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不撓不屈の勇者の従者  作者: くろきしま
第1章 村娘が勇者になったので、従者として一緒に旅に出るようです。
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第24話 勇者

ついに書き溜めた分がなくなりました。


私事ですが会社の移転でバタバタしていることもあり、不定期投稿になるかもしれません。

申し訳ございません。

「『願望を受理しました』」


 唐突にレイラは語り出した。

 レイラの口から出た言葉であり、声であるにも関わらず、まるでレイラではない別人がそこにいるかのようだ。


 そこに一切の感情は無く、先程まで握りしめていた剣も手から抜け、力なく立ちながら誰に話しかけるでも無く、淡々と一人こぼす姿に、ステラを始めとした皆が困惑せざるを得ない。


「『これより敵対勢力を排除します。……聖剣を生成……失敗しました。使用条件を満たしておりません。適正手段を検索……完了。擬似太陽?『信仰の輝き』(イシャレイ)の生成が妥当……周囲のマナを探索』」


 レイラが人差し指を天に向けた瞬間、指先からマナの波が薄く広がる。


「っ!? レイラ、一体何を——」

「ダメ! 今近づいたら巻き込まれる!!」


 レイラに近づこうとするステラをサカモトが止める。


「サ、サカモト殿!? 離してくれ!」

「何言ってんの!? 今あれに近づいたら身体中のマナを搾り取られるって魔術師なら分かるでしょ!!」

「っ!? だがこのままレイラを放っておくわけにはいかないだろ!!」


 サカモトが言う通り、ステラにはレイラが何をしようとしているのか分かっている。

 正確には何かをやろうとするために、膨大なマナを掻き集めようとしていることが分かっていたと言うべきだ。


 マナは人の体から放出されると、その人間の跡が残る。

 その跡は暫くの間、放出した者は知覚できる性質をもっている。


 例えばステラが以前使ったライトニングボルト、それはこの性質によって位置やタイミング等を図ることが出来ている。


 そして今レイラは自分の跡が残ったマナを飛ばし、大気中にあるマナにぶつける事で知覚しようとしていた。

 なぜマナを知覚する必要があるのか、当然『使うため』だ。


「そもそもだ……何故そんな事をレイラが出来る」


 レイラは良くも悪くも平凡だった。

 ごく普通のどこにでもいる女の子だ。


 確かに肥翼竜や影狼との戦闘で彼女に高い素質を感じたが、花開くのはもっと先の事だ。

 レイラを戦力のとして数える事は難しい。


 魔法の使い方どころかマナの扱い方さえ知らなかっただろう。

 だが、現実として彼女はマナを行使している……それも完璧と言えるほどに。


 そんなステラの疑問に皆沈黙で答えるしか出来なかった。



 動きがあった。


 虚空を見つめていたレイラが「『…………大容量のマナを保有する死骸を発見。分解、再構成を始めます』」と呟く。


 後方の山から金色に輝く粒子が連なってレイラの元に集まりだした。

 集まった粒子はレイラの周りを輪を描くように回る。


 それと同時にレイラの髪が栗色から金色に輝き、その瞳は青く染まった。


「これが……全てマナだというのか!?」

「一体何をする気なのです!?」

「こんな目に見えるほど高密度のマナなんて……まさか」


 サカモトには気付いてしまった。

 レイラに集まる高密度のマナがどこから来たのか。

 まるで天の川のように煌きながら流れてきたマナの流れは、山のある一点から発生している。

 その場所は……自分が先程までいた場所だという事にサカモトは気付いてしまった。


「『必要量のマナの集積を確認。擬似太陽?『信仰の輝き』(イシャレイ)の生成工程に入ります』」


 周囲を回っていたマナがレイラの人差し指に徐々に集まり、円線型の模様を形成する。

 生まれたのは一枚の白く輝く小さな陣だった。

 小さな陣はゆっくり回転し、次にマナは小さな陣に流れ込むと一回り大きい陣がもう一枚生まれた。

 その陣は小さな陣とは逆の回転を始め、更にもう一枚、もう一枚とその数を増やしていく。


「…………魔法陣……なのか? こんな術式見た事がない……それにあの白い輝きは一体……」

「ボクを見ても困るのです。少なくともボクの知っている神聖術にあんな模様はないと思うのです」

「模様……違う、あれは文字……アラビア文字みたいに繋がって模様みたいに見えるんだ」

「アラビア文字? 何か知っているのか!?」

「ご、ごめん。似てるんだけど多分違う……また増えた!?」

「イシャレイ……古代語で信仰の輝き……擬似太陽……っ!? まさかレイラはここら一体を焦土に変えるつもりか!?」

「なのです!?」


 生まれたのは全部で十二枚の陣だった。

 互い違いに回転する魔法陣から焦げ臭さを感じ始めると、小さな球体の火が生まれ、あっという間に大きくなっていく。


 大きくなっていくにつれ、焦げ臭さよりも肌が焼ける程の熱量を感じ、魔法陣ごと空に昇っていく。

 本物の太陽と異なり、直視する事は不可能ではない。


 村全体を明るく照らし、夜にも拘らず日中と変わりないまでになった。


「『工程終了、擬似太陽の生成に成功しました。 これより殲滅行動を開始します』」


 天に掲げた人差し指を下ろした瞬間、空に浮かぶ擬似太陽から細長くうねる糸のようなものが無数に伸び、村に向かって降り注ぐ。

 まるで自我があるかのように影狼に伸びていき、糸は影狼を絡め捕るとその熱で細切れにしていく。


 細切れになった影狼の肉片が元に戻ろうともがくが、それよりも先に核である魔石を糸が触れると肉片は塵となって消えていった。


 一瞬の出来事だった。


 村中の影狼達が今のように一瞬で灰塵に帰していった。


「……終わったのか……」

「……何がここら一体を焦土に変えるつもりか!? なのですか!! 本格的に駄目ルフの称号を狙いにいってるのです!?」

「い、イースラまで……おのれイクスゥゥゥ!!」

「ちょーーと気を抜くのは待った方が良いんじゃないかな?……あれを見てみなよ」

「ん……っ!?」

「太陽が……消えていない、のです」


 マナによって生成された擬似太陽は未だ消えることなく村を照らし続けている。


「ははは……嫌な予感しかしない」


 レイラは虚ろな目でサカモトに目を止めてた。


「『未確認種族を確認。禁則事項第1項、種族管理義務第3条に抵触。天罰執行を要請……失敗。これより天罰代行を始めます』」

「未確認?」

「種族?」

「ちょっと!? もしかして僕の事!? 人をUMAみたいに言わないでほしいんだけど!?」


 擬似太陽から再び糸が伸び、全方位からサカモトに迫る。


 思わず目を瞑るサカモトだったが、いくら経っても死ぬことは無かった。

 恐る恐る目を開けると、太陽は大きな穴が開いていて崩れているところだった。


「……あ、あれ?」


 何が起こったのか分からない。

 そんなサカモトを後ろから声をかける者がいた。


「なぁ、これって一体どういう状況なわけ?」


 握りこぶしほどの大きさの石を玩びながらイクスは言った。

2017/10/05 加筆修正

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