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【改訂版】Sランクパーティーに捨てられたポーターは実は最強の空間魔法使いだった。~虐げられた世界に復讐して『ざまぁ』するんだぁ!~  作者: ボルトコボルト


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第7話 空間把握のスキルを取得した

俺は半日ほど、ブラックドッグのクロドに付き合ってもらい、この場所でレベル上げに勤しむことにした。


討伐を始める前に、ふと思いついたことがある。

前世で読み漁ったゲームや異世界転生小説の定番――(ステータス表示)。

ダメ元で頭の中でそう唱えてみると、驚いたことに、視界の右上に鮮明なステータスウィンドウが展開された。


名前:ユウマ

種族:人族(転生者)

年齢:18歳

性別:男

レベル:2

スキル: 空間魔法 LV1

 └ 空間収納(微)


「『空間収納(微)』……この(微)の詳細って何だ?」

指先でその項目をタップするイメージを浮かべると、さらに詳細な仕様が展開される。


【空間収納(微)】

・1立方メートルの亜空間を形成。自身が直接接触した物質を収納できる。

・収納した物質を任意の場所に展開可能。

・亜空間内部の時間は完全に停止する。


容量はわずか1立方メートル。これまでの俺は、この極小の空間をやりくりしてポーターをしていたわけだ。


確認を終えた俺は、不気味に蠢くスライムの群れがいる水辺へと足を進めた。

ピョコピョコと陸地へ這い上がってくる半透明の体に、思い切って手を突き入れる。粘体の中心にある魔石に指先が触れた瞬間――『収納』。

脳内に小気味よい討伐ログと、経験値取得のアナウンスが連続して流れ始める。


それからしばらくの間、俺は無心でスライムを狩り続けた。

レベルは面白いように跳ね上がっていく。そしてレベルが5に達したその時、頭の中に一段と高い電子音が響いた。


《空間魔法のレベルが2に上昇しました》

《スキルが『空間収納(微)』から『空間収納(小)』へと進化します》


内容を確認すると、俺は思わず声を上げた。


【空間収納(小)】

・8立方メートルの亜空間を形成。自身から【半径2メートル以内】にある物質を任意で収納できる。

・収納した物質を展開可能。亜空間内の時間は停止する。


「素晴らしいな……! 容量が大幅に増えた上に、非接触での収納が可能になった!」


ここからのレベリングは、まさに『加速』の一途をたどった。もう、わざわざ汚い粘体に手を突っ込む必要はない。水の中を堂々と歩き、俺の半径2メートル以内にスライムが侵入した瞬間、その核である魔石だけを直接『亜空間』へとパージする。


水面を歩くだけで、周囲のスライムが次々と水へと還っていく光景は、まさに圧巻だった。


レベルが10に達した時、空間魔法はレベル3へと昇格し、新たな派生スキルが発現した。


スキル: 空間魔法 LV3 

├ 空間収納(小)

└ 空間把握(小) New!


【空間把握(小)】

・現在滞在しているエリアの空間構造、および動体を三次元的に把握できる。


(空間把握――展開)

