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半妖の黙示録ー契約の成れの果てー  作者: くろあげは。
第7章 人類滅亡ーー赫焉の呪いーー
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第70話 ようこそ

「……ん……」


重たい瞼をゆっくりと開く。


遠くで誰かが呼んでいる気がする。


ぼんやりとした意識の中、その声だけがはっきりと耳に届いた。


「紬!」


紬は勢いよく目を開けた。


「……透……さん?」


透が心配そうな表情で、紬の肩を揺すっている。


紬が目を覚ましたのを確認すると、ほっと息を吐いた。


「良かった……」


「……あれ、私達……」


紬はゆっくりと身体を起こした。


そして周囲を見渡し、言葉を失う。


空は赤黒く染まり、大地はひび割れ、草木一つ生えていない。


まるで命そのものが存在しない世界だった。


吹き抜ける風は冷たく、不気味な音を立てている。


「ここが……妖の世界……」


透も辺りを見渡す。


「穴には入ったんだけど、どうやら二人とはぐれたみたいだ」


確かに、玲も紅蓮も見当たらない。


紬が不安そうに辺りを見回した、その時だった。


「……おーい!」


遠くから声が聞こえ、透と紬が同時に顔を上げる。


「透!紬!」


「紅蓮!」


紬の表情が明るくなる。


岩場の向こうから現れたのは紅蓮だった。


その後ろには玲もいる。


「良かった……!」


紬が安堵の息を吐と、玲も小さく頷いた。


「2人とも無事で良かった」


紅蓮は肩を竦め、


「初っ端から迷子になるとはな」


「1人にならなくて良かったよ」


透が苦笑する。


「何がいるか、分かんねぇからな」


4人は無事に、再び顔を合わせた。


不気味な風が吹き抜け、玲の表情が変わった。


「……来るぞ」


透も刀へ手を掛けると、地平線の向こうに無数の影が現れた。


妖の群れは4人を囲むように広がり、その数は視界の果てまで続いていた。


「歓迎が派手じゃねえか」


紅蓮が笑うと、玲は刀を抜いた。


「赫焉の所に行くには、まずここを抜けろという事だろうな」


紬は静かに右手を前へ出意識を集中させる。


炎が弾け、一振りの刀へ姿を変える。


焔月ーーー《夜叉》の仲間達の想いが込められた刀。


紬は柄を握りしめた。


「簡単に行けるわけないですもんね」


透が刀を抜くと、銀色の刃が赤黒い空を映した。


「そう……みたいだね」


一歩前へ出て、自然と紬を庇う位置へ。


「……でも」


すると、刃先を妖達へ向け、


「紬には指一本触れさせないよ」


「っ……」


と、紬の頬が少し熱くなる。


玲は呆れたようにため息を吐いた。


「お前はムードとかないのか」


紅蓮も苦笑するが、


「一応、戦場だぞ」


透は本気で首を傾げた。


「え?」


妖達が一斉に咆哮を上げ、群れが動いた。


「……来る」


透の声と同時に、先頭の妖が飛び掛かる。


透の刀が閃き、妖の身体が真っ二つになる。


透は流れるような動きで妖を斬り伏せていく。


その横では玲が、妖の群れへ飛び込んでいた。


無駄のない剣筋で、妖が一歩踏み込む前に首が落ちる。


まるで舞うような剣技だった。


紅蓮は真正面から妖へ突っ込んでいき、


「邪魔だ!」


拳を振るう。


炎を纏った拳が妖の顔面へめり込み、妖は吹き飛び、後方の仲間を巻き込みながら地面を転がった。


さらに回し蹴りで、炎を纏った足が妖の胴体を砕き、爆発のような衝撃が響いた。


「まだまだ!」


紬も負けてはいない。


焔月を振い、妖の腕を斬る。


首を落とし、迫る牙を避ける。


確実に強くなっている。


だが、紬相手に妖の数が多すぎる。


「はあっ!」


巨大な大蛇の首を切り落とした時だった。


背後から音がし、紬が振り返る。


巨大な蜘蛛が紬を見下ろし、八本の足の1本が、槍のように突き出された。


「……!」


避けられない。


鋭い足が紬の脳天へ迫る瞬間、蜘蛛が悲鳴を上げた。


銀色の閃光が走り、蜘蛛の足が宙を舞う。


紬の前にはいつの間にか透が立っていて、紬を庇うように、刀を構えていた。


「だから」


透は振り返り、紬に優しく微笑んだ。


「紬には指一本触れさせないって言ったでしょう?」


紬の心臓が大きく跳ねた。


蜘蛛が襲い掛かってくるが、透の方が速い。


銀色の刃が閃き、蜘蛛の身体が真っ二つになる。


「大丈夫?」


透が心配そうに尋ね、


「……はい!」


紬は思わず笑った。


その様子を見ていた紅蓮が妖を殴り飛ばしながら叫ぶ。


「お前らなぁ!」


妖が吹き飛び、


「イチャつくなら親父を倒してからにしろ!」


と、玲も妖を斬り伏せながら頷いた。


「珍しく紅蓮に同意だ」


戦場には似つかわしくない会話だが、そのおかげで誰も恐怖に飲まれてはいなかった。


そして最後の妖が、断末魔を上げながら崩れ落ちる。


辺りには無数の妖の亡骸が転がっていた。


透は刀を鞘へ収め、


「終わったみたいだね」


と、玲も血を払いながら頷く。


そして、亡骸の遠くを見た。


「あそこに、赫焉が居そうだな」


荒廃した大地の向こうに、黒く不気味な巨大な城が建っていた。


この世界に似つかわしくないほど禍々しい城は、まるで世界の中心に君臨する王の城だった。


紅蓮は拳を握り締める。


「……やっとだ」


長年追い続けた相手に、ついに辿り着ける。


4人は城へ向かって歩き出した。


誰も知らない。


赫焉の元へ辿り着く前に、まだ1人倒さなければならない妖が居る事を――。


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