表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改訂版】Sランクパーティーに捨てられたポーターは実は最強の空間魔法使いだった。~虐げられた世界に復讐して『ざまぁ』するんだぁ!~  作者: ボルトコボルト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/95

第53話 全裸の騎士団長と、廊下に響くメイドたちの悲鳴

 領主リミツナ伯爵の館を出ようと、静まり返った廊下をのんびりと歩いていた時のことだ。


 行く手を完全に遮るようにして立っていた白銀の騎士が、こちらを威圧するように一歩、鋭い足音を響かせて踏み込んできた。


「おい。お前が冒険者のユウマだな?」


 その声には、隠そうともしない不快感と傲慢さがたっぷりと含まれていた。


「はい。そうですけど……何かご用ですか?」


 俺が極めて淡々と問い返すと、男は待ってましたとばかりに胸の鎧を拳で叩いた。


「俺は、この地を護る高潔なる騎士団長のサキヨマだ! いいか、冒険者如きが、そう簡単に伯爵様の騎士に召し抱えられると思うなよ!」


「……はあ。何の話でしょうか?」


 急に現れて何を怒っているのだろうか。俺が本気で首を傾げると、サキヨマはぐぬぬと顔をしかめ、さらに声を荒らげた。


「お前が伯爵様に気に入られて騎士として召し抱えられようがな、冒険者上がりの身分の低い騎士など、この俺が絶対に認めん、許さんと言う事だ!」


 どうやら、伯爵様が俺をスカウトしようとしていた話をどこからか聞きつけ、勝手に嫉妬して先回りをしていたらしい。


「ああ、その件でしたら、配下になるお話はお断りしましたよ」


「ふん、当然だ! 伯爵様の直々の声掛けがあったとはいえ、我ら騎士は連携こそが重要なのだ。群れるだけの大雑把な冒険者が、一糸乱れぬ騎士の連携に付いて来られるはずが……ん? ……断った、だと?」


 自慢げに語りかけていたサキヨマの言葉が、途中でピタリと止まった。完全に拍子抜けしたような、間抜けな顔を見せている。


「はい。仰る通り、お堅い組織の連携が求められる騎士なんて、俺のような気ままな冒険者には到底勤まりませんからね。ですから、ちゃんとお断りしました」


 もっとも、伯爵様には「騎士にする」とは明確に言われておらず、「俺のところで働かないか」というお誘いだった気がする。まあ、どちらにせよ断ったことには変わりない。


「こ、断ったのかぁ!?」

「はい」


「貴様……! 騎士と言えば、誰もが憧れ、民に敬われる最高峰の職業なのだぞ! それを、一介の冒険者が突っぱねるとは……!」


 (この人、一体何が言いたいんだろう……。断ったら断ったで怒るのかよ)


「私にはとても勤まりませんので、身の丈に合わないとお伝えしたまでですが」


「貴様ぁ! どこまでもその態度……! もしや、騎士という存在そのものを馬鹿にしているのかぁ!」


「馬鹿になんてしてませんよ。本当に」


「ぐぬぬ、その白々しい態度、言葉の端々がすでに我らを馬鹿にしていると言っているのだぁ!」


 はぁ、なるほど。あれか。


 彼がどれだけ大声を出し、威圧的な態度をとっても、俺が全くビビらずに淡々と対応しているのが気に入らないのだろう。


 こちらはつい昨日まで、命懸けで『魔獣の窟』の凶悪な最深部のモンスターたちと戦ってきたのだ。かつての奴隷時代だったら、これほど偉そうな騎士様の前では平へいこらと平伏して震えていただろう。だが、今の俺からすれば、目の前で怒鳴り散らしているおっさんなんて、恐怖の対象にすらならないのだ。


「もし、俺の態度がお気に召さないのであれば、そこは謝罪致します。決して馬鹿にしているつもりは無いですし、街を護る騎士の方々のことは、一人の市民として尊敬しておりますよ」


「くっ、どこまでも小賢しい……! その白々しい態度、へし折ってくれるわ! ちょっと外へ顔を貸せ! 我が騎士団の実力、その身に叩き込んでやる!」


「訓練所で模擬戦でもする気ですか? お断りします。私は見ての通りただの貧弱な魔術師のようなものですから、剣士ではありませんし、剣は使えません。もちろん、剣以外の武器も一切使えませんよ」


「はぁ!? お前、あの『魔獣の窟』の攻略者だろうが! ならば魔法か? 魔法を使うなら、こちらも魔法での果し合いでも構わん! あるいはテイマーだと言うなら、そこにいる不気味な黒犬を相手に戦ってやっても良いんだぞ!」


 一応、俺がダンジョンを攻略したという事実だけは知っているらしい。


 う~ん、そう言われても困るのだ。俺は一般的な四属性の魔法なんて一つも使えないし、そもそもテイマーでも無い。もし、クロドとこのおっさんが本気で戦うなんてことになったら、一瞬で食い殺されちゃうに決まっている。


 それに、俺の切り札である空間魔法や亜空間のスキルも、こんなところで大勢の人の目に触れる形であまり見せたくないんだよなぁ。


 どうしたものかと俺が黙り込んでいると、焦れたサキヨマがさらに怒鳴り散らした。


「おい! サッサと答えんか、この臆病者め!」


「いや、ですから……。俺はテイマーでも無いですし、四属性魔法も使え無いんですよねぇ。それに、冒険者は自分の手の内であるスキルを秘密にしているものです。そう簡単に答えられるわけがないでしょう?」


「な、なにぃ……っ! ならば貴様、どうやってあの難攻不落のダンジョンを攻略したと言うのだぁ!?」


 (このおっさん、本当に俺の話を聞いてるのかな……?)


