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第7話 討妖機関《夜叉》

無機質な空間で、余計な装飾は一切ない。


ただ任務のためだけに存在する部屋。


その中央に、一人の女が立っていた。


長い黒髪を後ろで一つに束ねたポニーテールが綺麗で、隙のない立ち姿。


討妖機関(夜叉)《とうようきかんやしゃ》の、その頂点に立つ存在ーー黒崎 玲(くろさき れい)


「……遅い」


玲が苛立っている頃、扉が静かに開いた。


「失礼します」


透が入室して来て、玲に軽く頭を下げる。


「報告に参りました」


透が報告をしようとしたその時、


「その前に」


と、冷たい声で遮られる。


透の動きがわずかに止まり、リーダーの視線が、真っ直ぐに突き刺さる。


「あの対象と接触したそうね」


 一瞬、空気が凍ったように感じた。

 

「……っ」


透の表情が、わずかに強張る。


「監視記録は確認済み」


玲は気にせず、淡々と告げる。


「対象の報告を聞くまでもない」


「……はい」


「判断保留、だったか?」


「僕は、そう判断しました」


透は負けず、迷いなく答える。


「敵対の可能性と同時に、不確定要素としての価値があると判断しました」


数秒の沈黙の中で、見定めるような視線が痛い。


「……甘い」


「ですが、特級個体――宵が興味を示していました」


「……なら余計に、貴方の判断は甘い。特級が興味を示した時点で、放置はできない」


「それは…」


透は何も反論出来なかった。


玲の言う事は、間違っていない。


「コード――未分類個体。半妖・風早 紬」


その言葉に、透の目が揺れる。


「……半妖?」


思わず、声が漏れ、冷たいリーダーの視線が向く。


「分かっているだろ?彼女はもう、“人間”ではない」


玲の言葉は重く、透には背負いきれない程だ。


「鬼の血を受け入れた時点で、不可逆」


「……ですが本人は、まだ――」


「そんな事、私達には関係ない。自覚の有無は問題ではないのだ。…当該個体を、《夜叉》の監視対象とする」


「接触は、駄目でしょうか」


「許可する。…ただし、制御不能もしくは敵対と判断した場合――」


一瞬の間が、透には長く感じた。


「即時、排除」


リーダーとしての命令、これは部下として聞くしか無かった。


「……了解です」


「他は?」


どうでもいいかのように、玲は促す。


透は深く息を吸って切り替え、


「第三区画にて、特級と交戦しました。名称は“宵”。赫焉の側近と推定されます。…取り逃がしました」


「理由は?」


「相手は、明らかに格上でした。特級の中でも上位」


「何故、特級はいきなり消えたのか」


「不明です。外部から声がしたと思ったら、突然」


「……あの声は、赫焉――最優先排除対象」


「……了解です」


「下がっていい。少し休め」


「失礼します」


透は一礼し部屋を後にし、ゆっくりと扉が閉まり、再び、静寂が包み込む。


「……半妖、風早 紬」


冷たい玲の目が、わずかに細められる。


「未完成のまま壊れるか、それとも、使える駒になるか」


玲にとっては、どうでも良かった。


ただ、選別するだけ。


討妖機関《夜叉》は、妖を狩るだけの組織ではない。


使える駒が居るか、“選別する側”の存在でもあった。


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