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不撓不屈の勇者の従者  作者: くろきしま
第1章 村娘が勇者になったので、従者として一緒に旅に出るようです。
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第15話 怒ってるんだよ。

「うむ、おぬし達を殺そうとした理由……の」

「私もイクスもお爺ちゃんを慕っていたのに!! 同じ村の家族だって……それなのに……あんまりだよ」


 レイラの悲痛な声は、最後にはかき消えそうに弱かった。


「それはワシが『竜であるが故に』と答えるのぉ」

「っ!?」


 我を忘れて身を乗り出すレイラを手で制す。


「それはどういう理屈だ? まさか魔物なら人を狩るのは当然とか言うつもりじゃねぇだろうな?」

「そもそも、竜は『魔物』とはあり方がちがうんじゃが?」


 ボルカの爺さんは人の姿をしながら、戦った時と同様の瞳を見せた。


「分かるように説明してくれ……俺もレイラも、割と一杯一杯だ」


 今は逸る気持ちをなんとか抑えている状態だ。

 最悪、ここで爺さんと相対する事もあり得るんだから……。


「安心せい小僧。ワシはもうおぬし達に危害は加えんよ」

「それを信じろと?」

「イクス、お前は思い違いをしている」

「ステラ……」

「ご老人……貴殿は『本物の竜』なのですね」


 ステラの問いにボルカは頷いて答えた。


「イクス、それにレイラ……肥翼竜を思い出してほしい」

「あのデブ鳥か……」

「……」


 レイラは答えなかった。

 ただじっとボルカの爺さんの事を見つめていた。


「……あれは正真正銘『魔物』だ。世間でドラゴンと呼ばれるのはこの『魔物の方』でもある。でも中には『本物』が存在している……それがこちらのご老人の正体ということだ」

「そもそも、さっきから『本物』と言っているけど、一体何をもって『本物』になるんだよ……」

「それはこの食いしん坊の方が詳しいぞ」


 お茶菓子をリスのように食べてたイースラがビックリする。

 ……良くこの雰囲気でモリモリ食べられるもんだな。


「…もごもご……ごくごく……んく、プフー。何をもって本物か……なのですか……それは簡単なのです」


 イースラは人差し指を立てて言った。


「旧時代の支配者……それが『本物』である竜という存在なのです」

「旧時代の支配者? ……神様だっていうのか?」

「違うのです。文字通りの意味で、なのです。今でこそ他種族で溢れているのですが、昔々、それこそこの世界に神々が降りていた頃の時代……人も、獣もいない、この世界を管理していたのが竜族なのです」


 人がいない?

 なんだそれ……それに獣がいないって……ありえないだろ。


「竜族は精霊に近い存在……らしいのです。食事を必要とせず、周囲のマナを取り込む事で存在していると云われているのです」

「嬢ちゃんはものしりじゃのぉ」

「ボクは男の子なのです!!」

「なん……じゃと!?」

「……それで、それが私達を襲うのとどうつながるの?」

「「「「――――――――――――――」」」」


 無情に緩みかけた雰囲気をレイラは切って捨てる。

 イースラは咳ばらいをして、説明を続ける事を強いられた。


「精霊は契約を望む者に『試練』を与えるのです。竜は精霊に近い……竜もまた、自分の領域にいる者に『試練』を与えるのです。そしてお爺さんは『もう危害は加えない』と仰いました。ボク達は竜の試練に合格したのですよ」

「私達が試練に肥翼竜を選んだのも、その逸話を元にしていたからだ」

「嬢ちゃん達がワシの言う事全部持っていくんじゃが……その通りじゃよ、おぬし等は見事に試練を乗り越えて見せた……小僧はワシを打ちのめし、お嬢ちゃん達は術を駆使し困難を排除し、レイラ嬢ちゃんは勇気を示した……十分すぎるじゃろ」

「……なんか釈然としない」


 レイラは納得しきれていないようだ。


 実は俺も納得出来ていない。

 爺さんの言う事は分かった。

 恐らく語った言葉に嘘はないんだろう。


 でも。


 なら、あの『殺意』は何だったというんだろうか。


 竜の姿で現れた時、俺達は絶望に支配された。

 明確なまでの殺意に中てられたからだ。


「ふむ、どうにも納得出来とらんようじゃの。これでもかなり甘い裁定だったと思うんじゃがな……おぬし等が今生きてここにいる事がその証明にはならんか?」


 そうなのかもしれない。

 確かに竜が本気で殺しにかかって生きていられるほど、俺達は強くない。


 理屈はある。

 でも感情がその理屈を拒絶している。

 結局は感情の問題なんだろう。


 レイラも同じ気持ちなのだろう。握りこんだ拳が震えていた。


「ま、確かにやり過ぎたかのぉ……だが、それも致し方ないと云うもんじゃ」

「……何よそれ」

「だって、夜中小僧がそこのお嬢ちゃんとイチャイチャ乳繰り合っていたんじゃからのぉ……うっかり殺したくなるのも仕方あるまい?」

「「「「――――――――――――――」」」」


 空気が凍った。

2017/07/31 一部加筆修正

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