第3話〜遭遇
書かせていただきますとまでたどり着けるのを祈っています。いよいよ 怪異と蘭が遭遇します。思い描いていた戦術の通りに物干し竿をいました 鍋蓋の盾を構えながら。
ドアノブに手を掛けた瞬間、指先から冷たい汗が吹き出た。
イヤホンから流れる爆音の重低音バス・ドラムが鼓膜を叩きつけているはずなのに、あの「ずん、ずずずん」という地響きのような震動は、確実に足の裏から這い上がり、膝を抜け、背骨をガタガタと揺らしている。
音じゃない。これは空間そのものが震えているのだ。
蘭は鍋蓋を胸の前に構え、物干し竿をぎゅっと握り直した。ガムテープで固めた雑誌が擦れ合い、カサカサと情けない音を立てる。
ゆっくりと扉を引く。
隙間から覗いた廊下の先、薄暗いリビングの真ん中に、それはいた。
姿ははっきりと見えない。ただ、そこだけ空間がぐにゃりと歪み、黒い煤のようなモヤが生き物のように蠢いている。そして、モヤが脈打つたびに、あの心臓を素手で掴まれるような重低音が響いてくるのだ。
怪異が、ゆっくりと蘭の方を振り向いた――気がした。
「……こっちを見ろよ」
蘭は爆音に負けないよう、声に出して自分を鼓舞した。恐怖を怒りに変えるように、鍋蓋の盾を敵と自分の間に構えながら、物干し竿の先端を容赦なくその中心へと突き出した。
お呼びになっていただきました 誠にありがとうございました。




