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半妖の黙示録ー契約の成れの果てー  作者: くろあげは。
第6章 私を探さないでーーー
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第60話 男子禁制!女子会ショッピング

宵との戦いから、一週間経ち、《夜叉》本部には、ようやく穏やかな時間が流れていた。


窓から差し込む朝日を浴びながら、紬は大きく伸びをする。


悪夢を見ることも、まだある。


ふとした瞬間に、教会での出来事を思い出すこともある。


けれど目を開けば、そこには《夜叉》があった。


透、紅蓮、玲がいる。


それだけで十分だった。


「よし!」


紬は勢いよく部屋を飛び出した。


向かう先は決まっている。


会議室の扉を勢いよく開ける。


「玲さん!」


机に向かっていた玲が顔を上げ、


「どうした?」


「おはようございます!」


「おはよう」


それだけで紬は嬉しそうに笑う。


玲は小さく苦笑した。


この一週間、紬はことあるごとに玲の元へ来ていた。


お茶を淹れたり、仕事を手伝ったり、ただ隣で本を読んだり。


理由は分かっている。


玲が戻ってきてくれたことが嬉しいのだ。


玲もまた、それが少し嬉しかった。


「玲さん」


「ん?」


「今日も綺麗です」


「急にどうした」


呆れたような声だが、玲の口元は少しだけ緩んでいた。


「おーい」


紅蓮が顔を覗かせ、


「また居たのか」


「だって、玲さんとお話したいもん」


と、即答で紅蓮は吹き出した。


「玲のストーカーかよ」


「違うよ!」


「違わねぇだろ」


そんなやり取りを見ていた玲が、ふと書類を閉じる。


「紬ちゃん」


「何ですか?」


「明日、暇か?」


紬が首を傾げた。


「暇、だと思います」


「買い物に付き合ってくれないか?」


「買い物?」


「あぁ」


玲は視線を逸らすと、


「心配を掛けた詫びだ」


紬の目がぱっと輝いた。


「行きます!」


玲は思わず笑う。


久しぶりに見た、心からの笑顔だった。











翌日、街は休日なのもあり、賑わっていた。


「わぁ……!」


紬は目を輝かせる。


久しぶりの外出で、しかも玲との初めてのお買い物。


楽しくないはずがない。


「玲さん見てください!」


「ん?」


「この猫可愛い!」


「確かに可愛いな」


雑貨屋に洋服屋、アクセサリーショップ。


紬は目を輝かせながら店を見て回る。


玲はそんな姿を静かに見守っていた。


その笑顔が見られるだけで十分だった。


そして、雑貨屋の一角で、紬の足が止まる。


「……!」


視線の先には、小さな桜の髪飾りがあった。


淡い桃色の花びらが光を受けて輝いている。


「可愛い……」


思わず呟き、玲も隣に立った。


「似合いそうだな」


「本当ですか?私にはちょっと大人っぽいような……」


「そんな事ないぞ」


紬は嬉しそうに笑った。


その顔を見ていた玲は、店員を呼び、


「これを頼む」


「え?」


紬が固まった。


「れ、玲さん!?」


「今までの、詫びだ」


「でも……」


「遠慮するな。……紬ちゃんには色々、心配を掛けたからな」


紬は何も言えなくなった。


玲が無事でいてくれた、それだけで十分なのに。


「……ありがとう、ございます……」


紬は髪飾りを胸に抱いた。


「大事にします……」


玲は優しく頷いた。


その後も2人はカフェで休憩し、買い物を続けた。


その頃、少し離れた場所では、


「紅蓮」


「なんだ」


「ちゃんと見えてる?」


「見えてる」


「紬ちゃん楽しそう?」


「楽しそうだな」


透はほっとしたように微笑んだ。


紅蓮は呆れ顔だが、


「だから言っただろ」


「何を?」


「玲がいるんだから大丈夫だって」


透は真顔だった。


「心配だよ」


「重症だなお前」


「紅蓮」


「あ?」


「昼ご飯代払うから、まだ着いてきて」


紅蓮は即答した。


「見守るか」











夕方になり、買い物を終えた玲と紬は帰路につく途中に、


「ねぇ、お姉さん達」


男2人組が声を掛けてきた。


「今から暇?」


「一緒に遊ばない?」


紬が困ったように玲を見て、眉をひそめた。


「悪いが急いでいる」


そう言って歩き出そうとするが、男達は引かない。


「少しくらいいいじゃん」


「な?」


一歩距離を詰めると、玲の目が冷たくなった。


「僕の奥さんに何か用?」


後ろから聞き慣れた声して、紬が振り返る。


「透先輩!?」


そこには透が立っていた。


穏やかな笑顔なのに、目だけが笑っていない。


透は自然な動作で紬の隣に立ち、そっと手を握った。


「それとも知り合い?」


男達が言葉を失う。


「いや……」


「別に……」


そこへ、


「おい」


紅蓮もやってきて、ポケットに手を突っ込んだまま男達を見下ろす。


「何か用かよ」


男達が後退し、


「邪魔すんなよな」


その迫力に男達は顔を見合わせた。


「い、行こうぜ……」


「あ、あぁ……」


逃げるように立ち去っていく。


玲は深いため息を吐き、


「やはり付いて来ていたか」


透は即答する。


「偶然ですよ。ねえ、紅蓮」


「偶然な訳あるか」


玲のツッコミが飛び、紅蓮は鼻で笑った。


「俺は無理やり連れて来られた」


「あ、紅蓮裏切ったな」


「事実だろ?お前が、紬ちゃんが心配だから、って」


紬は思わず吹き出した。


「ふふっ」


その笑顔を見て、透は心から安心する。


もう無理に笑っている訳じゃない。


本当に元気になっている。


「帰ろうか」


「皆で仲良く帰りましょ!」


紬は元気よく頷いた。


夕焼けに染まる帰り道は、とても楽しかった。


玲の隣を歩く紬、その後ろを歩く透。


さらに後ろでジュースを飲みながら歩く紅蓮。


穏やかな時間、守り抜いた日常。


そして何より――。


久しぶりに、紬の笑顔がそこにあった。


それだけで、3人は十分だった。


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