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【改訂版】Sランクパーティーに捨てられたポーターは実は最強の空間魔法使いだった。~虐げられた世界に復讐して『ざまぁ』するんだぁ!~  作者: ボルトコボルト


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第45話 :【ざまぁ】お荷物扱いしていた元凶が、最強の証拠を突きつけられてギルドから完全永久追放されるまで

 ――ガシャァン!!


 冒険者ギルドの重々しい空気を切り裂いたのは、怒り狂った『焔の剣』のリーダー・ミナトの怒号だった。


「リュウセイ! てめえええええええ! アイテムバッグを返せええええ!」


 ミナトは我を忘れ、目の前に立つリュウセイへと殴り掛かる。かつてAランクとして踏ん返っていたプライドはどこへやら、今の姿はただの血の気の多いチンピラそのものだ。


 だが、その拳がリュウセイの顔面に届くことはなかった。


 リュウセイは、まるで止まった止まったハエでもあしらうかのように、頭をわずかに傾けてその大振りのパンチを軽く躱す。


「おっと、危ねえな」


 空振りの勢いで大きく体勢を崩し、無防備に前傾姿勢になったミナト。その絶好の隙を見逃すほど、百戦錬磨の冒険者たちは甘くない。


 リュウセイの背後から、大柄な影が恐ろしい踏み込みの速さで飛び出してきた。


「――うちのリュウセイに、何しやがった」


 ドゴッ!!!


 肉と骨が激しく衝突する、鈍く重い音がギルド内に響き渡る。


 カウンター気味に放たれた強烈なストレートが、ミナトの鼻元へ完璧に叩き込まれた。


「ぶへっ!?」


 情けない悲鳴と共に、ミナトの鼻から鮮血が派手に飛び散る。そのまま勢いよく後ろへと吹き飛び、床の上をもんどり打って転がった。鼻を押さえてのたうち回るその姿に、かつての威厳など微塵もない。


「Aランク冒険者パーティー『黒紅の無頼』のリーダー、ショウゴだ。おい、挨拶代わりにしてはちっとばかし脆すぎねえか?」


 ショウゴは冷徹な眼光を放ちながら、懐から取り出した布で拳に付着したミナトの鼻血を無造作に拭き取った。その圧倒的な強者の風格に、ギルド内の空気がピリリと張り詰める。


「ふぐっ、ひ、貴様ひさまぁ……! ただじゃおかねえぞ。覚悟しろ(はくごひろ)ぉ……!」


 ミナトはボタボタと床に鼻血をドバドバ流し、涙目で睨みつけながらヨロヨロと起き上がった。強がってはいるが、鼻をへし折られて声が完全にフガフガになっている。


「ポンコツ冒険者が粋がるなよ!」


 ショウゴの容赦のない回し蹴りが風を切る。


 ミナトは本能的な恐怖から、上体を後ろに反らすスウェーバックで間一髪それを躱した――かに見えた。


 ――ビシィッ!


「あ……!?」


 ショウゴの狙いは最初からミナトの顔面ではなかった。鋭く突き出された爪先が、ミナトの胸元に掛かっていた『冒険者証』の紐に正確に引っ掛かり、そのまま力任せに引き千切ったのだ。


 ショウゴは奪い取った輝かしいプレートをゴミのように見つめ、フンと鼻で笑う。


「そいつはもう、お前にはいらんだろ」

「ひくひょう(畜生)ぅ……!」


 ミナトの上の服は、流れる鼻血で見る影もなく真っ赤に染まっていく。


 ショウゴは攻撃の手を緩めない。回し蹴りの勢いをそのまま利用し、独楽こまのように鋭く反転しながら、流れるような動作で強烈な横蹴りを叩き込んだ。


 ドガッ!!!

