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半妖の黙示録ー契約の成れの果てー  作者: くろあげは。
第7章 人類滅亡ーー赫焉の呪いーー
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第69話 また逢う日まで

ドラゴンとの戦闘が終わった海岸は、先程まで響いていた咆哮は消え、波の音だけが静かに耳へ届いていた。


だが、誰一人として気を抜いてはいなかった。


全員の視線は同じ場所へ向けられている。


妖の世界へと繋がるかも知れない巨大な穴は、ドラゴンが現れたというのに、閉じる気配を見せなかった。


まるで、誰かがこちらへ来るのを待っているかのように。


透は黒い穴を見つめながら呟く。


「……やっぱり」


玲が腕を組み、


「あぁ。何だか、呼ばれているようだな」


紅蓮は鼻を鳴らした。


「……親父、待ってろよ」


紬は穴の奥を見つめるが、何も見えない。


確かに感じるこの気配は、赫焉かも知れない。


あの向こうに、宿敵がいる。


その時、1人の男性隊員が前へ出た。


「リーダー」


透が振り返ると、隊員は少し笑った。


「もちろん、その穴に入るんでしょう?」


透も小さく笑い、迷わず答えた。


「うん。そうなるね」


黒い穴から目を逸らさないまま、


「まだ倒さないといけない相手がいるからね」


と、その言葉に隊員達は顔を見合わせた。


そして、誰からともなく笑い始める。


「しょうがないなぁ」


先程の隊員が頭を掻き、


「リーダー。玲さんと、紅蓮。紬ちゃんも連れて行ってくださいよ」


透が目を丸くすると、隊員は胸を叩く。


「もし妖が出ても、ここは俺らに任せてください。だって、リーダー1人で行くと、また無茶するでしょ?保護者が居ないと」


そう言って振り返る。


「な?みんな〜」


その言葉に隊員達が一斉に頷いた。


「そうだそうだ!」


「早く世界を救って来てくださいよ!」


「リーダー!帰って来てくださいね!」


「俺達、ちゃんと待ってますから!」


次々と飛んでくる声は、そのどれもが温かかった。


透はしばらく黙っていたが、ゆっくり頭を下げる。


「……ありがとう……みんな!」


仲間の言葉が胸に響き渡る。


「玲さん!」


隊員の1人が叫び、


「デートの件、忘れないでくださいよ!」


「あっ、ずりい!」


「俺も、玲さんとご飯行きたい!」


「抜け駆け禁止だからな!」


海岸に笑い声が広がり、玲は呆れたようにため息を吐いた。


「お前達は……」


だがその口元は、少しだけ緩んでいた。


「デート、楽しみにしているよ」


その一言に隊員達は大歓声を上げる。


「うおおおお!」


「玲さん、マジで女神!」


「絶対帰って来てくださいね!」


笑い声が響き、それだけで少しだけ緊張が和らいだ。


紬はそんな仲間達を見渡した。


共に戦い、笑い合い、支えてくれた仲間達。


もう二度と会えないかもしれない。


そんな考えが頭を過る。


だが紬は顔を上げ、


「それでは――行ってきます!」


深く頭を下げる。


「皆さんも、どうかご無事で!」


隊員達が大きく手を振る。


「そっちもな!」


「頑張れよ!」


「リーダーを頼んだぞ!」


紬の目が少しだけ潤むと、そっと手が重なった。


「行こうか、紬」


透の優しい声を胸に刻み、紬は頷く。


「はい!透さん」


2人は強く、離れないように手を繋ぐ。


そして、妖の世界へ続くかも知れない穴へ向かって走り出した。


仲間達の声が背中を押す。


2人はそのまま闇へ飛び込んだ。


紅蓮は刀を肩に担ぎ、小さく鼻を鳴らした。


「……行ってくる」


ぶっきらぼうな一言だが、口元には笑みが浮かんでいた。


長年追い続けた父親、赫焉。


ようやく辿り着ける。


紅蓮は地面を蹴り、闇の中へ飛び込んだ。


最後に残ったのは玲だった。


玲は隊員達を見渡し、その視線はどこか優しい気がした。


「では、行ってくる。デート、楽しみにしているからな」


隊員達が一斉に吹き出した。


玲は満足そうに微笑み、そのまま闇へと消えていった。


その直後、巨大だった穴がゆっくりと閉じ始め、黒い亀裂は少しずつ小さくなり、完全に閉じた。


海岸に残された隊員達は、その場所を静かに見つめていた。


「……帰って来いよ」


それは此処にいる全員の願いだった。











赤黒い空が広がる、荒廃した大地の中心にそびえる巨大な城。


1人の男が玉座へ腰掛けていた。


赫焉の目の前には、巨大な水鏡が浮かんでいる。


そこには先程までの海岸の様子が映し出されていた。


こちらの世界へ飛び込んだ4人を、赫焉は見届けていたのだ。


「……ほう」


興味深そうに、愉快そうに呟く。


赫焉はゆっくりと立ち上がった。


黄金の瞳が細くなり、その視線は1人の男へ向けられていた。


紅蓮ーー長年探していた、血の繋がった存在。


赫焉の口元がゆっくりと吊り上がる。


「……紅蓮。待っていたぞ」


まるで歓迎するように、両手を広げた。


「愛する息子よ」


ついに、赫焉との決戦が始まろうとしていた。


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