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不撓不屈の勇者の従者  作者: くろきしま
第1章 村娘が勇者になったので、従者として一緒に旅に出るようです。
26/67

第EX3-1話 晩餐 △凹□

イクス達の視点ではありません。


若干のえってぃな表現と過度な胸糞展開、グロテスクな表現があります。

苦手な方はスキップをお願いします。


大丈夫な方は先にEX2を読んでおくと、より楽しめると思います。

EX2→ http://ncode.syosetu.com/n4853ea/9/

 村の外れにある倉庫には、壊れた農具などが仕舞われている。

 何かに使えるだろうと誰かがやり始め、村中の使い道の無い物が捨て置かれるようになった。

 その隅に干し草が積まれ、その上で一組の男女が絡み合っていた。


 汗やら汁やら埃やら、様々な匂いが混ざり合い、背徳感も相まって反ってそれが二人をより興奮させた。


「どうした? 今日は……んっ……随分情熱的じゃないか」

「ん~? 別にぃ。……それよりもぉ……ちゃんと集中してぇ……っちゅぷ、もうちょっと固くしてよぉ」

「おいおい、まだ枯れちゃいないぜ。っ……まぁザングには……ちょっと悪い気がするが……な」

「だってぇ~、退屈なんだものぉ。他にやる事もないしぃ……ん~~」


 クュ―ニアと男はそれ以上語る事はやめ、行為に耽る。

 クュ―ニアが不特定の男と行為におよぶのは今日に始まった事ではない。

 カミュナ村は自給自足の村だ。

 危険も少なく、自然豊かな環境は生活するのに困らないが、絶対的に娯楽という物が欠けていた。

 日々の生活に楽しみを見いだせれば良いが、無いと苦痛でしかない。


 クュ―ニアもその一人だった。

 この村が嫌いだ。

 日々ただ息を吸うだけの人生、見渡す限り森と山と家畜。

 時々自分と家畜の違いが無いように感じ、その都度深い苛立ちを覚える。

 そしてその苛立ちは、全て男たちを使って解消する事になる。


 クュ―ニアにとって、ただ快楽を貪る事だけが唯一の娯楽だった。


 一通り行為が終わると、先程までの情熱はどこへやら、途端に全てが面倒臭くなり冷めてしまう。

 自分に乗っかっている男を押しのけ、身だしなみも適当にすまし服を着る。

 陽は既に落ちていて、辺りは暗くなっていた。


 幾らかは鬱憤が晴れ、涼しい風も手伝って身体の熱は下がったものの、未だ苛立つ気持ちは落ち着かない。


(本当は私がぁ、勇者になるはずだったのになぁ)


 あの日の晩、見知らぬ女が話しかけてきた時をクュ―ニアは思い出していた。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「相席よろしいかしら?」

