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【改訂版】Sランクパーティーに捨てられたポーターは実は最強の空間魔法使いだった。~虐げられた世界に復讐して『ざまぁ』するんだぁ!~  作者: ボルトコボルト


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第43話 無能と蔑まれた少年、実はギルドの命綱でした。~寄生していた受付嬢の哀れな末路~

 「ん? ユウマ、あんた一体何をやらかしたのよ?」


 冒険者ギルドの重厚な扉を潜り、受付カウンターへと歩み寄る俺たち。その姿を認めた瞬間、受付嬢のメイはこれ見よがしに深い溜息を吐いた。その顔には、隠そうともしない蔑みと嘲笑が張り付いている。


 俺を挟むようにして立つのは、このギルドの最高責任者であるギルド長のソウマ。そして、ギルド専属の解体所を仕切る、強面だが職人気質で一本気なおやっさん、トモヤだ。


 「いつかはこうして、大ごとになって処罰されると思ってたのよ。実力もないヘボ冒険者は、サッサと資格を剥奪されれば良いんだわ。ギルドの足を引っ張るお荷物なんだから」


 メイはフンと鼻で笑い、髪をかき上げる。彼女の中で、俺は完全に『不正を働いて呼び出された犯罪者』扱いらしい。


 (いつも、こうやって俺の言うことを頭ごなしに否定してきたんだよな……)


 胸の奥がチリリと痛むが、今日ばかりは恐怖も萎縮もない。なぜなら、俺の隣に立つ二人の放つ威圧感が、すでに限界突破しているからだ。


 「ちょっと記録を見せて貰うぞ」

 「ひゃいっ!?」


 低く地を這うようなソウマの声。彼はメイの返事を待つことなく、長い腕を伸ばして彼女を強引に押し退けた。そのままカウンターの裏へと回り込み、厳重に管理されているはずの冒険者記録の魔導書を引っ張り出す。


 「ちょ、ちょっとちょっと、ギルド長ぉ!? これ、私の管轄の業務中なんですけどぉ! いくらギルド長だからって、横暴じゃないですかぁ!」


 メイは声を荒らげて抗議するが、その声音には明らかな焦りが混じっていた。


 パラパラと音を立ててめくられるページ。ソウマの鋭い眼光が、ある一項に留まった。


 「……何を見てるんですかぁ?」

 覗き込もうとしたメイの身体が、ピシリと凍りつく。その額から、たらりと一筋の冷や汗が流れ落ちた。彼女の顔色から、みるみるうちに血の気が引いていくのが分かった。


  ◇◇


 「メイ、お前に聞きたい。何故ユウマは、未だにEランクのままなのかな?」

 ソウマの静かな、しかし有無を言わせぬ問いかけがギルド内に響く。


 「え? ……そ、それは……彼がここに来ないから、昇格手続きをしていないだけです! そう、本人の怠慢ですよ!」


 苦し紛れの言い訳を叫んだ後、メイはガバッと俺の方を向いた。その目は血走り、必死に俺を脅しつけようとしている。


 「ほら! ボヤボヤしないで、早く冒険者証を出しなさいよぉ! 今ここで、特別に昇格させてやるわよぉ! だから余計なことは言うんじゃないわよ!」


 「ちょっと待て。往苦しいぞ、メイ」

 ソウマが冷酷にその言葉を遮る。


 「ユウマは先日、確かにここに来て報告をしている。だが、記録では『昇格保留』になっている。それも、お前のサインでな」


 「た、たまたまですよ! 新人や低ランクの、真偽が怪しい報告は、事実確認のために様子見をする場合がありますよね!? 私はギルドの利益を守るために、慎重に業務を行っていただけですぅ!」


 身振りを交えて必死に自己弁護するメイ。しかし、ソウマは冷徹に事実を突きつける。


 「ユウマは先ほど、『魔獣の窟』を単独で完全攻略したぞ」


 「ええええええええっ!? ぜ、絶対嘘です! あり得ません! あんな、並のCランクパーティでも全滅しかねない危険なダンジョンを、こんな万年Eランクの無能冒険者が、たった一人で攻略出来るはずがありません!」


