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【改訂版】Sランクパーティーに捨てられたポーターは実は最強の空間魔法使いだった。~虐げられた世界に復讐して『ざまぁ』するんだぁ!~  作者: ボルトコボルト


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第91話 鉄壁の籠城、あるいは謎を呼ぶ防衛陣

 北の山の冷涼な風が吹き抜ける平原。その先にそびえ立つ頑強な石造りの砦を、都市の精鋭たちが遠巻きに包囲していた。


 白銀の鎧を連ねる騎士団と、殺気を孕んだ武器を構える冒険者たち。その最前線で、一人の騎士が馬を走らせ、騎士団長ベーマタの元へと駆け寄った。


「ベーマタ様! 物見からの報告です。どうやら盗賊どもは、打って出てくる気配を見せず、完全に『籠城』を選んだ模様です!」


「報告感謝する。……チッ、籠城だと? 厄介な真似を」

 ベーマタは苦々しく舌打ちをし、険しい表情で砦を睨み据えた。


「急遽編成された討伐隊だ。城門を叩き割るような本格的な攻城兵器なんて、こちらには一台も持って来てねえぞ」

 その言葉に、隣に控えていた『豪勇の斧』のリーダー、フドウが巨大な戦斧を肩に担ぎ直し、太い眉をひそめて呟く。


「しかし、奴らが籠城する意味がさっぱり分かんねぇな。そもそも籠城ってなぁ、外部からの強力な応援があって初めて意味を成す戦術だろうが。孤立無援の盗賊が閉じこもったところで、ただの干殺しだぜ?」


「ただの時間稼ぎか? それとも……本当に、奴らには俺たちの知らない『応援』のあてがいるのか?」


 『黒紅の無頼』のリーダーであるショウゴも、腕を組んだまま訝しげに視線を鋭くした。ただの烏合の衆ではない不気味さが、砦の静寂からひしひしと伝わってくる。


「どちらにせよ、ここで議論を重ねても始まらん。まずは周囲を完全に包囲だ! ネズミ一匹たりとも、この場から逃がすなよ!」


 ベーマタが鋭く手を振り、周囲の騎士たちに矢継ぎ早に指示を下した。


「はっ!」

 騎士たちは一斉に揃って敬礼を行うと、それぞれの持ち場へと、一糸乱れぬ動きで四方に散って走り出した。


「よし、俺たちは正面の目を盗んで、どこか内部へ侵入出来るところが無いか、裏手に回って探って来よう」

 ショウゴが手下のメンバーに目配せをし、静かに身を隠すように動き出す。


「おう、頼んだぜ。――なら俺は、景気付けに一当てしてくるぜ!」

 フドウは不敵に笑うと、背後で待機していた冒険者たちの集団に向かって、腹の底から響く大声を張り上げた。


「おい、後ろの野郎共! 弓使いと魔法使いは、俺の後方からしっかり援護を頼むぜぃ!」


 『豪勇の斧』のメンバーたちが先陣を切り、ずしりずしりと重い足取りで砦に向かって前進を開始する。その後ろを、弓使いと魔法使いの冒険者たちが油断なく距離を保ちながらついて行った。


  ◇◇


 砦の重厚な門の正面。そこから一定の距離を取った位置で、フドウたちはぴたりと立ち止まった。


 見上げるほど高い門の上――そこには、不気味な黒いお面を着けた男が、威風堂々と立ち塞がっていた。元騎士団副団長、トカツモである。


「弓隊、構えぇーーッ!」

 トカツモのよく通る号令が響くと同時に、砦の狭間から十数人もの盗賊の弓使いが姿を現した。彼らは一斉に弓を引き絞り、鋭い矢先をフドウたちへと向ける。


「ふっ、盗賊風情が小癪な真似を! 行くぜぃ!」

 フドウは大笑いしながら、地面を蹴って一直線に走り出した。大柄な体躯からは想像もつかない俊敏さで距離を詰めていく。


「射てぇ!」

 トカツモの非情な号令が下された。刹那、空を覆うほどの矢が、まるで黒い雨のようにフドウの頭上へと降り注ぐ。


 ヒュン! ヒュン! ヒュン! ヒュン!


