表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改訂版】Sランクパーティーに捨てられたポーターは実は最強の空間魔法使いだった。~虐げられた世界に復讐して『ざまぁ』するんだぁ!~  作者: ボルトコボルト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/50

第12話 深夜の極上ステーキと、狂気へ堕ちる元パーティ

ギルドを出た俺とクロドは、夜の街を歩いていた。


行き先は決まっている。いつも『焔の剣』が使っている見栄を張るための高級宿はパスだ。あんな居心地の悪い場所、文無しじゃなくても二度と行くか。


目指したのは、路地裏にある少し古びた、だけど「飯が抜群に美味い」と評判の宿だ。


すでに日付が変わるほどの深夜。部屋が空いているか少し不安だった。


この宿には馬車馬や騎乗用魔獣を預かるための頑丈な厩舎きゅうしゃがある。もし部屋がダメでも、最悪クロドはそこで寝かせてもらえるだろう。


「すみません、今から一部屋空いてますか?」

宿の従業員に声をかけると、ありがたいことに空室があった。ラッキーだ。


さらに「従魔も部屋に連れていって構いませんよ」とのことだったが、俺の横にいるクロドの巨体を見た従業員は、一瞬で顔を引きつらせた。


「あ、あの……そちらの大きなワンちゃんでしたら、こちらの広い特別室へどうぞ……」


案内されたのは予定より少し高めの部屋だった。まあ、おやっさんから貰った前金(銀貨20枚)があるから問題ない。むしろ広々としていて最高だ。


「深夜ですけど、まだ厨房はギリギリ動いてますよ。何か召し上がりますか?」


「助かります! 食堂で食べさせてください」

食事も従魔同席でOKとのことなので、俺は食堂のテーブル席へ、クロドはその横の床にどっかと腰を下ろした。


注文したのは、この宿の名物である『オーク肉のステーキ』を豪快に3人前。

そのうちの2人前を、クロドの前にドスンと置いてやる。


「おお……! 久しぶりにオークの肉を食うワン! じゅーしーで堪らん美味さだワン!」


「はは、気に入ってくれてよかった。美味そうに食うなぁ」


熱々の鉄板の上で弾ける脂、香ばしいニンニク醤油の匂いが胃袋を刺激する。一切れ口に運べば、濃厚な肉汁がじゅわっと溢れた。


極限のダンジョンから生還し、最高の相棒と囲む深夜の飯。これ以上の贅沢があるだろうか。


「そうだクロド。明日はオークの生息するダンジョンにでも行ってみるか?」


「良いねぇワン! スキルを試すのにも丁度いいワン。明日は腹いっぱい狩って、腹いっぱい食べるぞワン!」


「よし、決まりだな」


俺はすっかり満腹になり、クロドはまだまだ足りなそうに舌なめずりをしてるが、今日のところはお開きだ。


ふかふかのベッドがある部屋に戻り、俺たちは泥のように深い眠りへと落ちていった。


  ◇◇


――同時刻。冒険者ギルド、最上階。


「……というわけなんです、ギルド長! あの傲慢なポーターのユウマが、『焔の剣』のミナトさんたちに置き去りにされただなんて、そんな見え透いた嘘をつくなんて許せません!」


ギルド長の執務室。猫獣人の受付嬢、メイは、怒りで尻尾を激しく左右に振りながら捲し立てていた。


「『焔の剣』はこの街の英雄、高潔なSランク冒険者パーティーです! あんな最底辺のポーターの言うことなんて、ギルドへの侮辱もいいところです! 今すぐユウマの冒険者資格を剥奪クビにしてくださいぃ!」


「いや、そう言ってもだなぁ、メイ……」

デスクの奥で書類に目を通していたギルド長は、やれやれと頭を抱えた。


「何が問題なんですかぁ!?」


「何がって……そのユウマとやらの話が『嘘か本当か』、まだ確定していないだろう。それに、ユウマは『ギルドはSランクを優遇するから、自分から問題を大きくするつもりはない』と言ったんだろう?」


「そこが怪しいんです! 自分が本当に被害者で正しいと思うなら、ギルドに正式に問題報告をするはずです!」


メイは自分の信じたい現実(=ミナトたちは悪くない)にしがみつき、声を荒げる。しかし、百戦錬磨のギルド長は、冷徹に本質を見抜いていた。


「いや、違うな。報告しても『どうせ弱者の言うことなどギルドは取り合ってくれない』と、組織の冷酷さを理解しているから、賢く身を引いたんだと思うよ。逆にギルドとしては、Sランクパーティと揉め事を起こさずに済むから助かるんだがね」


「ええええっ!? ギルド長までユウマが嘘をついてないって言うんですか!? 信じられません!」


「真実は『焔の剣』が戻ってきた時、彼らがユウマの不在をどう報告するかで、すべて白黒はっきり付くさ」


「もう! 頑固オヤジ! 知りませんっ!」


バタンッ!!


激しい音を立てて扉が開閉され、メイは怒り肩のまま部屋を飛び出していった。


静まり返った執務室で、ギルド長は深いため息を吐き、窓の外の夜空を見上げる。


「はぁ……。ユウマという少年の本質はまだ分からん。だが、あのブラックドッグが本当に伝説のSランク冒険者ヒナタの従魔だったのだとすれば……。あの誇り高き魔獣が、根の腐った悪い人間になびくとは到底思えんのだがなぁ……」


老いたギルド長の呟きは、静かに夜の闇へと消えていった。


  ◇◇


その頃の『焔の剣』


――そして、ダンジョン深層。


「いやぁあああっ! 助けて、来ないでぇええ!」

泣き叫びながら、ただ逃げ回ることしかできない回復士のユイナ。


彼女の背後から迫るのは、腐敗した肉を引き摺り、おぞましい奇声を上げる『グール』の群れだった。


「くそっ、次から次へと……! また出やがったか!」

完全に刃こぼれし、研いでいないせいで鉄屑のようになった剣を無理やり構える、剣士のミナト。


ゾンビに続いての夜襲。ろくに休憩も取れず、疲労はとっくに限界を超えている。


「もう! 最悪! 眠い、眠すぎるわよぉ……! 『ファイアー……』あ、頭が痛くて魔法が出ない……!」


MPが底を突き、強烈な魔力枯渇の頭痛に襲われている魔法使いのアオイ。もはや攻撃のかなめである彼女も、完全に足手まといの逃げ腰だ。


そんな絶望的な状況の中、暗闇の奥から、乾いた甲高い笑い声が響いた。


「あはっ! 死ね死ね死ね死ね! 汚いバケモノども、みんなミンチになりなさぁーい! あっはっはっは!!」


パキィン! パキィン! と、ヤケクソ気味に弓を引き絞り、大爆笑しながら矢を乱射している、弓使いのヒマリ。


寝不足と疲労、そして絶え間ない死臭のストレスにより、彼女の精神は完全に限界を超え、おかしな方向ナチュラルハイへ扉を開いてしまっていた。


まともな判断ができる者は、もう誰もいない。


ユウマという完璧なブレーキを失った『焔の剣』は、自業自得な泥沼の中、確実に崩壊へのカウントダウンを刻んでいるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