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半妖の黙示録ー契約の成れの果てー  作者: くろあげは。
最終章 それぞれの道
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第86話 これからの未来

あれから、のんびりと時間が経ち、春の風が、優しく校庭を駆け抜けていた。


満開の桜が揺れ、淡い花びらが空へ舞い上がる。


卒業式を終えた校門前に、紬は立ち止まり、ゆっくりと振り返った。


「……なんか、色々あったなぁ……」


3年間通った学校で、友達と沢山笑った日に、勉強に苦戦した日。


何気ない日常全てが、今では大切な思い出だった。


でも――、


この3年間は、それだけじゃない。


妖との出会い、《夜叉》との出会い、命を懸けた戦い、大切な仲間との絆。


そして、自分の人生を変えた、大切な人との出会い。


「紬」


優しい声に振り返ると、そこには、スーツ姿の透が立っていた。


「卒業、おめでとう」


紬は少し驚いた後、笑顔になる。


「……透さん。来てくれたんですね」


「もちろん。大切な日だからね」


その言葉に、紬は嬉しそうに笑った。


しかしふと、紬は頬を膨らませる。


「……でも」


「ん?」


「透さん。人気者ですね」


「え?」


透が首を傾げると、紬はじっと透を見る。


「卒業式が始まる前、在校生の女の子達に囲まれていましたよね?」


「あ……」


透は思い出したように目を逸らす。


「見てたんだ」


「見てました」


紬はぷくっと頬を膨らませ、


「『かっこいいです』とか、『彼女いますか?』とか、いっぱい聞かれてましたよね?」


透は困ったように笑った。


「でも、僕はちゃんと断ったよ?」


「分かっています」


紬はすぐに答える。


「分かってるけど……」


少しだけ視線を逸らすと、


「……ちょっとだけ、嫌でした」


透は目を丸くして、ふっと嬉しそうに笑う。


「紬がそんな顔をしてくれるくらい、僕のことを大切に思ってくれてるんだなって」


「……」


紬の顔が赤くなる。


「もう……透さんは、すぐそういうこと言うんですから」


「本当のことだからね。」


春風が二人の間を通り抜け、桜の花びらが2人の足元へ落ちる。


そして、透は優しく問いかけた。


「……行こうか」


「はい!」


今日、2人にはもう一つ大切な予定がある。


卒業証書を受け取った日、学生としての最後の日。


そして――、


夫婦になる日。


2人は桜が舞う道を、これから続く未来に向かって、並んで歩き出した。











市役所を出た2人は、噛み締めるようにゆっくりと歩いていた。


紬は何度も左手を見る。


そこには、二つの指輪が輝いていた。


ずっと前に透から貰った指輪に、プロポーズの時に貰った結婚指輪。


「……まだ、夢みたいです」


紬が小さく呟くと、透は隣で微笑んだ。


「僕もだよ。でも……」


透は紬の手を優しく握る。


「夢じゃない。これからは、本当にずっと一緒だよ」


「……はい!」


紬は嬉しそうに笑った。


そして2人は、《夜叉》の施設へ向かう事にした。


「みんな、驚きますかね?」


紬が少し楽しそうに言うと、


「どうかな?遅い!って言われるかな?」


透は考えるように首を傾げる。


「でも、玲さんはきっと喜んでくれると思うな」


「紅蓮は……」


「たぶん、素直じゃないね」


2人は顔を見合わせて笑った。


《夜叉》の施設に到着すると、2人は少し違和感を覚えた。


「……あれ?」


紬が辺りを見回す。


「いつもより、静かですね」


いつもなら隊員達の声や、訓練の音が聞こえてくるはずなのに、今日は不思議なくらい人の気配がない。


透も首を傾げ、


「みんな、どこにいるんだろう」


「任務……ですかね?」


紬がふっと笑った。


「あぁ、お昼時ですから皆さん、食堂にいるんじゃないですか?」


「なるほどね。行ってみようか?」


2人は食堂へ向かう事にした。











2人は食堂の前までやって来たが、中からは、何の音もしない。


「……本当に、皆さんいるんでしょうか?」


紬が首を傾げ、透も不思議そうに扉を見る。


「静かすぎるね」


2人は顔を見合わせ、そして紬がそっと扉に手を掛けた。


「……開けますね」


ゆっくりと扉を開くと、


「「「結婚おめでとう!!」」」


大量のクラッカーが鳴り響いた。


「えっ!?」


「わ……!」


透も驚いたように足を止めた。


ひらひらと舞う紙吹雪に、食堂いっぱいに飾られた風船や装飾、壁には大きな文字で書かれている。


『透&紬 ご結婚おめでとう』


その光景に、紬は言葉を失った。


「……え?」


「これ……」


隊員達は嬉しそうに笑い、


「驚きました?」


玲が前へ出る。


いつもの凛とした姿とは少し違い、今日はどこか楽しそうだった。


「当然だろう。私たちの大切な仲間の、人生で一番大切な日なんだから」


「玲さん……」


紬の瞳が潤み、紅蓮も腕を組みながら、少し照れくさそうに顔を逸らした。


「ったく……準備するの、大変だったんだからな」


紬は周囲を見回し、壁に飾られた手作りの花に気付いた。


「……もしかしてまた、紅蓮が作ってくれた?」


「前よりは、いい出来だと思うぜ?」


紬は思わず笑った。


「前のも可愛いし、あの花もとっても素敵」


その反応に、隊員達から笑い声が上がる。


「紅蓮、照れてる!」


「うるせぇ」


「でも、確かに前のやつより出来てるよな」


「……紬の祝いだからな」


ぽつりと呟いた言葉に、紬は嬉しそうに微笑んだ。


すると、玲が手を叩き、


「さて、せっかくの祝いの日だ。主役には楽しんでもらわないとな」


隊員達がグラスを手に取り、透と紬も、それぞれ受け取った。


今まで何度も、明日が来る保証なんてない日々を過ごしてきた。


でも今は、こうして仲間達に囲まれて、笑いながら未来の話ができる。


それだけで、十分幸せだった。


「それじゃあ」


玲がグラスを掲げ、


「二人の未来に、乾杯」


「「「乾杯!!」」」


食堂いっぱいに、明るい声が響いた。


戦うためだけに集まっていた場所は、いつしか大切な人の幸せを祝える場所になっていた。


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