バースデーソング
「ブルーハーツのTRAIN TRAINの歌詞で~世界中に定められた♪ってあるじゃん?そこの「あなた」をAさんの名前で歌おうと思うんだけど…」
放課後の部活動もサヨナラを連れてくる頃、俺はバンド仲間に「あ、そういえば…」という思い付きのように話し始めた。
サプライズの誕生日パーティー、同じクラスの委員長のAさんを喜ばせようと女子たちが首脳会議した案の中に俺たち軽音部に何か弾いてもらおうか、というものがあり。女子特有の「いいじゃんそれ、やってよ!やってよ!」の勢いに無理やり押し込まれて今の俺たちがいる。確かに日頃から世話になっていると思うが、上から目線で話してくる彼女は俺の嫌いなタイプの女子だった。
かと言って、引き下がるのも男の何とやら。部屋の換気も騒音対策の為、窓一つ空き放てずにギターをギュッと抱きしめている。汗ばんだシャツがベトベトくっ付いて不快だったから、何となくその場の思い付きで言ってみた冗談だった。
「お!?それいいんじゃね?」
「まぁ俺らはコーラスだし、ぶっちゃけどうでもいいわ」
「そ、そうか…」
俺はギター床に置くとアイツがどんな顔するか想像してみた。もやもやと予想できたのは嫌がっている表情、少し引いてる顔。
「あーもう!今日は終わり!」
熱い場所で考えようとしても答えは蒸気となって消えてくだけだ。自販機のカルピスソーダが俺を待っているはず。その後、へとへとの俺たちは本番を前に青春の一ページとして、夕暮れと共に解散していった。
バンドのことではありません。
俺たちは見世物だった。女子はこの後カラオケや喫茶店で女子トークを昨日のように繰り返す予定だと聞いた。放課後、男子がバンドやるから見ていこうよ的な雰囲気で、ライブ特有の盛り上がりもあったもんじゃない。それくらい承知で今回の頼みごとを引き受けたんだ。
いつもは黒髪ロングの眼鏡の委員長も、今日は後ろで結んでポニーテールの姿だった。胸の中で「乗ってますねぇ」と煽りを呟いた。
ジャカジャーーーン!
まだ少しざわつくクラスの人々。担任の先生も何故か部屋の隅で腕を組んでいる。視線がマイクスタンドに集まる。ドムッダムッとドラムの控えめな音、それに続くギターのアルペジオ♪
「栄光に向かって走る~♪…
誰一人飛び跳ねたりも手拍子もしてくれないけれど、みんな足でリズムをとっていたりして悪くない気分だ。
世界中にある沢山の祝日があるけど、Aが生きている今がすごいと俺たちは思う
世界中にあるタワーや遺産、それよりもAのいる今日一日が大事なんだ
弾いている時、彼女の顔を見た。少し笑っていて、少し泣いていた。そして俺は少し嬉しかった。
アンコールは先生に止められて不完全燃焼に感じることもあったけれど、小さなサプライズは効いたみたいだった。
その後、彼女から告白されて初めて知る感情なんかの話は別のなんとかというやつで…。
それでは、バイバイ。