「んぐっ!?」


 まともに胸にクリーンヒットを食らい、ミナトはまるで紙屑のように数メートルも蹴り飛ばされた。床を激しく転がり、壁にぶつかってようやく止まる。


 そのあまりに一方的な惨敗劇に、周りで見ていた冒険者たちから一斉にザワザワと嘲笑が湧き上がった。


「なんだぁ? ミナトの奴、口ばっかりでクソ弱いんじゃねぇか?」


「いつも威張りくさってたクセに、他所のリーダーにあっさり鼻血ブーだぜ。みっともねぇなぁ!」


「これが元Sランク? 笑わせんなよ」


 かつて周囲を怯えさせていた『焔の剣』の威光は、今この瞬間、完全に消え失せた。


  ◇◇


「ちょっと! 冒険者ギルド内で冒険者同士の暴力は禁止よぉ!」


 たまらず後ろから魔法使いのアオイがヒステリックに叫んだ。形勢不利と見て、ギルドのルールを盾に身を守ろうとしたのだ。


 だが、ショウゴはその言葉を鼻で笑い飛ばし、ギロリとアオイを睨みつけた。


「ふっ、勘違いするなよ。てめえらはさっきギルド長から『冒険者資格を剥奪』されたんだ。もう冒険者じゃねえよ。ただの一般人が、ここにいる現役冒険者に殴り掛かって来たんだ。こっちは正当防衛なんだわ。……これ以上グダグダ言ってると、お前等もまとめてぶっ飛ばすぞ?」


「くっ、……あ、あんた……!」

 ショウゴから放たれる本物の強者の威圧に、アオイはそれ以上言葉が出ず、顔を真っ赤にして悔しがるしかなかった。


「それよりリュウセイ! そのアイテムバッグを返しなさいよ! それは元々、私達のパーティーの物よぉ!」


 次に噛み付いたのは弓使いのヒマリだった。彼らにとって、アイテムバッグとその中身は、これからの生活を左右する貴重な財産だ。必死になって叫ぶ彼女に対し、リュウセイは肩をすくめてクスクスと笑う。


「くくく、何言ってるんだ? これは、オ・レ・の物だ。これが元々お前等の物だって言う、明確な証拠でもあるのかい?」


「なっ……中身を見れば一発で分かるわよ! 高価な素材やマジックアイテムが山ほど入ってるはずでしょ!」


「へえ、中身ねぇ。ほら、これしか入ってないよ?」


 リュウセイがアイテムバッグを逆さにすると、中からポロリと出てきたのは、どこにでもある錆びついたナイフ一本だけだった。


「な……っ!? あんた、私たちが来る前に中身を全部出したんでしょ! 泥棒!!」


 ヒマリがキィキィとヒステリックに食い下がるが、リュウセイの目は完全に冷めきっていた。


「はぁ……どこまでも、醜い言いがかりをつけるなよ」


 ドスッ!!!

「うぐっ……!?」


 次の瞬間、リュウセイの容赦のない前蹴りがヒマリの細い腹部に深く突き刺さった。


 ヒマリは衝撃で目を剥き、その場に崩れ落ちるように腹を抱えて蹲った。


「ぐふぇっ……ぅおえっ……げほっ!」

 あまりの苦痛と衝撃に耐えきれず、ヒマリはその場に食べたものを激しくぶちまけた。


 ゲロとミナトの鼻血でみるみる汚れていく、きらびやかだったはずのギルドの床。


 リュウセイは冷淡な手つきで、蹲るヒマリの首に掛かっていた冒険者証の紐を力任せに掴んだ。


 ブチッ!!!


