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【改訂版】Sランクパーティーに捨てられたポーターは実は最強の空間魔法使いだった。~虐げられた世界に復讐して『ざまぁ』するんだぁ!~  作者: ボルトコボルト


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第98話 崖っぷちの乙女、あるいは道を譲らぬBランク

 お面が外れないという前代未聞のトラブルに見舞われながらも、戦況が長引くにつれて、元Sランクとその仲間たちの圧倒的な実力差が明確になり始めていた。


 ミナト、アオイ、ヒマリの三人は、乱戦の中で確実に主導権を握り、『風月の戦乙女』とメイをじわじわと、だが確実に崖際へと追い詰めていく。


「がっはっは! どうしたぁ? もう後ろがねえぞ!」


 素手で身構えたミナトは、カノンたちの必死の剣撃を紙一重で鼻先で躱しながら、余裕の笑声を上げた。得物がなくとも、その肉体そのものが凶悪な凶器だ。


「ふん、わざわざ得意の魔法を使わなくたってね、あんたらみたいな格下に負けるほど私たちは落ちぶれちゃいないのよぉ!」


 アオイは呪文を唱えることすら放棄し、手にした頑丈な杖の石突きでマナミの腹部を鋭く突き放した。


「……この場所に居合わせた自身の不運を呪うのね」


 ヒマリもまた冷徹に呟き、ワカナが放った決死の剣撃を極小の動きで躱す。すれ違いざま、引き絞る前の強固な弓のフレームでワカナの顔面を容赦なく打ち付けた。


 気がつけば、ミナトを中心にアオイとヒマリが両脇に並び立ち、完璧な包囲網を形成していた。対する『風月の戦乙女』とメイは、背後にそびえる断崖絶壁へと完全に追い込まれている。あと一歩でも下がれば、真っ逆さまに落下する位置まで後退させられたミウが、血の気の引いた顔で足元を見下ろした。


「つ、拙いわ……これ以上下がれない……っ!」

 怯えるミウの瞳に、仮面の三人組の影が大きく映る。


「はっはっは! じゃあな、死んどけぇ!!」

 ミナトの合図とともに、三人は同時に地面を蹴って高く跳び上がった。容赦のない、トドメの一撃が上空から振り下ろされる。


 遮るもののない崖の上、逃げ場を失った『風月の戦乙女』とメイに、絶対絶命の瞬間が訪れていた。


  ◇◇


 ――それより少し前。


 俺とクロドが、動かなくなった土蜘蛛をかき分けるようにして砦の内部へと進んでいくと、前方から白銀の鎧を響かせたベーマタ騎士団長が息を切らせて現れた。彼の周囲では、命令を受けた騎士たちが、未だ困惑しながらも土蜘蛛の討伐と解体、残党の処理に追われている。


「ユウマ! やっぱり、君の力だったんだなぁ。いや、本当に助かったよ!」

 ベーマタ騎士団長は俺の姿を見るなり、安堵の表情を浮かべて駆け寄ってきた。


「ベーマタ騎士団長、ご無沙汰しています。ところで、この砦の中でミナトたちの姿を見かけませんでしたか?」


 挨拶もそこそこに本題を切り出す俺に、ベーマタ騎士団長は怪訝そうに眉をひそめた。


「ミナト!? あいつらもここにいるのか? まさか……あの悪名高い『黒の群盗』と何か関わりがあるというのか?」


 その反応を見る限り、どうやらベーマタ騎士団長はミナトたちを目撃していないらしい。となれば、あいつらは騎士団が本格的に突入してくる前に、別のルートから砦外へと逃げ出したと考えるのが自然だ。


「どうやら、こちらでは見かけていないようですね。それでは、俺は少し急ぎの用事がありますので、これで失礼します」


 俺はそう告げると、これ以上の問答を避けるように、ベーマタ騎士団長の横をすり抜けて砦のさらに奥へと足を進めた。


「おい、ちょっと待てユウマ! 事情を説明してくれ!」

 背中から困惑した騎士団長の声が追いかけてくるが、俺は振り返ることなく答える。


「一刻を争うので、お断りします」

 そのまま通路を進もうとした、その時だった。


「おい! 待てや、お前何者だぁ!」

 砦の奥から威圧的な足音とともに現れた大柄な男が、巨大な斧を肩に担ぎ、俺たちの進路を塞ぐように立ち塞がった。男の後ろには、それぞれ一目で修羅場を潜り抜けてきた猛者だと分かる面々が、怪訝な顔でこちらを睨みつけている。


「Bランク冒険者のユウマです」

 俺は歩みを止めることなく、ごく淡々と名乗り、そのまま男の横を通り過ぎようとした。


「あぁん? 俺はAランク冒険者パーティー『豪勇の斧』のリーダー、フドウだ! お前にちっとばかり聞きたいことがある。ちょっと止まれぇ!」


 フドウは不愉快そうに顔を歪め、俺の前に回り込んで鋭い眼光で睨みつけてきた。だが、俺とクロドはその威圧を完全に無視し、無言のまま彼の真横をすり抜けて歩き続ける。


「おい! Bランク冒険者風情が、俺たちのリーダーを無視するとはいい度胸じゃねえか!」

 フドウの背後にいた一人の大男が色めき立ち、俺の腕を強引に掴もうと手を伸ばしてきた。


 面倒なので、触れられる寸前でスキルを発動し、封印した。男は俺の肌に指先が届く一歩手前の、実におかしな前傾姿勢のままでピキリと凝固する。


「テツワン!? どうしたんだお前、いきなり固まって……おい、お前! テツワンに何をしやがったぁ!」


 すぐ横にいた別の男が激昂し、今度は俺の背中の襟首を引っ掴もうと、怒涛の勢いで飛びかかってきた。だから、その男もまとめて封印した。空中で手を広げた形のまま、重力を無視してピタリと停止する。


「な、なんだこれは……!? テツワンとカイリキが、なぜ動かない!? お前、一体何者だ!」

 突然の異常事態に、フドウたちの間に動揺と怒号が広がる。


 しかし、俺は一刻も早くミナトたちを見つけるため、意識の大部分を『空間把握』の拡張に割き、砦の外へと索敵範囲を広げていた。そのため、フドウたちが後ろで色々と怒鳴り散らしている言葉は、ほとんど耳に入っていなかった。


 結局、あまりにもしつこく進路を妨害しようとしてくるため、最終的に『豪勇の斧』の探索者であるタンチという男を除く4人を、俺は歩きながら次々と封印の術中にハメて置き去りにしたのだった。

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