「えぇ、いいわよぉ」


 明らかに村の人間ではない女がそこにいた。

 この村に外の人間がやってくることは極端に珍しい。

 近年、行商人の男の子がやってきたが、こうも頻繁に人が来る事など今までなかった。


「もしかしてぇ、若い行商人に乗せられでもしたのかしらぁ?」

「すいませーーん、お酒とつまみ適当で!! なんでそう思うのかしら?」

「んふふ、だってぇこの村には何も無いものぉ。あるのはー自然と野菜とお肉だけ……お金なんて存在しないし、名物もない。そして何よりぃ――」

「娯楽がない?」

「あらぁ~、だぁいせぇかいパチパチぃ」


 この時のクュ―ニアは大分酔っていた。

 ザングと村の外を旅行する事が決まり、思いの外浮かれてしまった事が原因だった。


 そして更に浮かれてしまう事になる。

 彼女はレイラが運んできた酒とつまみを食べながら、外の事を色々聞いた。

 外では今こういう服が流行っているとか。

 貴族の一夜限りの恋、平民から成り上がった女性の話。

 クュ―ニアは目を光らせ女の言葉に聞き入っていた。

 女性の方もクュ―ニアに気を良くし、様々な事を聞かせた。


 あらかた話し尽くし、酒がつまみが何周したかも忘れた頃。


「娯楽が無いと言ったけれど、あなたがいたわ」


 どきりとした。

 きっと自分が男だったら堕ちていただろう。


「あらぁ~、女性からのお誘いは初めてだわぁ~」

「あなたが望むなら、これ以上ないっていうほどの娯楽を与えてあげるけど?」


 クュ―ニアは息を呑んだ。

 目の前の女性から、妖艶なのに神秘的で、先程まで酔いのまわった瞳をしていたのにも関わらず、今は何処までも深い森の奥のような瞳でこちらを見ている。


「ぐ、具体的にはどんなのかしら?」

「んふ、悪い奴いるから懲らしめて欲しいのぅ。その為のお膳立てはしてあげる。力も名誉もお金も、地位さえも思いのまま。楽しいわよ」


 ……どう答えるべきだろうか。

 というか、怪しさ満点だった。

 もう目の前の女性が精度の低い詐欺師にしか見えない。


 断ろう。

 そうクュ―ニアは返答しようとした時――


「うん、いいよー」

「「へ?」」


 クュ―ニアでは無い間の抜けた返答が別のところで上がった。


「まったく、困るよねー分かる分かる。大丈夫、私がちゃんとやっつけてあげるよ」

「へ? あ? え? ……あぁ~……ま、いいか。それじゃあ君にお願いしちゃおうかな?」

「任せて、だてに酒場で働いてないから!!」


 この瞬間、レイラ『が』勇者になったのだった。

 このままなら私が勇者になっていたハズなのに。


 イクスに守ってもらうのは私になるハズだったのに。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 要は過ぎた事をぐちぐち根に持っているのだ。

 全てはもう手遅れ、散った木の葉はもう元には戻らない。


 そんな仕方のない思考に捕らわれながら、戸を開いた。


「……クュ―ニア」


 ザングが悲しそうな顔をしてそこにいた。


「あらぁ、ザングどうしたのぉ?」

「どうした? それは僕の台詞じゃないかな?」


 手を握りしめ震わせながら、ザングは震えた声で言った。

 嫉妬している。

 その事実がクュ―ニアにとってこの上なく嬉しかった。

 だから。


「……なんのことかしらぁ?」


 とぼけて見せる。

 恐らくどこかで見てたか聞いていたかしていたのだろう。

 自分の女が別の男に抱かれているのを。

 クュ―ニアはときめいていた。

 まだ見ぬ未知に。

 ザングが抱いている感情の波に。

 それをおもんばかると、冷めたはずの身体の熱が再度火が付くのを感じる。


「ビオスとここで何してたの?」


 分かっているのに!

 知っているのに!


「決まってるじゃなぁい。ここで彼に抱かれてたのよ」


 言っちゃった!!

 どうしよう言っちゃった!!

 もう後戻りは出来ない。

 この後自分はどうなってしまうんだろう。


「僕は……一体君にとってなんなんだ」

「愛しているわぁザング、私が心から愛しているのはあなただけよぉ」

「それは……嘘だ」

「ビオスとは身体だけの関係よぉ。良いじゃない、気持ちいいんだからぁ。でも私がぁずっと傍にいたいのはザングだけなのよぉ」

「嘘だ」

「愛しているわぁ」

「嘘だ」

「あなただけ」

「君が本当に好きなのは僕じゃない。イクスだろ」


 ……

 …………


「え? なん……イクス?」

「君はずっと昔から……子供の頃からイクスの事を見ていたね。せっかく……いなくなって、僕と恋人同士になったのに!! あいつは戻ってきた!! どうして!! 君は僕の恋人なのになんであいつばっか見てるんだ!! 良いさ好きに見ればいい、どうせイクスにはレイラがいる!! そう思って我慢したのに他の男で憂さを晴らすなんて……どうして僕を使わない!! 僕はいつだって君の傍にいただろう!! なんでわざわざ他の男を使うんだ!! 出てこいビオス!! クュ―ニアが満足できたかどうか僕にお前を見せてみろ!!」