 スキルは秘密だから答えられないって、今言ったばかりじゃないか。


 ああ、本当に面倒臭い。こんなところで時間を無駄にしている暇はないのだ。


「あぁ、もう……。いちいち外に行くのも面倒ですので、ここで戦いましょう。俺は、この後どうしてもやらなきゃいけない『仕事』があるんです。……分かりましたよ、俺のスキルの、ほんの一端をお見せします。その腰の剣で、今直ぐここから攻撃してきても良いですよ!」


 この後、俺を拉致しようとした闇組織『蜘蛛の牙』の拠点を、帰りがてら完膚なきまでに懲らしめに行かなきゃいけないのだ。こんなところで油を売っている暇は一秒だって無い。


「貴様ぁ、ついに化けの皮が剥がれたなぁ! 儂を、いや騎士団をここまで馬鹿にしおって……! 騎士爵を持つこの儂に対する不敬、断じて許さん!」


 サキヨマの堪忍袋の緒が切れた。


 キン、と鋭い金属音を響かせて抜剣すると、彼は容赦なく、渾身の一撃をこちらに向けて繰り出して来た。空気を切り裂くその剛剣は、冗談抜きで俺の首を綺麗に斬り飛ばそうとする軌道を描いている。


 もし、これが防御スキルのない通常の冒険者だったら、その場で即死していただろう。このおっさん、嫉妬とプライドに狂って、本気で俺を殺しにきている。


「ふぬっ!」


 サキヨマの咆哮。だが、俺は一歩も動かない。


 (『亜空間障壁』、展開)


 ガキン――ッ!!!


 俺の肉体に刃が届く直前、周囲に目に見えない亜空間の断絶を展開し、サキヨマの剣を完全に弾き返した。


「なにぃ……!? な、何で当たらん!? 手応えが無いぞ!」


 ガキン!


「ぬおっ!」 ガキン!

「とうっ!」 ガキン!

「くそっ、これならどうだ!」 ガキン!

「ふぬっ!」 ガキン!


 サキヨマは狂ったように何度も剣を振り下ろすが、火花が散るような金属音とともに、すべて俺の手前数センチの空間で無慈悲に弾かれていく。俺は髪一筋すら揺れていない。


「……ねえ、もう良いですかぁ?」


「はぁ……はぁ……。貴様ぁ! 守り、守りだけは一丁前に固いようだな……! くそっ!」


 息を荒らし、肩で息をするサキヨマ。これ以上付き合うのは時間の無駄だ。


「それじゃ、俺はこれで帰りますよ」


 俺はサキヨマの横を素通りして歩き出そうとした。しかし、往生際の悪い彼は、またしても素早く俺の前に回り込み、両手を広げて行く手を塞いできた。


「くそっ、待て! どこへ行く気だ! まだ勝負は着いてなどいないぞ!」


 (はぁ……。もう、本当に面倒くさいな。これ、さっきもやったよ)


 デジャヴを感じながら、俺は完全に呆れ果てた。


 もう一切の手加減も、慈悲も必要ないと判断した俺は、本日二度目となる『あのスキル』を無詠唱で発動させた。


 (『亜空間倉庫』――対象の全装備、一括格納)

 カチャ、という奇妙な空間の歪みが生じる。


「ユウマァ! 絶対に逃がさんぞぉ!」


 足を開き、両手を大きく広げて威風堂々と立ち塞がる騎士団長サキヨマ。


 ――ただし、その身には、誇り高き白銀の鎧も、衣服も、下着すらも、何一つ残されてはいなかった。

 

 廊下に差し込む昼下がりの光が、綺麗に鍛え上げられた、だが完全に遮るもののないおっさんの全裸を、これでもかと美しく照らし出す。


「――あ、ここに変態がいまーす!!」


 俺はすかさず右手を口に添え、館の天井が震えるほどの超大声で叫んだ。


 その声が響き渡った、まさに次の瞬間。


「「「きゃああああああああああああああああーーーッ!!!」」」

 廊下のあちこちの陰から、洗濯物やトレイを持ったメイドたちの、鼓膜を突き破らんばかりの凄まじい悲鳴が何重にも重なって響き渡った。


「き、騎士団長が……! ぜ、全裸で……全裸でお客様の若い男の子を襲ってるううううううう!!!」


「衛兵さん呼んでー!! いや、ここが警察(衛兵所)の本部だったーー!?」


 メイドたちの黄色い(そして一部血走った)悲鳴と怒号を聞いたサキヨマは、そこでようやく、自分の身体が妙に涼しくなっていることに気づいた。ゆっくりと視線を下ろし、完全に露出した自分の股間を目にした瞬間、彼の顔はトマトのように真っ赤に染まった。


「な、な……っ!?!?!?」


 サキヨマは、素早く自分の股間を両手でガシッと隠すと、脱兎のごとき勢いで廊下を走り出し、奥へと逃げ去っていった。


「貴様ぁぁぁ!! 覚えていろよぉおおおおお!!!」


 捨て台詞だけが廊下に虚しく響く。


 俺は、彼の哀れな持ち物(鎧や服、下着一式)を、その場にぽつんと綺麗に畳んで置いておき、今度こそ何事もなかったかのように領主の館を後にした。


 その後、館の中で「変態露出狂の騎士団長」の噂が瞬く間に広まり、彼の威厳が完全に消え去ったのは言うまでもない。


 そしてなぜか、一部の特殊な趣味を持つ腐女子メイドたちが、陰からサキヨマに対して、これまでとは違った意味で「熱い視線」をネットリと注ぐようになるのであったが、それはまた別の話である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