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【改訂版】Sランクパーティーに捨てられたポーターは実は最強の空間魔法使いだった。~虐げられた世界に復讐して『ざまぁ』するんだぁ!~  作者: ボルトコボルト


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第97話 仮面の呪縛、あるいは元Sランクの乱闘劇

 「あっはっはっは! お前らが俺たちを捕まえるって? 片腹痛いわ! 足止めにすらならんだろうが!」


 不気味な黒い鬼の面をつけたミナトが、腹を抱えて大笑いしながら『風月の戦乙女』を容赦なく煽り立てる。


「……っ、たったの3人程度で、私たちを倒せると思っているの!?」


 『風月の戦乙女』のリーダーであるカノンは、ミナトから放たれるただならぬ威圧感に内心びびりながらも、必死に声を張り上げて剣を身構えた。


「バッカじゃないのぉ! あんた達みたいな雑魚、私たちにとっては屁でもないわよ! あっはっは!」


 黒猫の面をつけ、ぶかぶかの黒いローブに身を包んだアオイが、勝ち誇ったように豪奢な杖を天へと掲げた。その隣では、黒狐の面をつけたヒマリが、一切の無言で弓を引き絞り、冷徹な視線を向けている。


 アオイが不敵に笑い、杖を横一閃に振るった。


「燃え上がりなさーい!」

 刹那、『風月の戦乙女』の足元の地面から、爆炎とともに巨大な炎の壁が立ち上がった。


「きゃああああああっ!?」

 突然の猛火に、カノン達、そして後ろに控えていたメイは、悲鳴を上げて左右へと飛び退き、無様に地面を転がった。


「はい、お片付けー!」

 アオイが先ほどとは逆方向へ杖を振ると、視界を遮っていた炎の壁が瞬時に掻き消える。


 これこそが彼女らの必勝パターン。炎に惑わされ、体勢を崩した敵をヒマリの狙撃で確実に仕留める、完璧な連携――のはずだった。


 しかし、矢を放つまさにその瞬間、ヒマリの鋭い視線が、煤まみれになって転がっている一人の女性を捉えた。


「……メイ?」

 ヒマリの動きがピタリと止まる。


「え? メイだって!? ――本当だ! おい、お前そんなところで何やってんだ!?」

 ミナトも面の下の目を丸くし、叫んだ。


 思わぬ知り合いの登場により、ヒマリの追撃の手が止まった。炎の壁で完全に無防備になっていた『風月の戦乙女』達は、図らずもメイがいたお陰で九死に一生を得た形になった。


「な、何で……何で黒の群盗がメイの名前を知っているのよぉ!? メイ、まさかあいつらと知り合いなの!?」

 カノンは泥だらけの服で立ち上がりながら、困惑してメイに尋ねる。


「と、盗賊に知り合いなんていないわよ!」

 メイは身体を震わせながら必死に否定した。


 しかし、その内心は(誰よ一体……!? なんで私の名前を……)と、激しい動揺でパニックになっていた。ミナト達を穴が開くほど注視する。


「ふっ、ちょっと驚いたが……まあ関係ねぇな! まとめて皆殺しだぁ!」

 ミナトは思考を切り替えると、抜いていた剣を大きく振り上げ、一気にカノンへと斬りかかった。


「しまっ――」

 カノンは本能的な恐怖に突き動かされ、ミナトの剣撃を必死に躱した。余裕のある回避などではない。地を這うように無様に体勢を崩し、文字通り間一髪で死線を潜り抜けたのだ。それほどまでに、ミナトの踏み込みと剣速は圧倒的だった。


 ドガッ!!

「う゛っ……!?」


 躱された剣の勢いのまま、ミナトの強烈な前蹴りがカノンの腹部を捉えた。カノンは一撃で遥か後方へと蹴り飛ばされる。


「あっはっは! 弱っちいなぁ、本当に冒険者か!?」


 ミナトはあざ笑いながら、今度は近くにいたカエデに向かって無造作に剣を振るった。カエデは咄嗟に自身の剣でそれを受け止めたが、凄まじい筋力差に耐えきれず、武器ごと派手に弾き飛ばされた。


「ちょっとぉー! ミナト邪魔よぉ! あんたがちょこまか動き回るから、こっちの魔法の的が絞れないじゃないの!」


 後方で杖を振り上げていたアオイが、味方の乱戦ぶりに苛立ち、思わず地声で声を荒らげた。


 その瞬間、メイの脳裏に電撃が走る。聞き覚えのありすぎるその声、その名前。


「……ミナト!? あなた、もしかしてミナトなのぉ!?」

 メイは信じられないといった様子で大声を張り上げた。


「おう、そうだよ! 俺が本物のミナトだぁ!」

 身元が割れたなら格好をつける必要もない。ミナトは鬱陶しい黒鬼の面を外そうと、両手を顔にかけた。


 ガシッ……。


「……あ? アオイ、これ外れねぇぞ?」


「はぁ? 馬鹿じゃないの? その裏の紐を引っ張ればすぐに……って、え? は、外れない……。ちょっと、ナニコレ!?」


 アオイも自分の黒猫の面を外そうと指をかけるが、まるで肌に直接張り付いているかのように、ビクともしない。


「え? だってこれ、ただのお面だよね……? うそ、何よこれぇえええええ! 引っ張ると顔の皮が痛いぃいいい!」


 ヒマリも黒狐の面を両手で掴んでパニックに陥っている。呪いのアイテムか何かのように、三人の仮面は完全に固定されてしまっていた。


「スキあり、今よ!」

 敵が内輪で混乱している隙を、『風月の戦乙女』が見逃すはずもなかった。


「はああああっ!」

 マナミが鋭い突きでアオイを強襲し、同時にワカナがヒマリへと肉薄する。


「いやあああっ! 来ないでよ!」

「くっ……間合いが近すぎる……!」


 完全な後衛職であるアオイとヒマリは、仮面のパニックも相まって、前衛であるマナミとワカナとの泥臭い接近戦に大苦戦を強いられることになった。


 一方、リーダーの危機を救うべく、カノンが執念でミナトの隙を突いた。


 ガキィィン!

「あ、しまっ――」


 仮面に気を取られていたミナトの手元から、カノンの渾身の一撃によって剣が叩き落とされた。


「一気に畳みかけるわよ!」「おう!」


 武器を失ったミナトに対し、復活したカノン、ミウ、そしてメイの3人が一斉に飛びかかった。もはや綺麗な剣術の戦いではない。掴み合い、殴り合いの、文字通り大乱闘である。


 しかし、そこは腐っても元Sランク冒険者のミナト。武器を失い、3人に囲まれてなお、その身体能力は常軌を逸していた。


 カノンの剣を紙一重で躱し、ミウの突進を受け流し、メイの死角から鋭い突きやローキックを繰り出して3人を翻弄する。


「くっそぉお! お前たち、いい加減にしやがれぇ! 人の顔を見てから攻撃しろ!」


 お面が外れず、元Sランクの威厳ゼロの泥仕合に強制参加させられたミナトは、山中に怒号を虚しく響かせるのだった。

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