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スマイルください
まだ日が昇る前の静かな時間に一人で歩いてる。目的は朝食を求めて、ただただそれだけだ。新聞配達の音、鳥のさえずりの音、自分が生きていると実感する呼吸の音。他の考え事なんて透き通るように消えてしまった。特別なことなんて一切ないけれど不思議とため息が零れ落ちた。それをそのまま前に蹴っ飛ばしてさらに前へ前へ。
目的地が近くなってくると何故か安心してしまう。後ろを振り返ることもする必要なんてないけど、何かを成し遂げる度についしてしまう。登山家の気持ちに近いかもしれないなと勝手に思った。
「…ここだ」
家からは少しだけ離れた場所にある店。そこで売られているコーヒーが毎朝の楽しみなのだ。しかし毎日同じことの繰り返しに麻痺してきてどこか不安になっている自分をどうすればいいだろう。別に何もしなくても誰も悲しまないし喜んでくれない。一人はこの世界にいないような感覚を養えるのだと最近にして思えてきた。警察に捕まらない程度でバカになろうか。
「スマイルください」
「ここスーパーだからやってないよ、そういうの」
ああ、コーヒーが苦いや。




