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君の御守り


白い部屋に僕と君の二人。ずっと前から言おうと思っていた言葉が臆病になって隠れてしまった。みんなより早く死んでいく彼女は入院中ずっと前にあげた御守りを大事に握りしめていた。

「もうすぐ春だね」

「そうだね。早く新婚旅行したいね」

「…いや、僕たち結婚してないから」

「いいじゃん、私のこと好きなんでしょ?」

お互いに相手のことをどう思っているのかは言わない、それは暗黙の了解として墓場までしまい込むもんだとばかり…。

「言っちゃだめだよ」

「…そうだね、泣きたくなっちゃうね」

「えーと、そうだ、願い事とか、何かない?あったら教えてよ」

もっと一緒にいたい。けれどそれは叶わないから、せめて七夕の日のように君とクスクス笑ってたい。

「世界のいろんなところを見てみたい」

「さっきと変わらない気が…」

「違うよ、一人でもかなえられることだから」

「うーん、まいったなぁ」



写真でしか見たことのないオーロラ、宇宙からも見える万里の長城、世界一高い山エベレスト。長い時間をかけて本当にいろいろな街や海、地域食も腹を壊しながら歩いている今日。背中に背負っているリュックには君にあげたはずの御守りが入っている。


君が死んだ後、僕はすぐに死ぬ予定だったのに。どうせ将来の夢もなかったし、このまま一人で生きていくのも嫌になっていくと思い込んでいた。それなのに君があんなこと言うから、こんな美しい世界に魅了されてしまったじゃないか。

」人の温もりが恋しい夜、僕たちが好きだった歌を歌っていたら流れ星が見えた時があってね。ちょっとだけ生きていることがキラリと光る瞬間があったんだ。悲しいこと苦しいことばっかりだよ。楽しいこと嬉しいことなんて滅多に起きないけど、次に会うときの土産として、もう少しだけ生きてみようと思う。



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