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不撓不屈の勇者の従者  作者: くろきしま
第1章 村娘が勇者になったので、従者として一緒に旅に出るようです。
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第20話 魔の軍勢

レイラに新しい剣を選び、俺達は地上に戻ってきた。

見た目以上に軽い剣を振るうのが楽しいのか、レイラはブンブン振り回しながら俺達の後について来ていた。


「本人も気に入ったみたいだし、あそこまで軽いならレイラでも訓練次第で扱えそうだな」

「それは暗に今は扱えないと言っているのです?」


隣を歩いていたイースラが不思議そうな顔をする。


「お前にはアレが戦闘で役に立つように見えるか?」


握りこぶしに親指を立てた状態でソレを指さす。

その先には先程から楽しそうに剣を振るっているレイラの姿があるのだが……。


なんと云えばいいだろうか……全くもって様にならない。

力任せに剣を腕の力だけで振り回している。


とてもじゃないが実戦にはまだ早いだろう?


「すごーい! イクスイクス、これ凄いよこれ!!」


興奮しすぎて語彙力が低下していないか?

そんなレイラを見たイースラは口笛を吹いて無かった事にした。


「さて、地上に戻ってきた事だしなんか食いたいな。いい加減空腹で倒れそうだ」


確かに今日はまだ何も食べてなかった。

もう日が暮れかけている頃合いだ。


「結局ステラ達は何も選ばなかったけど良かったのか?」

「魔術師だからな。まぁナイフ程度なら持ってても邪魔にはならないが、本格的なものは役に立てられんよ」


そういって腰のナイフに手を当てた。

イースラも神官だからと特に興味を示す事はなかった。


そういうもんかね。


それはそうと、先程から黙って浮かない顔をしている奴がいる。


「……爺さん?」

「どうやら洒落にならん事態になったようじゃ」

「……?」


そこには意外な人物が現れた。


「えっ……イクス!?」

「サカモト?」


サカモトの姿がそこにはあった。

そういえば、この山に登っていたんだっけ。

見ると泥や擦り傷でボロボロになっていた。


「なんで君が……レイラ様も!? ……え?」


何やら戸惑っている様子のサカモトだったが、レイラを見た途端にその様子が変わった。

まじまじと神妙な面持ちでレイラを見ると次はボルカの爺さんを睨みつけた。


「ボルカさん……どういうこと?」

「どういう事も何も、今おぬしが見た通りじゃよ……それよりも、最悪の展開になったようじゃな」


爺さんが先を急かすと息を吐き、渋々とサカモトは語りだした。


「やっぱりといった感じだったよ。一番近い軍事施設からおよそ三百……恐らく今度は本気なんだろうね」

「ふむ、どうやら既に山に入っているようじゃ。ワシの感知にもそのぐらいの数が引っかかっておるの。じゃが、どうも動きが早すぎるようじゃ……馬……いや……これは」

「おい、一体何の話を……いや、それよりもだ。イースラ、サカモトを治療してやってくれ」

「はいなのです」

「ありがとう。でもそんな時間も惜しいんだ。ボルカさん気を付けて、どうやら向こう側には魔族がいるみたいだ」

「「魔族!?」」


ステラとイースラは驚くが、残念ながら俺もレイラもついていけなかった。

魔族って確か……ん? 魔族ってなんだ?

会った事がないので良く知らないな。


「ちっ、やけに速く動くと思ったわい……小僧ども解説してやる時間もない! 村の……いや、今すぐ下山して村を出るのじゃ!!」

「いきなり過ぎてついて――ぶぁっ!? ちょ、ちょっと!? おい!!」


ボルカの爺さんは竜の姿に戻ると人の話も聞かず飛び立ってしまった。


「イクス、時間が無いのは本当だよ。説明なら僕がしよう。移動しながらね、ついて来て!!」


なんだってんだ一体。

俺達は駆け出したサカモトに続くしかなかった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ここを通れば山の入口近くに出れるよ」


そういってサカモトに案内され場所は、玄関口の通路側にある行き止まりだった。

壁には極めて精巧な竜のレリーフと文字が刻まれている。

サカモトはその竜のレリーフに近づき、鱗の一枚を押し込んだ。

ガガガと何かが蠢く音と共に、壁が埋まり人の通れる幅の道が生まれた。


サカモトは近くに立てかけてある松明に火をつけ、俺逹は先へ進む。

サカモトがよくこの道を通っていたのだろう。

この暗く細長い道は若干カビ臭さが残る程度で済んでいた。


「サカモト……一体お前……」


どう言葉を続けるべきか迷う。

サカモトは俺の心情を察し、苦笑いを浮かべた。


「僕とボルカさんはお互い協力関係にあったんだ。僕にはちょっとした事情があってね……まぁそれは今は置いておくとして、ボルカさんには情報を提供していたんだよ。あ、そこぬかるんでるから気をつけて」

「情報、なのです?」

「そう。ボルカさんは山から離れられないからね。僕が目となり耳となり、国際……各国の情勢を調べてたんだ。ちなみに、この山の向こう側にはどこに繋がっているかは皆知ってる?」

「言わずもがな、帝国領だな……っ、まさか」


何を思い至ったのかステラは目を丸くする。

話の聞く限り、元々ちょっかいを掛けられていたのだろう。

どうやらその相手が帝国だったようだ。


「あ、エルフのお姉さんは気付いたみたいだね」

「馬鹿な!? この山を越えるというのか!! 立派な侵略ではないか! 奴らは神聖王国と事を構えるつもりか!?」

「その通り。今まではこの山が大量の物資の運搬するのに困難だったから、然程重要性を持っていなかったようなんだけど、それがどうやら解消してしまったみたいでね」

「それが魔族の話と繋がるのですね」

「だが本当に魔族と帝国が手を結んだというのか?」


信じられないという表情のステラだ。

魔族の知識がない俺にとっては、ついていけない部分があるものの、話が大きくなっていっている事だけは理解できた。


「きっかけはボルカさんにちょっかいを掛けてきた奴らが増えた事だった。僕はボルカさんに帝国の動向を探るよう頼まれたんだよ。そして今確かな事は、村を襲おうとしている奴らは大量の魔物なんだ。どういった経緯かは解らないけれど、帝国と魔族は手を結んでいるのは間違いないよ」

「そんな!? 皆のところに早く戻らないと!? イクス!!」

「レイラ、俺も同じだ。落ち着けだなんて言うつもりはない。だがその気持ちは村まで抑えておけ」

「イクス……」


村の皆が狙われていると分かり、逸るレイラの手首を握る。

鼓動が早鐘のように脈打っているのが分かった。


「ようやく事態を呑み込めたようだね、魔物は影狼。夜闇に紛れて音もなく襲ってくる怖い奴だよ」

「影狼が三百匹!? とても捌ききれる量じゃないのです!!」

「そうだね、だからボルカさんが今時間を稼いでくれている。もしかしたらやっつけてくれるかもしれないけれど、僕らが今するべき事は村の皆を避難させる事だよ」

「えぇ!! 皆無事でいて!」


狭い石壁の通路を抜け、外のオレンジ色の光を浴びる。


目の前に広がっていたのは、血塗れになって横たわる巨大な竜の姿だった。


直に世界は夜に包まれる。

いよいよ一章も佳境を迎えました。

夏が終わりましたが、一章は終わりそうにありません。


エグゼイドロスで執筆速度は上がりそうな気がします。


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