脳内で念じた瞬間、世界の解像度が跳ね上がった。

この階層の複雑な構造が、まるで精巧な3Dマップのように脳内へと直接ダウンロードされる。奪われた地図など、今や塵ほどの価値もない。

マップ上には、お座りしているクロドが『青い点』、周囲のモンスターが『赤い点』としてハッキリ表示されている。完璧な索敵レーダーだ。


その後、スライムから得られる経験値が目減りしてきたため、俺は一度レベル上げを中断することにした。

ぐぅ、と腹が鳴る。食糧はすべてあの4人に奪われたため、今は耐えるしかない。感覚的に、地上はもう夜だろうか。


ガリガリ、ボリボリ。


見れば、クロドが器用にスライムを捕食し、その魔石を骨煎餅のように小気味よく噛み砕いていた。……お前はたくましくて本当に羨ましいよ。


 ◇


一方、ユウマを奈落の底へ突き落とした『焔の剣』の面々は――。


ダンジョン内の、野営が許可された安全な小部屋へと逃げ込んでいた。


「ハァ……ハァ……。そろそろ夕飯にしようぜ」

リーダーのミナトが、疲労困憊といった様子で武器を床に置く。


「そうね。ユウマ! さっさと食事の準備をしなさい――あ」

いつもの癖で傲慢に振り返り、虚空に向かって命令を飛ばしかけたヒマリが、マぬけに口を咎めた。

そうだ、あの便利な都合のいい荷物持ちは、自分たちがさっき笑顔でクビにしたんだった。


「ちょっと、私は料理なんて絶対に出来ないわよ!」

回復士のユイナが、お高くとまった態度で即座に拒絶する。


「私も無理。魔法の呪文は覚えられるけど、料理のレシピなんて知らないわ」

火魔法使いのアオイも、面倒くさそうにそっぽを向いた。


「……俺も肉の焼き方なんて知らん。おい、どうするんだよ」

ミナトが最悪な空気に冷や汗を流す。


「……チッ、分かったわよ! 肉を焼くだけなら、私の火魔法でパパッとやってあげるわ! その代わり、出来栄えに文句は言わないでよね!?」

アオイがヒステリックに声を尖らせる。


「おお、さすがアオイ! 助かるよ、文句なんて言うわけないだろ!」ミナトは救われたような顔をして、手に入れたばかりのアイテムバッグから巨大なオーク肉の塊を取り出し、アオイへと手渡した。


「いくわよ! ――ファイアーボール!」

アオイは豪快に呪文を唱え、オーク肉に向けて容赦のない業火を叩きつけた。


ズドォオオオン!!


「あ、キャッ!? 焼きすぎた!」


部屋中に充満する、肉が消し炭になる強烈な焦げ臭さと黒煙。

アオイは激しく咳き込みながら、表面が完全に炭化して真っ黒になった「謎の肉塊」をナイフで強引に切り分け、皆の皿へと乱暴に分配した。


「……ねえ、これ何? 表面は炭なのに、中身は完全に生なんだけど。血が滴ってるわよ」

ユイナが、中心部が不気味に生々しい肉片をフォークで突きながら不快そうに顔をしかめる。


「ちょっとアオイ、焦げの味しかしないわよ!? 塩コショウとかハーブの味付けは!?」

ヒマリも露骨に眉を顰めて文句を言った。


「うるさいわねぇえ!! 文句があるならアンタたちが自分でやりなさいよぉおお!!」

逆ギレしたアオイの絶叫が小部屋に木霊する。3人の女子の間に、最悪なギスギス感が漂った。


「……ま、まぁ、食べられるだけ有難いと思おうぜ……」

ミナトは顔を引きつらせながら、無言でその不味すぎる「半生の炭化肉」を口へと押し込んだ。


彼らは知らなかった。

野生のオーク肉には強烈な臭みと毒素、そして無数の寄生虫が含まれており、ユウマが裏で時間をかけて丁寧な「血抜き」と「スパイスによる下処理」を施していたからこそ、美味しく食べられていたという事実に。


――そして数時間後。

ダンジョンの静かな夜の闇に、4人の凄絶な悲鳴が響き渡った。


「痛たたたっ!? お腹が、お腹が引き裂かれるぅうう!」

「う、嘘でしょ!? ちょっと、お腹に力が入らない……っ!」

ユウマが仕込んでいた完璧な下処理(魔物の毒素や寄生虫の除去)を一切せず、強火で表面だけを焦がした半生のオーク肉を食べた罰だった。


だが、ここは魔物が徘徊するダンジョンの真っ只中。気の利いたトイレなんて施設はあるはずもない。


「ちょっとミナト! さっきあいつの亜空間から奪った荷物の中に、簡易トイレセットとか目隠しテントがあったでしょ!? 早く出しなさいよ!!」

「わ、分かってるよ! 待て、アイテムバッグの中の……どこだっけな!?」


ユウマから身ぐるみを剥いで強奪した荷物は、すべてこのアイテムバッグの中に詰め込まれている。

だが、ずぼらなミナトは荷物の整理整頓など一切していない。膨大な物資がごちゃまぜに放り込まれたバッグの中から、今すぐ必要な「トイレ用品」がどこにあるのか、全く見つけられないのだ。


「早くしてよミナト! 私、もう本当に限界……っ!」

「クソっ、なんでこんなに色々入ってんだよ! おい、これか!? ――あ、違った、これ予備の鍋だ!」

「そんなの今いらないわよぉおおお!!」


結局、目的の道具が見つかる前に波波は押し寄せ――。

その晩、高貴なるSランクパーティーの4人は、真っ暗な小部屋の隅で、お互いに背を向け合いながら、涙目で夜通し激しい下痢と腹痛に悶絶し続けるハメになったのだった――。

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