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不撓不屈の勇者の従者  作者: くろきしま
第1.5章 村を追い出されたのに、近くの森で迷子になりました。
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第5話 迷った森とスライム

すいません。仕事の都合で執筆に時間をさばけませんでした。

23日には目途が立つので次回更新は24日の日曜にさせて下さい。


24……あ。

 森で迷ってから二日目を迎えた。


 森を抜ける案について四人で話し合い、後ろにさえ進まなければ良いという楽観的結論に至ってしまった。

 前方をステラとイースラ、その後ろを俺(方向音痴のため)、そして最後尾にレイラが跳ねながら黙々と歩き続けた。


 信じられるか? こいつ勇者なんだぜ?

 人気のない森の中で良かったと思う。


(やらせているのは俺だけどな!!)


「ねー、まだー? もりー、でれないのー?」


 まるで雛鳥のようにバタバタと跳ねながら言ってくる。


 なんか煽られてる気がしてイラっとくるな……。


 だが、レイラの言う事も当然だ。

 正確な時間の感覚は薄いが、もうかれこれ四時間以上歩き続けている。


 ステラに今何時くらいなのか尋ねると「この一帯の木が高すぎて太陽の位置が分からない」と返って来た。

 ……わからないならそう言えば良いのにな。


「…………うん? ねーねー」

「今度は何だ?」

「なんか、あそこに、ブヨブヨした、塊があるんだけど……」

「ブヨブヨ?」


 レイラが指し示した方を見ると、薄緑がかった掌ほどの水の塊が木にへばり付いていた。

 ステラ達も戻って来てそれを見る。


「……スライムか。この大きさからすると生まれて然程経っていないな」

「スライム? イクスは、知ってる?」

「魔物だろ?」

「まもっ!?」


 驚いたレイラは一足飛びで一メートルほど離れた。

 ……もう特訓の成果が出ている?


「レイラ様、そこまで怖がる事はないのですよ。スライムはとても弱いのです」

「そもそも生き物ではないしな」


「「え?」」


 イクスとイースラは同時に驚きの声を上げた。

 何故ならスライムは魔物業界最弱という認識が一般的なのだ。


 魔物討伐の中にはスライムが対象となる場合がある。

 魔物とはすなわち生き物であり、魔物であるスライムもまた生き物であるはずなのだから。


 だがステラは違うと言う。

 それでも納得出来なかったが――


「こんな心臓や消化器官もない水の塊が生き物なわけないだろう」


 の一言で納得出来た。


「スライムは魔物どころか生き物ですらないが、その危険度は魔物級なのは確かだからな。そういう事情もあって魔物として処理されている」

「え? この弱っちょいスライムが危険なのです?」

「……イースラ。そこの二人はともかく、お前は知っていなければ駄目だろう。信仰だけではなく知識も深めておくべきだぞ」


 ステラが残念そうにイースラのおでこを人差し指で軽く弾いた。

 あ、イースラが石になった。


 よほどショックだったんだろう。

 分かるぞ。


 駄目ルフがこの森で知識の獣とかしている。


 油断すれば俺もイースラの後を追う羽目になりかねない。


「スライムの危険性だが、大きく分けて二つだ。一つはスライムに不用意に触れると窒息してしまう恐れがある事。二つ目はスライム同士がくっ付いてどこまでも大きくなる……こんな風にな」


 ステラは別のところにいた同じようなスライムを持ってくるとそばに置いた。

 するとどうだろう、スライム同士が近づいて混ざってしまった。


 皆でおおー、と感心してしまった。

 互いで近づき一つになる。

 これで生き物じゃないなら何なんだろうか。


 生命の神秘について考えさせられるが、次の瞬間――


 ビチャッ


 容赦のないステラの掌がスライムを襲う。


「「「あぁっ!?」」」


 グリグリグリ


「「「そ、そこまでしなくても!!」」」


 潰した掌でそのままスライムを擦り潰していくステラの姿に、俺たち三人はドン引いた。

 スライムに恨みでもあるのか!?


「ふふふ、このようにスライムはどこまでも大きくなっていく。そうならないように近隣の村々は定期的にスライムを駆除しているんだが……どうした?」


「……いえ」

「……なんでも」

「……ないのです」


 思わず顔を逸らした。

 今まともにステラの顔を見ると、絶対に後悔すると本能が全力で警告していた。



「そうか? あぁそうだ。ちょうど良い……。

 過去に起こった悲劇をで挙げるとしよう。


 ……とある街でスライムを飼う事になった。

 きっかけは少年少女達が大人達にせがんだそうだ。


 大きさは掌程度、大人達も自分で世話をするならばと、許したそうだ。

 最初こそ手乗りサイズだったらしいが、そいつは日に日に大きくなり、最後は山ほどの大きさまで育った。


 ……それがある日、限界を迎えた」



 ゴクリ



「山ほどに大きくなってしまったスライムは、自身の重さを維持出来なくなり、ある日突然……弾けたのだ。


 ……文字通りな。


 ブクブクに膨れ上がったスライムは波のように街に広がり、人と街を一瞬で飲み込んでいった……。

 幸い、建物が壊れはしたが人は無傷で済んだ。


 後でわかった事だが、スライムはマナを大量に含んだ水がその正体だったらしい。

 マナを含んでいたおかげで、飲み込まれた人は傷ついたそばから治っていた……死者が出なかったのはそのおかげだ」



 なんだ、スライムって便利なんじゃん。

 とは誰も言わなかった。


 いや、言えなかった。


 ステラの目は据わり、その視線はどこも見てはいない。

 これが幸いした。


 もし、その視線を浴びようものなら…………死ぬ。

 視線だけで殺される。

 そんな気がしてならない。


 だが、スライム講義もこれで終わりだ。


 そう思って身を動かそうとした時――



「でも彼らの不幸は終わってなかった」



 俺たちの不幸も終わってなかった!?



「自体は収束したかと思った。今後はスライムは駆除の対象とする事が決まったのだ…………。


 だが、全然収束なんてしていなかった! 


 小さく無数のスライム達が集まり、次の日にはまた山のような大きさになっていた。

 当然弾ける。飲まれる。集まる。弾ける。飲まれる。


 永遠それを繰り返し、大人も子供も皆憔悴していった。


 ははは、街は壊滅的被害を受けているのにも関わらず、そこに住まう人々は健康そのもの……。

 皆必死になってスライム駆除だ。


 大人も子供も男も女もお年寄りさえ鬼気迫る勢いで駆除して行った。


 毎日毎日毎日毎日朝も昼も夜も、スライムに飲まれれば回復し、力果てるまで駆除の毎日……。

 周辺諸国からは笑いのネタにされるようにもなった。


 当然、スライムを飼おうなんて言い出したクソガキ達も世間に晒された!」



 や、やめろ! それ以上聞きたくない!!



「私だ!!」



 やめろぉおおおぉおぉおぉぉぉぉ!!

 知ってたよ!! 察してたよ!! そのクソガキの一人がお前だろうって思っていたよ!!


「このような悲劇きげきを自分の国では起こすまいと、世界規模でスライムを魔物扱いとして駆除されるに至ったわけだ」


 い、居た堪れない。


「だが同時にスライムが大量にマナを含んでいることも判明し、ポーション等の素材として需要が高まった。今やお子様冒険者のお小遣い稼ぎとして大人気らしいぞフフフフフ」


 だから居た堪れないって。

 俺たちは予想外のところで、ステラの闇に触れてしまった……。


 その夜、むちゃくちゃ自主練した。

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