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不撓不屈の勇者の従者  作者: くろきしま
第1章 村娘が勇者になったので、従者として一緒に旅に出るようです。
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第28話 勇者VS村人 その3

「『っ!?』」


 レイラ(?)は困惑していた。

 切り飛ばしたはずの腕が自ら動きだし、本来の場所に戻って絶命の一太刀を受け止めた。

 そんな彼はおよそ人間の範疇にいないのは明らかだ。


 レイラの記憶を共有した限りでは、イクスという男はただの人間そのものだった。

 六歳で別れ十五歳で再会した九年間に『人でなくなった』ということなのだろうか?


「うらぁああっ!!」

「『無駄です。あなたの動きは把握ごほぉっ!?』」


 無造作に斬りかかる剣を受け止めたレイラ(?)だったが、ほぼ同時に脇腹に衝撃が走る。

 なんとか踏ん張るレイラ(?)だったが、イクスの構えからこの衝撃がイクスの膝蹴りだったことを知った。


「『剣は囮、ですか……っ!? そう何度も同じ手を――


 レイラ(?)は最後まで言葉を紡ぐ事は出来なかった。

 イクスは次々と斬撃、拳、蹴りを繰り出す。

 その連撃に対処するのにレイラ(?)自身余裕がなくなっていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「す、すごい……でも一体何が起こったのか……」


 サカモトもまた困惑していた。

 レイラ(?)と同じような理由だが、彼のおかげで命が繋がっている分、別の感慨が胸中をざわつかせていた。


「すごいものだな、まさか切り飛ばされた腕がくっつくまでとは思わなかった」

「ふ、二人とも大丈夫なの!?」

「はいなのです。あの金縛りは何だったのですかね……それよりも」

「あぁ、『例のポーション』の効果のようだな」

「例の? 一体何の話?」

「お爺さんに襲われた時、お兄さんに特別製のポーションを使ったのです。腕がくっついたのはその効果がまだ残っていたからなのですよ」


 イースラの言葉を聞くとサカモトは息を呑んだ。

 そして戸惑いながら問う。


「なら……ならイクスはちゃんと『人間』なんだね?」


 ステラはサカモトの肩に手を添えて答える。


「大丈夫、彼はちゃんと『人間』だ。安心すると良い、次第にポーションの効果は切れるだろう」

「それを聞けて安心したよ……でも」


 サカモトの視線は戦闘を繰り広げている二人に戻る。

 ついこの間まで、普通に笑い合いふざけ合っていた二人が今、殺し合いをしている姿がそこにある。

 イクスはどうだか知らないが、レイラは彼を好いていた。

 あり得ないはずの光景が、あってはならないその光景をどう受け止めるべきかわからない。


 ステラもイースラを見ると、どうやら同じような心境のようだ。

 いやむしろ、もっと辛そうにサカモトの眼には映っていた。


「あぁ……こんな光景見たくないものだ」

「……ボク達がこの事態を招いたのです」


 そうか、そもそも彼等がレイラに勇者宣言をしに訪れたのだとサカモトは察した。

 だが実際にはステラ達が来る前からレイラは勇者として選ばれていた。


 二人にとって重要な事はそこではない。


 もしもイクスを巻き込まなければ。

 少なくともこの光景を見ずに済んだだろう。


 間違いなく二人の責任なのだ。

 言い訳も出来ない。


「そうだな。なら私達で責任を果たさなければ」

「なのです……でもさっきみたいに金縛りに遭うかもなのですよ?」

「……ここ一番のところで邪魔してやろう」

「さすが駄目ルフなのです」

「う、うるさい!! 勘付かれたら邪魔もさせてもらえないだろ!?」



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 おかしい。

 何度目になるかわからない困惑をレイラ(?)は感じていた。

 イクスの攻撃の隙を狙う為、防御に徹していたが一向に隙がやってこない。

 剣を振るう時の人の行動は二種類にまとめられる。

 無呼吸で斬るか、息を吐きながら斬るかだ。

 連続で斬るのなら大抵は無呼吸になる。

 息が切れるか体力がなるなるか、それを迎えた時が隙となる。


 その筈なのに。


 彼の攻撃は途切れる様子を見せない。


 何故?


「『……ッ!? そういうこと、ですか。あなたは呼吸をしている。吐きながら斬り、吸いながら斬っているのですね。それならば後は体力の問題です。あなたが力尽きた時、それが死ぬ時です』」


 イクスは内心焦っていた。

 距離を取られれば先程と同じ展開を繰り返す事になる。

 それならばと超攻撃的に接近し離れなければ良いと考えたが、どうやらこれも通用しないようだ。

 二の腕が、関節が、ふくらはぎが悲鳴を上げている。

 徐々にだるさを感じ、一振り一振りが重く感じる。

 限界は近い。


「…………クソッ!!」

「『見せました! 逃しません――っ!?』」


 遂に攻撃が途切れた瞬間をレイラ(?)は見逃さなかった。

 その瞬間を逃すまいと剣を振り上げ一歩を踏み込もうとした刹那、レイラ(?)は既視感を感じた。

 ハッとレイラ(?)はステラ達を見るがもう遅かった。

 踏み込んだその一歩がそのまま地面に沈み込み、足を取られ盛大に地面に接吻する事になった。


「うわっ、痛そぉ……」

「……な……です」


 サカモトとステラは目を両手で覆ったが、イースラは聖書を見つめていた。

 そしてイクスは――


「取ったぞ、後ろを!!」

「『しま――


 ズルッ


「「「『え゛っ』」」」


 レイラ(?)の頭を押さえつけ、あろうことかレイラのズボンをパンツごと引き摺り下ろした。


「昔から悪い事をしたら尻叩きの刑と相場は決まっている。覚悟は良いな」

「え? なにして……は? え? ――

「お兄……さ――

「ちょっ、イクスそれなんてエロゲ――

「『は、話し合いましょう。争いは何も生まれ――


「はぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」

「『あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?』」


 盛大に尻を叩く音と悲鳴が山に反響して少しの間村一帯に響き渡っていた。

一切無情これにて決着。

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