 フドウは走る速度を一切落とさず、手にした頑強な盾を矢の軌道に合わせて的確に構えた。


 キン! キン! キン! キン!

 激しい金属音が連続して響き、無数の矢がフドウの盾に弾かれて火花を散らしながら地面へと跳ねていく。かすり傷一つ負うことなく、フドウはそのまま猛然と走り続ける。


「ちっ、ただの矢じゃ、あの盾は破れねえか。……魔法使いども、準備はいいかぁ!」


 門の上のトカツモは、すぐに弓から魔法への切り替えを判断し、背後に控える盗賊の魔法使い達に鋭い目を向けた。


 黒いお面を着けた魔法使い達は、無言で冷酷に頷き、すでにその手に膨大な魔力を練り上げていた。


「レディ……、ファイヤー!!」

 トカツモの指先が、突進してくるフドウを正確に指し示す。


 その瞬間、猛烈な熱風とともに、数多くの巨大なファイヤーボールが、一斉にフドウへと殺到した。


「くっ、――こいつはヤベぇか!」


 正面から迫る圧倒的な炎の嵐を前に、フドウは限界まで引き付けて立ち止まった。直撃を避けるため、身体を捻りながら斜め後ろへと猛然と飛び退く。それと同時に、渾身の力を込めて手にした戦斧を門の上へと投げ放った。


 ドズドズドガァン!!!


 フドウが地面を激しく転がる中、彼のわずか斜め前方に、複数の炎の玉が次々と着弾して大爆発を起こした。爆炎と土煙が周囲を包み込む。


「あちちっ!」

 衣服に引火した火を払いながら、フドウは片足立ちの姿勢で素早く起き上がり、煤煙の向こうの砦の門を見詰めた。


 一方、フドウの放った戦斧は、凄まじい勢いで回転しながら、門の上のトカツモの首めがけてまっすぐに飛んでいく。


「うぉっとぉ!」

 カツン!!


 門の上で、トカツモは寸前に肉厚の盾を構え、絶妙な角度でフドウの戦斧を受け流した。激しい衝撃音が響いたが、トカツモの身体は微動だにしない。


 弾かれたフドウの戦斧は、盾に当たった後もその驚異的な回転と速度を維持したまま、まるで意思を持っているかのように軌道を変え、再びフドウの元へと戻っていった。


  ◇◇


「だから言ったろ、単独で突っ込むのは無理だって」


 フドウが戻ってきた戦斧の柄をガシッと掴んだ時、背後から『豪勇の斧』のドワーフ、テツワンが声をかけてきた。いつの間にか、フドウのすぐ後ろまで来ていたのだ。


「……ああ。ただの、ドロップアウトした盗賊風情じゃねえな。連中、妙に統率が取れてやがる」


 フドウは戻ってきた斧の重みを確かめながら、未だ爆炎の余韻が残る門を忌々しげに睨みつけた。そして、これ以上の単独行動は無意味と悟り、ベーマタ騎士団長のいる本陣に向かって、ゆっくりと歩き出す。


「弓使いや魔法使いの数も、盗賊団の規模にしちゃ多すぎる。しかも、あの連携の速さは完全に訓練された組織のそれだ」


「怪しいなぁ。手慣れた防衛陣の敷き方と言い、あれは盗賊じゃなくて、どこか他国の兵士っぽいな」


 同じく『豪勇の斧』のメンバーであるカイリキとコンゴーも、炎の魔法の射程圏内から素早く退避し、フドウとテツワンの後を追うように歩調を合わせた。


 ただの討伐戦だと思われていた戦いは、砦に潜む者たちの異常な戦闘組織力を前に、にわかに国際的な陰謀の影さえ孕み始めていた。

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