 メイは狂ったように金切り声を上げた。彼女にとって、俺が有能であっては困るのだ。俺が無能でなければ、これまでの彼女の行為がすべて『大罪』になってしまうから。


 「嘘をついてる証拠があるのかな? ユウマは『魔獣の窟』の最深部にしか存在しない、ボスの固有素材を今さっき納品した。それも、完全な状態でだ。冒険者ギルドは徹底した成果主義だ。現物がある以上、これがユウマの実力と実績の揺るぎない証拠になる!」


 「う……、あ……」

 メイは言葉を詰まらせ、金魚のように口をパクパクと開閉させる。


 「それにだ。百歩譲ってその言い分を認めるとしても、1年間ずっと様子見で保留にするなんて、建国以来のギルドの歴史でも聞いた事ないし、あり得んだろう?」


 「1、年……?」

 周囲で聞き耳を立てていた他の冒険者たちから、ざわめきが沸き起こる。


 「ユウマはかなり前から、薬草や希少鉱石の採取クエストを大量に達成している。その実績だけで、とうにDランク……いや、Cランクへの昇格要件すら完全にクリアしてるぞ」


 「え? あ、それは……違います! それはAランクパーティ『焔の剣』の実績です! ユウマは彼らの荷物持ちとして付いて行っただけで、手柄は全て『焔の剣』のものです!」


 未だに夢から覚めないメイは、俺を追放した元所属パーティの名前を出して縋り付いた。


 しかし、ここで今まで黙っていた解体所のおやっさん、トモヤが前に出た。ドスン、と床が鳴るほどの足取りでカウンターを叩く。


 「おいおい、お嬢ちゃん。適当な嘘ぶっこいてんじゃねえぞ?」

 「ひっ……!」


 「あのプライドばかり高い『焔の剣』の連中が、地道に泥に塗れて薬草の採取なんてするかよ。仮にやったとしても、あいつらの雑な手際じゃ、買取出来るレベルの綺麗な納品は逆立ちしたって出来ねえんだよ」


 「はぁ? 何を言ってるんですか! あの方達は輝かしいAランク冒険者ですよ!? そんな素人みたいな事、あるわけないじゃないですか!」


 トモヤは大きな鼻をフンと鳴らし、呆れたように首を振った。


 「メイ、お前の目は節穴か? それとも、あいつらから裏で甘い汁でも吸わされて、脳みそまで腐っちまったか? この前『焔の剣』が単独で持ち込んで、お前が買い取った魔石を見ただろう。傷だらけで魔力が漏れ出た、とてもAランク冒険者の解体結果とは思えねえゴミクズだったよな。そして、あいつらと契約解除になった後に、ユウマがさっき提出したボスの素材はどうだ? 神経も血管も完璧に残された、非の打ち所がない『特上』だ。明らかに、今までの『焔の剣』の超高品質な採取と解体は、全てユウマ一人の実績だろうが!」


 「い、いや、そ、それは……そんな、はずは……」

 言い返す言葉を完全に失い、メイの顔が青ざめていく。周囲の冒険者たちの視線が、憐れみから明確な「軽蔑」へと変わっていくのが分かった。


  ◇◇


 「さらに、もう一つ。これが決定打だな」

 ソウマが冷徹に魔導書のページを指差す。


 「冒険者ギルドにおいて、特定の冒険者の『専属担当』になる場合は、不正防止のためにギルド長の公的な命令書が必要なのだが……いつ、儂がメイにそんな命令を出したのかな?」


 「何の話ですかぁ? 私はそんな事、一言も言ってませんがぁ! ユウマが勝手に担当だと思い込んで、嘘を触れ回ってるだけですよ! ギルド長は、身内である職員の私より、こんな嘘つきの底辺冒険者を信じるんですかぁ!?」


