び笑い始める。
「……ん?」
紅蓮が、ふと紬のスマートフォンへ視線を落とした。
「それ」
「え?」
「写真だよ、写真」
「あ……」
紬は画面へ目を落とす。
そこには、先ほどまで見ていたウエディングフォトが映っていた。
「お、私にも見せてくれ」
玲が隣へ腰を下ろし、
「はい!」
紬はスマートフォンを差し出した。
玲は写真を見るなり、しばらく黙った。
「玲さん?」
「……綺麗だな」
「ありがとうございます」
玲が優しく笑い、
「本当に、綺麗だ」
その横から、紅蓮もぽつりと呟いた。
「似合ってるな、それ」
「……え?」
「そのドレス」
「ありがとう!」
紅蓮は少しだけ照れくさそうに視線を逸らした。
その様子が何だかおかしくて、
「ふふ……」
紬は小さく笑った。
「お!」
玲が、何かを見つけたように顔を上げると、
「どうしました?」
「……どうやら、第一走者が戻ってきたみたいだぞ」
「え?」
遠くから、大きく手を振りながら走ってくる姿が見えた。
「紬先輩ーーーっ!!」
姫華だった。