 ザングは完全に錯乱していた。

 もちろん、ザングが取り乱した様には驚いた。

 だがクュ―ニアが本当に驚いたのは、まさかイクスへの恋心を見破られていた事だ。


 優しかったイクス、泣き虫で女の子のようなイクス。

 でも必死で私を守ってくれたイクス。

 村から出ていく事になって、仕方なく一緒に遊んでいたザングと付き合うようになった。


 もう二度と会えない。

 そう思っていたのに、帰ってきた彼。

 彼とはもうまともに言葉を交わしていない。

 それでも彼の姿を目で追ってしまう。


 バレていた。

 全部ザングにバレていた。


「うわぁぁぁあああああぁぁぁぁぁああああ」


 倉庫の奥で悲鳴が上がる。


「ザング?」


 ビオスのところへ向かったはずのザングの声だ。

 倉庫の奥は暗くて見えない。

 未だ立ち込める男と女の匂いの他に、鉄の臭いがクュ―ニアの鼻に届いた。


 嫌な予感がする。

 まさかザングとビオスが自分を取り合って……と考えが過ぎった。


 流石のクュ―ニアもその手の重い展開は御免だった。

 ザングを追ってクュ―ニアも奥へ入る。


 生暖かい風を感じる。

 壊れた農具も多い事から、先程から鼻を刺すこの鉄臭さは農具からなのだろうとクュ―ニアは納得した。


 くちゅり、くちゃくちゃと音がする。

 先程までクューニアとビオスが立てていた音に似ているが、この先にいるのはビオスとザングだ。

 一体何が起きているのか。

 時折鼻息が乱暴に震える音も聞こえる。


 あと少し。

 あと数歩、歩みを進めれば見える。

 無意識にクューニアは足音を消し、息を細めた。


 乱雑に置かれた農具の隙間から覗き見た瞬間、クューニアの瞳は見開いた。


「ッ!?」


 黒く大きな影がビオスの覆い被さっていた。

 モゾモゾと蠢きながらビオスにその身を埋めている。


 月の光が差し込んだ時、その光景はより鮮明にクューニアの視界に映った。


 獣だった。

 黒い獣がビオスに跨り、腹に顔を埋めて彼の肉を貪っている。

 辺りは彼の血で撒き散らされ、その量から考えれば彼がもう生きていないのだという事は明らかだったが、今のクューニアにそれを判断できるほどの理性はなかった。


 時折獣は顔を上げ、歯の隙間から彼の臓物が顔を覗かしながら、荒々しい呼吸が生暖かい息と共に震わせている。


(なんで!? ビオス……っ!)


 目が合った。

 首が半分以上齧り取られ、僅かな肉片が彼の頭と体を繋ぎ止めている。

 そんな彼がこちらを凝視していた。

 まっすぐ、クューニアを、見据えている。


 何故助けてくれない。何でただ見ている。さっきまで愛し合っていたじゃないか。何故ただ眺めている。見せ物じゃない。助けろ。助けろ。見ているだけか。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。助けろ。


 彼の眼から訴えかけてくるその言葉にクューニアは恐怖する。


(無理よ!? そんな目で見られても、そんな事を言われても私にはどうする事も出来ない!! そうよ、ザング!! ザングはどこ!? 彼ならきっと助けてくれる!!)


 彼の姿を必死に探しすが、この薄暗さでは何も分からない。

 それでも探すクューニアのその必死さが仇となる。


「あっ!?」


 立てかけてあった農具の一角が、クューニアの服に引っかかり崩れてしまった。

 食事中の黒い獣はピタッと咀嚼を止め、ゆっくりと振り返りクューニアを見定めた。


「あ……あぁあぁぁ……」


 笑った。

 その獣は確かに笑った。


 より柔らかなご馳走が、何をせずともやって来たと。


 次の瞬間には弾かれたように獣は跳ね、一直線にクューニアへ襲いかかる。

 クューニアは恐怖に縛られ、逃げるどころか声すら挙げる事が出来ず、ただ震えていた。


「あぁああぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 獣の爪がクューニアに届く寸前、獣は顎下から跳ね上がり吹っ飛ぶ。


 何が起こったのかクューニアは分からかったが、その直後に手を引かれそのまま倉庫の外へ連れ出された。

 力強く手を引く誰かの姿に、クューニアは想い人の姿を重ねる。


 月明かりが彼を照らす。

 逆光で良くわからないけれど、彼の黒い髪は特徴的だった。


「…………イクス?」

「……………………僕だよ」


 手を引いていたのはザングだった。

 彼は一瞬苦い顔したが、直ぐにそれを引っ込めた。


 何故なら其処彼処で悲鳴が上がっていたから。


「逃げるよ!!」

「え、えぇ!!」


 もはや他人に構っている場合ではなかった。

 一刻も早く、この場から逃げ延びる。

 もうクューニアの頭にはその事しかなかった。

長くなり過ぎたので続きます。

同日連投。

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