 涙目で被害者を装い、最後の足掻きを見せるメイ。だが、その嘘を打ち砕く声が、背後から一斉に上がった。


 「ちょっと待ちなさいよ! 私もメイが『ユウマの担当だから、彼への依頼は全部私を通せ』って横柄に言ってるの、何度も聞いたわよ!」


 「私もそう聞いた! ユウマの報酬をピンハネしてるんじゃないかって、噂になってたわよ!」


 「私も!」


 「私もよ! いつもユウマを裏口に呼びつけて、荷物持ちの愚痴を聞かせてたじゃない!」


 声を上げたのは、中堅冒険者のアヤカさんをはじめ、その場にいた女性冒険者たちだった。彼女たちは一斉に前に出てきて、メイの不正を口々に証明していく。


 「な、なんで……!?」


 「こんなに多くの証人がいるんだが、これでもユウマを嘘つき呼ばわりするか? お前がユウマの膨大な実績を自分の懐に入れ、『焔の剣』に横流しして甘い汁を吸っていたのは、もはや明白だな」


 ソウマの言葉に、メイはガタガタと震え、床にへたり込んだ。


 「ううっ……。なんで、この人達、今日に限ってこの時間に、まだここにいるのよぉ……いつもならもう依頼に出ていないはずなのにぃ……」


 (そりゃあ、俺が『魔獣の窟』をソロ攻略したっていう噂を聞きつけて、みんな確認のために残ってたんだよ……)


 自業自得という言葉が、これほど似合う状況もないだろう。


 「ふむ。メイの不正、およびギルド内における著しい信用失墜行為は明らかだな」


 「え! いや、そんな、処分なんて、始末書くらいで……」


 「メイ、お前を本日付で冒険者ギルドから『懲戒解雇』とする! 当然、退職金も出ないし、今月の給料も全額没収だ! 今直ぐ荷物をまとめて、ここから出て行け!」


 「ギ、ギルド長ぉ!! それだけは、それだけは勘弁して下さいよぉ! 首になって給料も貰えなかったら、私、明日からどうやって生活すれば良いんですかぁ! 借金の返済もあるのにぃ!」


 メイはプライドを全て投げ打ち、涙と鼻水で顔をグシャグシャにしながら、ソウマの足元に縋り付いた。しかし、ソウマの目は一瞥の価値すらなしと冷ややかだ。


 「ダメだ。お前の犯した罪はギルドの根幹を揺るがすもの。首は決定事項だ。二度と敷居を跨ぐな」


 「びぃえええええええええん!!」


 きっぱりと断られ、完全に希望を絶たれたメイは、大声を上げて泣き叫びながら、逃げるように出入口へと走り出した。


  ◇◇


 バタン!!


 激しく扉が開いた、まさにその瞬間だった。


 「おいおい、なんだこの騒ぎは? ……ん? メイじゃないか。どうしたんだ、そんなに泣いて?」


 絶妙すぎるタイミングでギルドに入ってきたのは、豪奢な装備を身にまとった男――『焔の剣』のリーダー、ミナトだった。その後ろには、同じパーティの仲間たちも続いている。


 だが、かつての輝かしいAランクの威光はどこへやら、彼らの装備はボロボロで、全員がひどく疲弊しきった顔をしていた。


 「あぁ、ミナトさああああん!!」


 メイは救いを求めるように、ミナトの胸へと飛び込んだ。


 「ひどいんです! ギルド長が、ユウマの味方をして私をクビにしたんです! 私、何も悪いことしてないのに!」


 「何だと……? おい、ユウマ! またお前が何か問題を起こしたのか! この寄生虫の無能が、俺たちのメイに何てことをしてくれたんだ!」


 ミナトはここぞとばかりに俺を睨みつけ、怒鳴り散らした。相変わらず、全ての原因を俺に押し付ける気のようだ。


 しかし、ソウマがニヤリと、肉食獣のような獰猛な笑みを浮かべて一歩前に出る。


 「ほう、良いところに帰って来たな、『焔の剣』」

 「ギ、ギルド長……」


 ソウマの放つ圧倒的なプレッシャーに、ミナトが一歩後退りする。

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