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【改訂版】Sランクパーティーに捨てられたポーターは実は最強の空間魔法使いだった。~虐げられた世界に復讐して『ざまぁ』するんだぁ!~  作者: ボルトコボルト


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第35話 一線を超えた元仲間たち 〜狂気の略奪と、悠々と凱旋する元雑用係〜

 薄暗く冷気が這うダンジョン『亡霊洞窟』の通路を、Cランク冒険者パーティー『水竜の爪』の4人が歩いていた。自分たちの実力に見合った戦果を携え、安堵と共に帰路についていた彼らは、背後から近づく不穏な足音に気づく。


 タッタッタッタ。


 それは、飢えと狂気に突き動かされ、獲物を狙う獣の足音だった。


 『焔の剣』のリーダーである剣士ミナトと、回復士のユイナが猛烈な勢いで駆け寄ってくる。


「ん、誰だ?」

 怪訝に思った『水竜の爪』の冒険者が振り返った瞬間――。


 ドカッ!!

「んぐっ!?」


 ミナトは警告も名乗りもせず、無言のまま先頭の男を力任せに蹴り飛ばした。不意を突かれて無様に転倒した男の隙を見逃さず、ミナトは素早く踏み込むと、男の腰から剣を強引に奪い取って一気に引き抜いた。


「あっはっはぁ! 死ねええええええッ!!」


 ブシュッ!!


 狂った高笑いを上げながら、ミナトは仰向けに倒れた男の胸へと、奪ったばかりの鋭い剣を突き立て、足でそのまま踏み押さえた。容赦のない、確実な致命傷。


「いい剣じゃねぇかぁ、おいっ!!」


 べっとりと赤い血に濡れた剣を死体から力任せに引き抜き、ミナトは残された3人の冒険者をジロリと血走った目で睨みつける。その姿は、かつて誇り高きAランクと呼ばれた面影など微塵もない、ただの山賊そのものだった。


「な、何を……っ!?」

「だ、誰だお前ら! 狂ったか!」

「ひぃっ……!」


 目の前で起きたあまりの惨劇に、『水竜の爪』のメンバーは恐怖に身体を震わせながらも、生き残るために必死に武器を構えた。だが、彼らが前方のミナトに意識を集中させたのは、致命的な失策だった。


「食べ物をちょうだいよぉっ!!」


 いつの間にか彼らの死角へと音もなく回り込んでいたユイナが、普段は癒やしの力を紡ぐはずの聖職者の杖を両手で激しく振り回した。そして、構えをとっていた冒険者の後頭部めがけてフルスイングで叩きつける。


 バゴンッ!!!

「がはっ……!」


 骨の砕ける嫌な音と共に、殴られた男が白目を剥いて前のめりに倒れ伏す。


 突如として横から現れたユイナと、崩れ落ちた仲間の姿に、残る2人が驚愕してそちらへ視線を向けた。


 ミナトはその一瞬の隙を絶対に見逃さなかった。

 全力の踏み込みから、奪った剣を両手で水平に力強く振り抜く。


 ブンッ、ズバシッ!!!


 運悪く、残った2人の身長はほぼ同じだった。


 ミナトが放った非情な一閃は、1人の首を綺麗に刎ね飛ばし、そのままの勢いでもう1人の首の半ばまで深く食い込んで止まった。ガクガクと震えながら崩れ落ちる2人。


 ミナトは肉に挟まった剣を抜くため、まだピクピクと動いている冒険者の身体を無慈悲に蹴飛ばして刃を引き抜いた。そのまま流れるような動作で、ユイナに頭を殴られて地面で呻いていた最後の1人の背中へと歩み寄り、心臓目掛けて剣を深々と突き刺した。


 ズシュッ!!!

「ぐふっ……、が……」


 洞窟の冷たい床に、4人の冒険者たちの新鮮な死体が物言わぬ肉塊となって横たわる。周囲には、鉄サビのような生々しい血の臭いが一気に立ち込めた。


 そこへ、遅れて走ってきた弓使いのヒマリと魔法使いのアオイが到着し、目の前の凄惨な光景に息を呑んで絶句した。


「ちょ、ちょっと、ミナト……!?」

「何で……何でこんなことするのよ……っ!」


 いくら困窮しているとはいえ、同業者を不意打ちで惨殺した2人の凶行に、アオイたちはガタガタと唇を震わせる。しかし、返ってきたのは、ミナトの冷酷極まりない嘲笑だった。


「くくく……何きれい事言ってんだよ。俺たちはあの場で、ユウマとリュウセイを見殺しにしたんだぞ? 今更まともな冒険者のツラが拝めると思ってんのか。お前らもあの場にいた共犯者だ。俺たちとはもう一蓮托生なんだよ」


「そうよ!」

 ユイナが返り血を浴びた顔のまま、ヒマリに向かって狂気を孕んだ声で叫ぶ。


「このままじゃ、私たちがこのダンジョンを生きて出られるかも怪しいのよ!? 食料も武器も野営道具もすべて失ったの! 生き残るためには、こいつらから奪うしか無いでしょ!? ねぇ、ヒマリもそう思うよね!?」


「そ、そうね……。私たちは……生き残らなきゃいけないもんね……」


 自分のミスでアイテムバッグをリュウセイに渡してしまい、全ての物資を失う原因を作ってしまったヒマリは、罪悪感と恐怖に震えながらも、その狂った論理に同意するしかなかった。ここで孤立すれば、次に殺されるのは自分だと本能で理解したのだ。


「だったら、誰かに見つかる前に、早めに荷物と武器を奪ってここを離れましょう」


 一度覚悟を決めて開き直ったアオイの行動は早かった。先ほどまでの怯えは消え去り、落ちている冒険者たちのバッグを素早く漁り始める。


「そうそう、その意気だ。誰にも見つからなきゃ、地上に戻ったって何とでも言い訳できるさ」


 ミナトも満足げに頷き、死体から実用的な武器や防具、金目の荷物を手際よく剥ぎ取っていく。


「……」


 ヒマリもまた、無言のまま死体の1人に近づき、その腰から矢がぎっしりと詰まった矢筒を冷酷に奪い取った。こうして、かつての輝かしい名声を持っていたAランクパーティーは、完全に一線を超え、悪辣な犯罪者へと堕ちていった。


  ◇◇


 その頃、俺――ユウマは、彼らが地獄の底へと突き進んでいることなど知る由もなく、最高の気分でダンジョンを駆け抜けていた。


「いやぁ、今回は本当に素材を大量ゲットできたね、クロド!」


「最高の食事が楽しみだワン!」


 俺はブラックドッグのクロドの大きな背中に跨がり、ダンジョン『魔獣の窟』の最下層から地上に向けて、信じられないほどのハイペースで快走していた。


 最下層のボスであるゲリュオンとオルトロスを討伐したことで、俺たちのレベルは一気に跳ね上がり、それに伴って俺の『空間魔法』のレベルもさらに上昇していた。


 扱える空間の許容量も精度も、来た時とは比べ物にならない。


 身体能力そのものが強化された俺たちは、複雑な下層のルートを、まるで軽い散歩でもするかのような驚異的な速度で踏破していく。


 頭の中にあるのは、アイテムボックスにこれでもかと詰め込まれた、ブラックオーロックスをはじめとする幻の高級肉をどう調理するか、ということだけだ。


 極上のステーキにするか、それとも特製のタレでじっくり煮込むか。


 俺とクロドは、まだ見ぬ至高のディナーに胸を躍らせながら、光の差す上層へと向かって軽やかに走り続けた。

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