自分勝手
久しぶりに友人を家に招くことになった。一人暮らしを始めて二年程になるが、繰り返しの日常にも見つけずらい人の優しさがあったりするんだと気付けたのが大きい。
部屋の整理をする必要はなかったのでゴロゴロしながら待ちくたびれていた。時計と携帯の画面を何度も眺めていると、ようやくその時が来た。チャイムが鳴った。
「よう」
「おぉ、まぁ入れよ」
「じゃあお言葉に甘えて……んん?」
玄関に男物ではない靴が一足あることに友人は気付いた。昔から今に至るまで、誰かにモテたためしがない俺たちだから色恋だとは思わないだろう。実際違う。
「あれ?親でもいるのか?」
「ああ、なんかストーカーみたいな…?」
「は?何それ」
俺自身も彼女の考えていることがよくわからないが、事のいきさつをできるだけ細かく伝えた。要約すると、バイト先で少し話する程度の女性に半年前に告白されたが金銭的にも精神的にも余裕はない、という理由で振ったが自宅の前で偶然会ってしまったり毎日電話してくるようになったり。しまいには部屋の合鍵まで作ったみたいで、でも今から引っ越すことも警察に連絡しても状況は変わらなかったりで。
「それで?なんで一緒に住むことになってんだよ」
「夜になったら家まで送ってるよ」
「おお、さすが……じゃなくて!!」
友人の言いたいことはわかっている。ストーカーも立派な犯罪で、そのうち、万が一墜ちてしまったら相手の思うつぼだろう。
「い、一応ルールは守ってくれてるから」
ルール。家にある金と写真には絶対に触らないこと。彼女はコクコクと頷いた日からこの約束をずっと守っている。
「お前、自分勝手だろ!」
「まぁ、恋だからね」
その時、どこかでハクシュン、と音がした。




