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半妖の黙示録ー契約の成れの果てー  作者: くろあげは。
第5章 私の居場所なんて
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第49話 緊急事態発生

休日が終わり、いつもの日常が戻ってきた。


宵も姿を見せず、玲の行方も依然として掴めないまま、《夜叉》の施設では、それぞれが訓練に励んでいた。


そんな時だった。


突然、施設中に警報が鳴り響く。


『緊急事態発生。緊急事態発生』


赤い警告灯が点滅し、訓練が終わり一息付いていた紬は、思わず顔を上げた。


「!?」


「何だ?」


紅蓮も眉をひそめ、3人は急いで管制室へ向かう。


扉を開けた瞬間、慌ただしい声が飛び交っていた。


「市内各地に妖反応です!」


「数が異常です!」


「現在も増加中!」


透がモニターへ駆け寄ると、画面に映る街の地図には、無数の赤い点が表示されていた。


「こんな数……」


隊員が震える声で報告する。


「確認できているだけで百体以上!」


「しかも複数箇所で同時発生しています!」


紅蓮が腕を組み、


「どう見ても自然発生じゃねえな」


と、透も険しい表情になる。


嫌な予感がした。


誰かが仕組んだような、そんな気配がする。


「各班へ出動命令」


透が即座に指示を飛ばす。


「住民の避難を最優先。妖の討伐はその後で構わない」


「了解!」


隊員達が次々に施設を飛び出していくが、数分後、再び悲鳴のような声が響いた。


「リーダー!!」


「どうした!?」


隊員の顔は真っ青で、震える指がモニターを指している。


「施設周辺に妖反応です!」


「何?」


紬も画面を見ると、そこには《夜叉》の施設を囲むように現れた赤い点が何個も。


しかも、反応値が異常だった。


「特級です!」


「特級だと……?」


紅蓮の表情も険しくなる。


完全に特級の妖は、施設を包囲している。


「緊急特別討伐班を!」


透が叫ぶが、返ってきた報告は最悪だった。


「現在、市内各地の対応で手一杯です!」


「到着まで三十分以上かかります!」


特級を相手にするには致命的な時間だった。


紬は拳を握り、


「なら、私が行きます!」


と即答だった。


「特級なら私と紅蓮で――」


だが、透が紬の手を掴んだ。


「え?」


透の瞳が、真っ直ぐ紬を見つめていた。


「紬ちゃんは、僕の傍から離れないで」


「でも……!」


「駄目だ」


透は首を横に振ると、少しだけ表情を曇らせた。


海岸での出来事が脳裏を過る。


あの日、紬の左手は血に染まり、宵のせいで3日間も目を覚まさなかった。


大切な人を失うかもしれなかった恐怖は、今も消えていない。


「もう絶対」


透の握る手に力が入り、


「君を傷つけさせない」


紬は何も言えなくなった。


「今回は透の言う通りだ」


「紅蓮まで……」


「お前、自覚ねえのか?……海岸での出来事から、ずっと思ってた」


「?」


「お前は、宵に狙われてんだよ」


透も静かに頷く。


「僕もそう思う」


紬はどうしても納得出来ず、唇を噛んだ。


だが2人の真剣な表情を見ると、反論もできなかった。


透はそんな紬を見て、優しく微笑む。


「だから、僕と一緒じゃなくちゃ駄目」


紬は小さく頷くと、透も少し安心したように息を吐く。


そして紅蓮を見て、


「紅蓮、行こう」


「ああ」


3人が管制室を出ようとした、その時だった。


突然、施設全体が大きく揺れ、


「きゃっ!」


紬がよろめく。


「結界が攻撃されています!」


外部カメラへ映像が切り替わると、そこには巨大な特級のダイダラボッチのような妖が、結界へ何度も体当たりしていた。


結界にヒビが入り、細い亀裂が走っていく。


ダイダラボッチの次の一撃で、蜘蛛の巣のように広がった。


「まずい……!」


透の表情が変わり、紅蓮も舌打ちした。


「やられた……」


結界が砕け散り、光の破片が空へ舞った。


管制室が静まり静まり返る。


その時、隊員の1人が震える声を上げた。


「何か……来ます!」


モニターに映る黒い影が2つ。


崩壊した結界の向こうから歩いてくる。


紬の瞳が揺れ、


「玲さん……」


透は拳を握り締める。


「宵……!」


モニターの中で、宵は突然立ち止まった。


まるで、監視カメラ越しにこちらを見ているかのように、ゆっくり顔を上げる。


そして、口角を上げた。


「ふふ。また会えましたね、紬さん。」


紬の背筋がぞくりと震え、その隣で透の表情が冷たく変わった。


「……こいつ」


紅蓮も鼻を鳴らす。


「紬ばっか狙って、気持ち悪い奴だぜ」


宵はそんなことなどお構いなしだった。


まるで再会を喜ぶように微笑みながら、ゆっくりと施設へ足を踏み入れる。


黒い炎を纏った刀を持った玲も、後ろに居る。


そして、戦いの幕が上がろうとしていた――。


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