表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不撓不屈の勇者の従者  作者: くろきしま
第1章 村娘が勇者になったので、従者として一緒に旅に出るようです。
17/67

第14話 竜の巣

 爺さんが巣と呼ぶ場所は、更に山を登り脇道の奥にそれはあった。


「ドデッカい神殿なのです!」

「一応ワシが住む場所だからの。うっかり元の姿に戻ってしまったら家無し老人になってしまうじゃろ?」


 巨大な洞窟に神殿がまるまる収まっている。


「元……という事はやはり――」

「そうじゃな、ワシは紛う方無き『竜』そのものじゃよ。まだここは玄関口じゃ、ほれさっさと中に入るぞ」


 巨大な柱の間を通り、中を進む。

 どこからか光を取り込んでいるようで、天井の隙間から斜光が辺りを照らし幻想的な空間を演出している。


「ほぅ、見事なものだ……厳かでありながら静謐さを感じる……崇高とはまさに此処のような様をいうのだな」

「北のカンタレフス様式ともトンペテンス様式とも違うのです。こんな見たことのない建築様式は……それにマナの様子からして、この明かりは魔法によるものでもないのですね。……あぁ、太陽光を計算して取り入れているのですか」

「……」


 二人とも目の前の光景に心を打たれているようだ。

 俺もだけどな。

 レイラだけは特に何も語らず、淡々としていた。


 イクスはその様子がどことなく違和感を感じつつも、疲れが出たのだろうと特に気に留めなかった。


「昔の友人達が別れ際に作ってくれたんじゃよ」


 そう語りながら、爺さんは何故か俺を見てくる。


「……どうかしたか?」

「いや、まさかワシの巣におぬし等を招くことになるとは夢にも思わんでのぉ」


 そう言って笑う爺さんの表情は、心の底から喜んでいるようだった。

 さっきまで命のやり取りをしていたのにな……。


 イクスはボルカの考えている事が理解出来ないでいた。

 先ほど命のやり取りとは語っていたが、実際には一方的な殺戮だ。

 そうならなかったのは、いくつもの幸運が重なっただけでしかないと、イクスは考えている。


「こんな巨大な神殿……竜殿? よくもまぁ今まで見つからなかったものだな」

「そうなのです。お爺さんがいるので、荒らされる事はないでしょうが……」

「当然じゃな、自分の家に鍵を掛けないわけないじゃろ? ちゃんと魔法で見つからないようにしとるんじゃよ。もうすぐ抜けるぞい」


 通路の抜けると強い光に包まれたような錯覚を起こした。

 眼が慣れてくると、そこはだだっ広い草むらがあった。

 恐らく、ここが山頂なのだろう。


 天辺の窪んだところといえば伝わるだろうか。


 広場の中央には巨大な樹木が一本立っている。


「ここが巣……なのか?」


 ステラの疑問はもっともだ。

 ドラゴンといえば洞窟の奥深くにいて、宝を守っているのが定石だったりする……。


「誰が好きこのんで暗く湿気の強いところに住まなきゃならんのじゃ?」


 もっともな理由であった。


「そりゃそうだ」

「それよりも、あの木の根元が居間じゃよ」


 根元まで行くと。

 白い丸テーブルが一つ置かれていた。


「ちょっと待っとれ、今湯を沸かしてくるわい。……おっとその前に椅子じゃな」


 そういうと爺さんは大樹の根に向かいながら人差し指を軽く弾く。

 それに反応するように、地中から樹の細い根が絡み合い、人数分の椅子が出来上がった。


「なんだ今の魔法は!?」

「……詠唱してなかったのです!!」

「魔法陣がなかった……魔術でも精霊術でもない……神聖術かっ!?」

「なわけないのです!! 指パッチンで神聖術とか不敬にもほどがあるのです!!」

「なら今のはなんだったんだ!?」

「ボクに言われても困るのです!!」


 二人は何やら驚いているが、そういったものに馴染みの無いレイラとイクスには、何がそんなに驚くことなのかいまいち理解できなかった。


 椅子に座ってみると、良い感じにしなり包み込んでくれる。

 二人の様子を見ると、これも魔法なんだろう。


「私達にとってはあなた達も十分不思議な事してるのにね」

「あぁ、俺達も魔法の一つも覚えたいもんだよ」

「……そうだな。これが終わったら少し覚えてみるか?」

「本当か!?」


 思わず身を乗り出す。


「いやぁ内心羨ましく思ってたんだよな! 良いよな手から火を出したり水出したり、昨日見せたビリビリの奴は本当に凄かったよな!! 絶対だぞ! 約束だからな!」

「な……なんか人が変わったようでちょっと……い、いやかなり怖いぞ」

「気持ち悪いのです」

「イクスは魔法にすごい憧れてるのよね」


 やれやれとレイラは言う。


「だって魔法だぞ? わけわかんない謎現象を自分で起こせるとか滾るだろ!?」


 魔法は凄い。

 本当に凄いのだ。


 夜空に煌く星を描き、獣を狩り夕飯を豪勢にする。


 まさに魔法は万能そのものだ。


 これまで見てきた魔法の数々を目の当たりにして、より一層自分でも扱ってみたいという気持ちが高まった。


「まぁ、どれほどの魔法を習得できるかはお前の努力次第なんだがな」

「流石に精霊術と魔力限界量はもって生まれた才によるのですが、何をしたいかによって契約する先がことなるのです。ボクの場合ですと、信仰とマナを『対価』に神々から力をお借りしている……といった感じなのですよ」


 なるほど、努力さえすればある程度の魔法を習得できるのか……これは益々楽しみになってきたな。


「あの……あのお爺さんは一体何者なのです?」

「そうだ! 二人とも顔見知りのようだったな……本当にアレは何なのだ」

「アレって……竜なんでしょ。本人が言っていたじゃない」

「ずっと木こりの爺さんだと思ってたんだけどな……まだ現実を受け止め切れてねぇけどさ。そういう事なんだろうよ」


 竜が爺さんの姿になったのか、爺さんが竜の姿になったのか……。

 分からない事だらけだ。


「はて、なにをどこから話せばよいのかのぉ」


 お茶を持参して戻ってきた爺さんは、困り果てたような顔をしていた。

 困り果てているのは俺達の方なんだがな。


「そんなの決まりきっているじゃない!!」


 そんな中、レイラが細い手をテーブルに叩きつけて言った。


「なんでイクスを……私達を殺そうとしたの?」


 俺は初めて、レイラの本気で怒った顔をみたのかもしれない。


 ただ、残念な事にこの時の俺自身は別の問題に直面していた。

 爺さんの血で俺の腕がパリッパリになってきているという事だった。


 一人いそいそと腕にお湯をかけて血を洗い流すイクスだった。

第EX2話も投稿しました。

ステラ、イースラ視点で描いた村の中での一幕です。

よろしければ、そちらもご覧ください。


http://ncode.syosetu.com/n4853ea/9/


2017/07/31 一部加筆修正

08/31 一部加筆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