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サッカーボーイミーツガール


ストレッチを十分して、グランドでミニゲームを数回こなしていく。グランドがあって監督がいて、文句も全くない。だがしかし、俺は無性に腹が立っていた。

「最強のプレイヤーがアノ高校にいる」

中学の時、この担任の一言だけで進路を選んだと言っても過言ではない。勉強も余裕を持って試験までに挑んで、難なく合格して。いざサッカー部に入部したのだが、いなかった。確かに先輩たちのスキル、メンタルや組織的な守備は全国でも程々戦える。でも「程々」なのだ。恐らくキープ力は自分が一番で、体力が三年と同じくらいだと考えると、この中に最強のプレイヤーは存在していない。まんまとあの担任に踊らされたのだ。

ストレスをサッカーボールに容赦なくぶつける。ぐーんと伸びていくボールを嫌々追いかけていくと、マネージャーの姿が見えてきた。

「あのーすいませーん」

ビュン!と鋭いカーブのかかったボール。一瞬の出来事に頭が追いつかないが足元にボールが届いた時にはマネージャーはスタスタと何処かへ歩き出していた。ボールの上に足を乗せ、クイッと素早く後ろに引いてそのまま浮かす。ボールの重心から少し左を蹴ることを意識して…

「蹴る!」

マネージャーが丁度、ゴール裏を通る瞬間を狙って、ボールはそのまま鋭く曲がりながらゴール隅へ!

目と目が合ったが、それだけで彼女は監督の元へ行ってしまった。つい頭を抱えてしまうが自然と笑いがこぼれてきてしまった。



その日から何度もマネージャーの元へ訪ねたが監督や先輩たちに「やめといた方がいい、ほかにもいい女はいる」などと忠告されてしまった。本人に直接会えたのは数日後だった。



「すみません」

髪は短く、体も女子の平均といった感じで見た目はフツウだと思った。

「はい、何ですか?」

「えっと、変なこと頼んじゃいますけどいいですか?」

「あーはいはい、わかりました。先にグランドへ行って待ってて」

「え?あ、はい」

言いたいこと言う前に相手の方から挑まれてきた?ことに少し驚きと、普段から道場破りみたいな人がいる、つまり彼女が本物であるという証明。QED。


グランドで立っていたら、校舎から騒がしい声が聞こえてきた。恐らく俺がコケるところを笑いに来ているのだろう。だが俺にとってアウェーはホーム以上に燃えるタイプの人間なので興奮してきた。数分後ボールを持って現れた彼女に歓声の拍手が起こった。

「待たせちゃったね」

「いえ、面倒なことお願いしちゃってすみません」

「…今日は五分内に私からボールを奪って持ち続けていたら、君と付き合ってあげる」

身体が少し強張る。話が予想外の方向へ進んでいるのを感じた。

「い、いや、あの違います!ただ純粋に」

「はいはい、じゃあよーい…スタート!」

そう言ってストップウォッチをスタートさせると左右にボールと体を揺さぶり始めた。体格差なら圧倒的に俺が有利だし、トップ下がいい、という主張が受け入れられなかった今まで。センターバックを何年やってきたと思っているんだ!

すかさず彼女はフェイントをかけてきたが、粘って張り付く。

「へえ、やるじゃん」

「…どうも」

時間は五分。一回ボールを奪ってしまえば自分のペースに持っていける。時間稼ぎならいくらでもしてきたから勝つ自信は十分。

ボールが股の間を通って抜かれてしまう、かと思いきやそうはいかせない。わざとさりげなくアピールした瞬間にかかって笑ってしまいそうになる。

「な!?」

彼女とは反対方向へ距離を取る。…残り時間は三分といったところか。それからお互いに奪われてキープしてを繰り返すが、ピピッとストップウォッチが鳴った。校舎からはパチパチを大観声が沸き上がっていた。

「お、お疲れ様でした」

「………」

「あの、勘違いしてると思うんですけど。別に付き合わなくていいですよ?」

「……はあ?」

「俺はただ、先輩とサッカーしたかっただけなんで」

校舎からは手のひらを反すように酷いブーイングが降ってきた。きっと彼女はこの学校のマドンナ的な存在だったのだろう。確かに顔立ちは少し整っていて綺麗だとは思う。男としてちゃんと見ているが、サッカーと比べるとまだまだ。

「次は負けないから」

振り返ると唇噛みしめた彼女がいた。

「次も負けません」

足元のボールを、投げキッスをするようにパスをした。




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