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半妖の黙示録ー契約の成れの果てー  作者: くろあげは。
第6章 私を探さないでーーー
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第58話 また兄弟になろう

透が教会へ向かった後、森には玲と紅蓮だけが残されていた。


2人の前には、宵によって無理やり繋ぎ合わされた兄弟が、苦しそうに呻いている。


身体の中央では黒い影が脈打ち、まるで生きているかのように蠢いていた。


「イタイ……」


白夜が涙を流し、


「クルシイヨ……」


その声に、紅蓮は顔をしかめた。


「胸糞悪ぃな……」


玲も静かに双子を見つめる。


本来なら、2人はもう眠っているはずだった。


死んだ者を無理やり引き戻し、戦わせる。


そんな所業が許せるはずもない。


「……宵」


玲の声は静かだった。


だが、その瞳には確かな怒りが宿っている。


その瞬間、


「ニゲロ!!」


漆黒が叫んだ。


だが身体を覆った黒い影が、無理やり腕を振り上げる。


巨大な影の腕が玲へ叩き付けられようとしていた。


玲は刀で受け止めるが、足元の地面が砕け散る。


「っ……!」


数メートル後方へ押し込まれた。


「おいおい!」


紅蓮が目を見開く。


「前より強くなってんじゃねぇか!」


漆黒自身も苦しそうで、

「ヤメロ……!」


と、止めようとしている。


だが、身体は言うことを聞いてくれない。


影が意思を奪い、勝手に動かしているのだ。


今度は白夜が悲鳴を上げたと思うと、


「イヤダァ!!」


無数の黒い槍が生み出され、紅蓮へ向かって一斉に放たれた。


「チッ!」


炎を纏った腕が、槍を薙ぎ払う。


しかしいくら燃やしても、新たな槍が生まれていた。


「再生しやがるのかよ!」


炎で焼いても、斬り裂いても、黒い影は再び双子の身体を繋ぎ直す。


だが、白夜は泣いていたのだ。


「ゴメンナサイ……!……ゴメンナサイ……!」


攻撃しながら、涙を流しながら、必死に謝っている。


紅蓮は舌打ちし、


「謝る必要なんてねぇだろうが……!」


漆黒もまた、自分の腕を押さえながら叫ぶ。


「トマレ……!」


身体が勝手に動いてしまい、玲へ斬り掛かる。


「トマレヨ……!!」


その悲痛な叫びが森に響く。


玲はその刃を受け流しながら、小さく呟いた。


「……苦しいな」


紅蓮も珍しく笑わず、


「ああ……」


炎を握る手に力が入る。


「見てらんねぇ」


2人はもう、誰も傷付けたくない、それが分かるからこそ苦しかった。


その時、玲の目が僅かに細まる。


攻撃の度に、再生する度に、身体の中央の境界部分だけが、不自然に脈打っている。


まるで心臓のように力強く。


「……そういうことか」


「あ?」


玲は2人を繋ぐ黒い影へ刀を向けた。


「紅蓮」


「あぁ?」


「斬るべきは、あの子達じゃない。あの繋ぎ目だ」


紅蓮がニヤリと笑い、


「なるほどな」


炎が腕を包み込む。


「なら話は早ぇな」


漆黒が苦しそうに顔を上げ、


「ニゲロ……!」


白夜も叫ぶ。


「キケン……ダカラ……!」


だが玲は首を振った。


「安心しろ」


玲は刀を構え、


「今度こそ解放してやるからな」


その言葉に、紅蓮も笑った。


「ちゃんと終わらせる」


2人は同時に地面を蹴ると、玲が正面から飛び込む。


影の腕が振り下ろされるが、玲は紙一重で躱しながら懐へ潜り込んだ。


同時に白夜の妖術が放たれる。


「お前の相手は俺だ!」


紅蓮の炎が森を真紅に染めた。


轟音が鳴り響き、炎と影が激突する。


その隙に玲が繋ぎ目へ到達した。


黒い影が悲鳴を上げる。


玲の刃が閃が、完全には断てていないようで、影が再び集まり始める。


「しぶてぇな!なら焼き尽くすまでだ!」


炎が爆発的に膨れ上がり、黒い影が燃え上がった。


「玲!」


「ああ!」


玲の刃に、紅蓮の炎、その力が一つになり、黒い繋ぎ目を断ち切った。


黒い影が砕け散り、宵の妖力が悲鳴を上げるように消えていった。


そして、双子の身体が光に包まれ、歪な姿が崩れていき、本来の姿へ戻っていく。


漆黒と白夜は、ようやく別々の身体を取り戻した。


「……ビャクヤ……」


「……シッコク……」


互いの名前を呼ぶ、それだけで涙が溢れた。


「ヨカッタ……」


白夜が泣き笑いを浮かべ、漆黒も優しく微笑んだ。


兄弟の時間を邪魔しないように、玲と紅蓮は黙って見守っていた。


やがて白夜が2人を見て、


「フタリトモ……」


涙を流しながら笑う。


「ヤサシイネ……」


漆黒も黙って頷く。


そして、少しだけ俯いた。


「トモダチニ……ナリタカッタ……」


玲は静かに答えると、

「なれるさ」


兄弟が顔を上げる。


「いや、もう友達だ」


漆黒の瞳が揺れ、白夜も嬉しそうに笑う。


「ソッカ……」


そして白夜は空を見上げ、木々の隙間から差し込む光を

眩しそうに見つめた。


「ネェ……シッコク……」


白夜は照れたように笑った。


「ツギハ……」


身体の足元が、少しずつ光へ変わっていく。


「ニンゲンニ……ウマレタイナ……」


漆黒は優しく微笑み、弟の頭を撫でた。


「ソウダナ」


漆黒は珍しく笑った。


「ソノトキハ……マタ……キョウダイニナロウ……」


白夜の顔がぱっと明るくなる。


「ウン!」


今までで一番幸せそうな笑顔だった。


そして、2人の身体が段々と胸元まで光へ変わっていく。


「アリガトウ……」


白夜が玲へ、


「アリガトナ……」


漆黒が紅蓮へ、感謝を伝えた。


「気にすんな。次はちゃんと生きろよ?」


兄弟は笑い、光となった。


静かに、穏やかに、空に上がっていく。


骨も、何も残らない。


玲は空を見上げた。


「生まれ変わったあの兄弟に」


「ん?」


「人間として、また出会えるといいな」


紅蓮は数秒黙り、肩を竦めた。


「あぁ。会いたいな」


透、紬、《夜叉》の仲間達、様々な顔が脳裏を過った。


「人間ってのも、なかなかいいもんだな」



「ああ。楽しいぞ」


そして二人は教会の方角を見る。


紅蓮が肩を回し、


「さて」


玲も歩き出す。


「花婿の応援に行くか。」


2人は花嫁と、本当の花婿を助けに、教会へ急いだ。


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