↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lycorisーリコリスー  作者: 小鳥遊 千夜
第一章 黄泉への旅路編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/25

第拾巡 現世へ戻る方法は、一つだけあります



「あなたは亡(・)者(・)で(・)は(・)な(・)い(・)。」



「……え?」

 思わず間の抜けた声が漏れる。


「あなたはまだ寿命を終えていない、生(・)者(・)。

 本来、ここへ来るべき存在ではありません。」


「……は?」

 頭が真っ白になる。


 俺が生者?


 じゃあ今までの話は何だったんだ?


「いやっ、でもよ…俺、確かに鉄道事故に巻き込まれたんだよな!?……あれはなんだったんだ!?」

 俺は意味が分からず尋ねる。


「…お前が鉄道事故に遭ったのは事実だ。

 ……だが、手術によって一命は取り留めている。」

 宋帝王(そうていおう)が手元の書類を観ながら俺に質問に答える。


「白、説明していただけますね?」

 閻魔の視線が静かに白へ向けられる。


 その穏やかな一言に、法廷中の空気が凍り付いた。


「そ、そんなはずありませんわ!」

 白が目を丸くし、慌てて俺を指差した。


「だってあなた、死んだ魚みたいな目をしていましたし!

 魂の輝きも今にも消えそうでしたし…てっきり”|後藤八兵衛(ごとうはちべい)”さん、九十歳だと……!」


「誰だよ、それ!!」

 思わず全力でツッコむ。


「俺が九十歳のジジイに見えるか!?

 俺は”真城空(ましろそら)”!、十八歳だ!!」


「そんなの分かりませんわよ!死神は外見なんて見ませんもの!」

 魂の輝きで判断しているんですから!」

 白も負けじと言い返す。


「あなたの魂、もうおじいちゃんみたいにヨボヨボでしたわよ!」


「ヨボヨボ言うな!俺はまだ十代だぞ!」


 ついさっきまで神聖な裁判が行われていたとは思えないほど、

 小学生の口喧嘩みたいになっていた。


「…………。」

 十王たちも呆れたように二人を眺めている。


「……白。」

 閻魔が静かに名を呼ぶ。


「は、はいっ!」

 白の背筋がぴんと伸びた。


「後で詳しく事情を聞きます。」


「……はい。」

 今にも泣きそうな声だった。


 その様子を見て、俺はようやく状況を理解する。


「ってことは……。俺は勘違いでここまで連れて来られたってことだよな?」


「だったらさっさと元の世界へ帰してくれよ。」


「そ、それが……。」

 白が視線を泳がせる。


「その……ちょっとだけ問題がありまして……。」


「問題…嫌な予感しかしないんだが……?」


 俺の問いに答えたのは白ではなく、閻魔だった。


「困りましたね。」

 静かな声が法廷に響く。


「三途の川を渡る船は片道運航です。

 一度こちら側へ渡った魂を、同じ方法で現世へ送り返すことはできません。」


「…………は?」


 数秒、思考が止まる。


「いやいやいや!待ってくれ!

 間違えて連れてきたのはそっちだろ!?」


「返品できませんって通販じゃないんだから!」

 思わず声を荒げる。


「も、申し訳ありませんわ……。」

 白は申し訳なさそうに小さく肩をすぼめていた。



「確かに、この件はこちらの過失です。

 生者を誤って冥界へ導くなど、本来あってはならないことです。」


 閻魔は少しだけ目を伏せ、そして静かに俺を見つめる。


「真城空。……現世へ戻る方法は、一つだけあります。」


「……本当か?」


「ええ。それは転生の門をくぐることです。」

 閻魔はゆっくりと告げた。


「転生の門……?」

 俺は思わず首を傾げた。


「それって、生まれ変わるってことだよな?

 せっかく帰れるのは嬉しいけど……赤ちゃんからやり直しは勘弁だぞ?」


「その心配はいりません。あなたは通常の転生とは事情が異なります。

 肉体がまだ現世に存在していますので、魂を元の器へ戻すだけで済みます。」

 閻魔は小さく微笑む。


「……ふぅ。よかった……。」

 思わず胸を撫で下ろした。


「白…転生の門まで案内して差し上げなさい。」

 閻魔が静かに呼びかける。


「かしこまりましたわ。」


「それと、この件については後ほど詳しい報告を頂きますよ。」


「……はい。」

 白はしょんぼりした子犬みたいな顔で頭を下げた。


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。