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【改訂版】Sランクパーティーに捨てられたポーターは実は最強の空間魔法使いだった。~虐げられた世界に復讐して『ざまぁ』するんだぁ!~  作者: ボルトコボルト


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第3話 ポーター

俺はユウマ。空間魔法使いのポーター

――だった男だ。


たった今、理不尽にクビを言い渡された。


「ほら、さっさとその便利な『亜空間』から荷物を全部ぶちまけろよ。言っとくけど、お前が自費で買った武具も食材も、全部うちのパーティーの資産だからな? ひとつ残らず置いていけよ」


「……分かったよ」

重苦しい沈黙の後、俺は静かに応じた。


『亜空間』を展開し、中に格納していたパーティーの物資をすべて床に吐き出していく。


この中のいくつかの特殊な武器は、俺がなけなしの給金を叩いて購入したものだ。

彼らには使いこなせない、モンスターの弱点を突くための武装。

けれど、俺自身は戦えないし、もう彼らに関わるのも疲れ果てていた。

「もう、全部くれてやる」

と、心の中で吐き捨てた。


Sランク冒険者パーティー『焔の剣』のリーダーであるミナトは、俺が差し出した物資を、獲物を漁るような卑しい手つきでアイテムバッグへと詰め込んでいく。


「おお! 本当だ。まだまだ入るな。お前の言う通りの容量だぜ」

ミナトの顔に、邪悪な満足感が広がる。


「じゃあな、お荷物。あばよ!」

次の瞬間、視界が爆発した。


ミナトがいきなり、腰の剣の柄頭で俺の後頭部を容赦なく殴りつけてきたのだ。


ガンッ!

「んぐっ……!」

脳を揺さぶる激痛に、俺の膝がガクガクと崩れ落ちる。


床に顔を打ち付け、荒い息を吐き出す。


おいおい、マジかよ……。

いくら何でも、ダンジョンを出るまでは同行させるものだと思っていた。

魔物がいつ襲ってくるかも分からないこの深層で、丸腰のまま置き去りにするなんて、正気の沙汰じゃない。


後頭部からドクドクと溢れる鈍痛を必死に堪えながら、俺は冷たい床に這いつくばったまま、他の仲間たちを見上げた。

幼馴染としての、最後の情を信じたかった。


「大人しくそこで死んでねぇ」

「バイバイ!」

「じゃーねー」


だが、ヒマリも、アオイも、ユイナも、一瞥すら暮れずに吐き捨てた。


彼女たちの背中は、すでに迷いなく出入口の方へと向かって歩き出している。


くそぉ……声が出ない。

視界の端からじわじわと暗闇が侵食してくる。

裏切りの冷たさと後頭部の激痛の中、俺の意識はぷつりと途切れた……。 



――俺の人生は、ずっとこうして誰かに搾取されるだけだった。


ポーター。冒険者の物資を運搬するためだけの、日陰の職業。ダンジョンに挑む花形の冒険者に付き従い、彼らの重い荷物や、血生臭い魔物の素材をひたすら運ぶ。


当然、好きで選んだ道ではない。

俺は空間魔法使いでありながら、直接的な戦闘スキルを何一つ持っていなかった。

戦えない俺が生きていくためには、この泥をすするようなポーター業にしがみつくしかなかったのだ。


この世界では、15歳になると教会で神の啓示を受け、固有のスキルを授かる。

戦闘系の『剣術』や『弓術』、あるいは『火・水・風・土』に代表される4属性魔法が世界の中心であり、特権階級だった。


冒険者に焦がれ、幼い頃は木の棒を剣に見立てて野山を駆け回っていた俺も、当然、そんな華々しい戦闘スキルを夢見ていた。


だが、神が俺に与えたのは、地味極まりない『空間魔法』だった。空間を拡張し、物品を収納・展開する能力。一見すれば便利に思えるが、現実は残酷だった。


この世界には、同様の機能を備えた『アイテムバッグ』という魔道具が存在する。

つまり、アイテムバッグを大金で買える上位の冒険者にとって、空間魔法使いなど何の価値もないお荷物なのだ。


ただ、アイテムバッグは一般の冒険者には手が出ないほど高価であるため、それを買えない者たちの間で、辛うじてポーターという需要が残っている。

その程度の、替えの利く底辺の能力。


教会から帰宅し、父親に結果を伝えた時の失望に満ちた目は、今でも胸に突き刺さっている。


母は俺が3歳の時に病死し、父は男手ひとつで俺を育ててくれた。だが、父は足に消えない大怪我を負っており、満足に働けず、我が家は常に飢えと隣り合わせの貧乏だった。

だからこそ父は、俺が強力なスキルを授かり、家を興してくれることを狂おしいほどに期待していたのだ。


その期待が裏切られたと知るや否や、俺は行商人の元へ預けられた。

否、「売られた」と表現するのが最も正しい。

現に、父の懐には行商人から渡された金貨が滑り込んでいたのだから。


行商人の元での生活は、思い出すだけでも吐き気がする。

基本はポーターとして過酷な行軍に同行させられ、調理から夜番、ありとあらゆる雑用を奴隷のように押し付けられた。


休みはなく、給金などもらえるはずもない。食事は朝晩に与えられる、家畜の餌のような残り物だけ。

人間としての尊厳をすべて踏みにじられる日々に耐えかね、俺は、ある嵐の夜に命がけで逃げ出したんだ。




一方、ユウマを奈落の底へ突き落とした『焔の剣』は――。


「おいユウマ、本当にこの道で合ってるのか?」

いつもの癖で振り返り、虚空に向かって声をかけたミナトは、ハッと我に返った。


「何言ってるのよミナト。ユウマならさっきクビにして置いてきたじゃない」白紙に近いお粗末な地図を睨みつけながら、弓使いのヒマリが不機嫌そうに声を尖らせる。


「……あ、ああ、そうだったな。アイテムバッグがあるんだから、もうあいつの指図を受ける必要はねえんだ」

ミナトは強がってみせたが、その声には明らかな動揺が混じっていた。


「ねえ……この道、さっきも通らなかったかしら?」回復士のユイナが、押しつぶされそうな不安に顔を曇らせて周囲を見回す。


「ちょっとヒマリ! ちゃんとマッピングしてるんでしょうね!?」

魔法使いのアオイが、苛立ちを隠さずにヒマリの持つ羊皮紙を覗き込んだ。


「な、何よ偉そうに! マッピングなんて最初からノータッチよ! あんな地味で面倒な作業、全部あの荷物持ち(ユウマ)が勝手にやってたことでしょ!?」


「「「え……?」」」


アイテムバッグという『容れ物』だけを手に入れて万能感に浸っていた4人は、マッピングという『羅針盤』を失い、ダンジョンの深層で完全に孤立していた――。

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