「もうお前らには必要ないだろう。大人しく冒険者証をよこしな」


「ふん! こんな行き遅れたギルドの資格なんて、こっちから願い下げよ! こんなもん要らないわよ!」


 見かねた回復士のユイナが、自らの首から冒険者証を引き千切り、床の汚物の中へと投げ捨てた。負け惜しみを叫ぶ彼女たちの姿は、哀れを通り越して滑稽ですらある。


「アオイ、お前もだ。冒険者証を寄こすんだ」

 ギルド長が静かに前に出、アオイに手を差し出した。


「くっ……返せばいいんでしょ! 返すわよ、こんなもの!」

 アオイもまた、悔し涙を浮かべながら冒険者証をギルド長の手へと叩きつけた。


「ミナト、ヒマリ、もう行きましょう……! ここにいたら何をされるか分からないわ!」


 アオイは床に倒れていたヒマリを抱き起こし、ボロボロのミナトにハンカチを投げ渡した。


 ミナトはそのハンカチで真っ赤な鼻を必死に押さえ、リュウセイと、そして一部始終を冷ややかに見届けていた俺――ユウマを憎しみを込めてひと睨みした。だが、もはや言い返す気力すら残っていないのか、4人はヨロヨロとした足取りで、逃げるようにギルドを出ていった。


「あ、ちょっと待ってよ! 置いていかないで!」

 受付嬢を解雇されたメイもまた、慌ててミナトたちの後を追って飛び出していった。


  ◇◇


 ギルドを一歩出た『焔の剣』の4人と、その後ろを必死に追いかけるメイ。


 街頭の光の下で、メイはすがりつくようにミナトの腕に絡みついた。その口からは、自身の保身のためだけの利己的な言葉が早口で溢れ出す。


「これからどうするのぉ? ねぇ、ミナト! 私もギルドを首になっちゃったんだけどぉ! でも、一緒に付いて行っても良いよねぇ? ねぇ! だって、ミナトの頼みでユウマのランク昇格を不当に保留にしたのがギルド長にバレちゃったのが原因なんだからぁ! 私は被害者よ! だから良いよねぇ、付いていくわよぉ! これから私を養って貰わなきゃ困るんだからぁ!ねぇ、良いでしょ……っ」


 自分のせいでこうなったのに、まだAランクの甘い汁を吸おうとする寄生虫のような態度。


 右手で血まみれのハンカチを鼻に当てていたミナトの額に、青筋がこれでもかと浮かび上がる。彼の我慢は、すでに限界を迎えていた。


「うるへえええええええ!!!」


 ドガッ!!!


 ミナトは激昂のまま、左手の裏拳をメイの顔面へと容赦なくぶち当てた。


「ひゃうっ!?」


 まともに顔面を殴られたメイは、悲鳴を上げて派手にもんどり打った。鼻から鮮血を噴き出し、硬い石畳の上へと激しく転がっていく。


「びぇえええええええん! 痛いよう! 私が何したって言うのよおおおぉ!」


 メイは仰向けに倒れたまま、痛みと恐怖で起き上がることすらできず、鼻血をドバドバ流して子供のように泣き叫んだ。自分の不正が招いた結果だというのに、まだ悲劇のヒロインのつもりなのだろう。


「ああ、もう! 本当に煩いわね、この泥棒女が!」

 イラ立ちを爆発させた魔法使いのアオイが、呪文も唱えずに杖を突き出し、メイに向けて『ファイヤーボール』を放った。


 ヒュッ――バンッ!!!


 激しい爆風と炎が、泣き叫ぶメイの顔のすぐ横の地面で弾けた。


 凄まじい熱風がメイの顔を襲い、パチパチと不快な音を立てて彼女の自慢の髪が黒く焦げていく。


「ひ、ひぃ……っ!?」


 あまりの恐怖に、メイは泣くことすら忘れて声を失った。顔色は紙のように青ざめ、ガタガタと全身を激しく震わせる。


 恐怖のあまりに尿意の我慢が効かなくなったのか、彼女の股間がみるみるうちに濡れていき、じわじわと冷たい地面へと染みて広がっていった。


「二度と私たちの前に現れるな。次はないわよ」


 アオイは冷たく吐き捨てると、もう二度とメイを振り返ることはなかった。


 かつて最強と謳われた『焔の剣』は、お互いを罵り合い、醜く傷つけ合いながら、夜の闇へと這うように立ち去っていった。


 残されたのは、焦げた髪と汚物にまみれ、異臭を放ちながら震える元受付嬢の哀れな姿だけだった。


 俺を『無能』と蔑み、理不尽にすべてを奪おうとした者たちの、これが自業自得の末路だった。

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