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不撓不屈の勇者の従者  作者: くろきしま
第1章 村娘が勇者になったので、従者として一緒に旅に出るようです。
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第EX3-2話 地獄 □凹

連投二本目


イクス達の視点ではありません。


本内容にはグロ、胸糞要素が含まれています。

苦手な方はスキップをお願いします。


 もしも、今この目の前の光景を一言で表現するなら、地獄以外にないだろう。

 其処彼処で火の手が上がり、自分達を襲っているのが何か分かった。


 人の大きさほどある黒くて大きな狼。

 突然、音もなく現れ、村の人間を襲い始めた。


 襲い、喰らう。

 赤子も、大人も、年寄りも、男も女も分け隔てなく、只々貪り続けていく。


 肉を喰らい、骨を齧り、血溜まりを舐める。

 獣にとって極々普通の行為なのかもしれない。

 だが、喰われているその肉は、骨は、血は、つい先程まで苦楽を共にしていた家族であり、恋人であり、隣人だった。


 悲鳴を上げる者、抵抗する者、自分を犠牲にする者。


 その悉くに黒い狼達は群がった。

 そんな光景が至る所で行われている。


 それを掻い潜るように、二人の影が走る。


「息を殺して、足を止めちゃダメだ!!」


 ザングの言葉に頷いて返し、クューニアは必死にザングの速度についていく。


 上手く逃げ延びたら、そのまま二人で旅に出よう。

 元々は恋人であるザングと共に旅行に出るつもりだった。

 それが早まるだけ。


 手を引かれながら、流れていく地獄絵図を眺めるクューニア。

 そんな景色の中で、足を止めずにはいられないものがあった。


「お……母さん?」


 五匹程群がっていた狼から弾き飛ばされるように転がってきたのは……。


 母の顔だった。


「あぁ、あぁあぁぁぁぁ……」


 普段から口煩く、怠けていると直ぐに蹴りが飛んでくるような人だった。


「いやあああああああああああああああああああ!!」


 でも、ザングと恋人になった時は誰より喜んでくれたし、体調を悪くすると誰よりも献身的になってくれた。


「お母さん!! なんでお母さん!? ちがっ、こんな、ひあああああああああああああああああ!!」


 旅行が決まった時は少し寂しそうに、でも思いっきり拗ねて、王都のお土産を約束するまで機嫌が悪かったりした。

 子供は計画的に作れと言われた時は、初めてお母さん直伝の蹴りをお見舞いした。


「なんで顔だけ!? 髪は!? 体は!?」


 そんな母の顔はあっという間に塗りつぶされていく。

 恐怖で歪み、涙を流す母の顔。


(こんな顔を私は知らない! こんな顔を私は知らない! こんな顔を私は知らない! こんな顔を私は知らない! こんな顔を私は知らない! こんな顔を私は知らない! こんな顔を私は知らない! こんな顔を私は知らない! こんな顔を私は知らない! こんな顔を私は知らない! こんな顔を私は知らない! こんな顔を私は知らない! こんな顔を私は知らない! こんな顔を私は知らない! こんな顔を私は知らない! こんな顔を私は知らない! こんな顔を私は知らない! こんな顔を私は知らない! こんな顔を私は知らない! こんな顔を私は知らない! こんな顔を私は知らない!)


 …………もう、この顔しか思い出せない。


 五匹が争うように食事をしていると、当然争いに負けるものが出る。

 内一匹が弾かれて、次の獲物……クューニアに狙いを定めた。


(…………やだよぉ……もう、嫌だ……いい、なんでも……どうでも)


 地面を見つめ、力が抜けてへたり込む。

 手を引っ張ってくれた力は今はない。


「立て!! 立つんだクューニア!!」


 狼との間に割って入ったのはザングだった。

 両手に壊れた農具を構えるザングに、狼も身構えた。


「……ザング?」

「立って! 僕が引きつけている間に君は逃げろ!!」

「……なん……で。……だって、もぅ……」

「生きなきゃ何も始められない!! 何も!! 僕達は何も始まっていない!!」

「いき……る…………はじめ……ゆう……しゃ…………わたし」


 クューニアの瞳に光が宿る。


(そうだ。勇者だったらお母さんを守れた。お父さん、村の皆んな……レイラは助けてくれなかった!! 私なら助けてたのに!! 私なら……違う! 私が本当の勇者なんだ。本来は私が勇者になるはずだった。でも、レイラが私から勇者を取った! 生きなきゃ、取り戻さなきゃ!! 力を……勇者の力を私は!! その為ならなんだって出来る。やってみせる。)


 どこまでも暗く、濁った光だった。

 だが、その光はクューニアに力を与えた。


 手に、膝に、足に自然と活力が戻る。

 しっかりと力強く大地を踏みしめて、クューニアは立ち上がる。

 そしてそのままザングの背を強く押した。


「…………………………へ?」

「生きるわ……私は生きる。今は無力だけど、必ず取り戻して見せるわ。だからあなたは私だけを見ていてね。愛してるわ、私だけの恋人……私だけの、イクス」


 そう言い残して彼女は逃げる。

 もう何も目に止まらない。

 もう誰の声も気にもならない。

 足も止まらない。


 村を抜け、森に入り、泥にまみれ、それでも逃げる。


 クューニアは考えた。


 こうなったのは誰のせいか。

 何故、大切な恋人を、親を、村の皆んなが死ななくてはならなかったのか。


「レイラ…………私から全て奪った女……勇者も……イクスも…………必ず私は取り返す!!」


 クューニアは夜の森へと姿を消した。

クュ―ニア視点はここまでです。

次はレイラ達の視点になります。


同じ世界に生きているのに、視点が変わるとまるで別作品のようだ。

そんな風に思っていただけたのなら本望です。


ご意見ご感想を是非お聞かせください。


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