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【完結】神の依り代である私が、幸せで平凡な生活を味わい始めたのは、特徴的なピンク色の髪をした少女と出会ってからのことでした。  作者: Sakusaku


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第6章 : 不知火姫子 3

 

 006


 一週間後の午後、姫子はいつもの生活を続けていた。何も変わらない日々だった。


「父上と母上が一週間留守にするって、本当ですか?」


「もちろんです、若様」


 今、台所は使用人たちでいっぱいだった。彼女たちは床に座り、その前に姫子が小さな椅子の上に立っていた。


 あと二日で撫子が実家へ帰る。使用人頭の七波は、撫子ともう二人の使用人を市場へ食材の買い出しにやり、送別会を計画していた。


「小さな宴会はどうでしょう? みんなで輪になってご飯を食べるのとか」


「それは少し派手すぎませんか、若様」


 一人の使用人の少女が反対した。


「そうね……他に案はあるかしら?」


 彼女は皆を見回し、入り口の角に座る別の使用人の少女に目が止まった。


「すぐみさん!!!」


「記念の贈り物はどうでしょう?」


「おお……いいわね。私も何か編み物を一つ作ってあげたいわ。みんなも何か贈ってあげたら?」


 その場にいた全員が盛り上がった。誰かが実家へ帰る時の送別会を計画するのは初めてではなかったが、誰かが帰省するたびに開催されていた。そしてその発案者の大半は姫子だった。

 彼女にとってこの使用人たちは、ずっと世話をしてくれた家族同然だった。このような宴会は、彼らの日々の苦労に対する感謝の表れだった。


「あ、そういえば撫子には娘がいたわね。絵本でも買ってあげたら?」


「そうだな……あの子の息子にはけん玉でも買ってやろうか」


「ああ、いいね」


 七波が皆を制し、姫子の顔を見た。


「撫子は朝に出発します。若様、寝坊なさらないでくださいね」


「うん……」


 その時、一人の使用人が慌てた顔で駆け込んできた。


「撫子が帰ってきました!!!」


 それを聞くなり、全員が立ち上がり、それぞれの仕事を始めた。


「あら……若様、ここにいらっしゃったのですか。何かご用ですか?」


 両親がいない時、姫子がここに来るのは珍しいことではなかったので、撫子は特に驚かなかった。


「いつものように、遊びに来たのよ」


「ちょっと待ってください……ここは台所で、遊び場ではありませんよ」


「ふふ、今日は何を買ってきたの?」


 撫子は紙袋を開けて姫子に見せた。今日は両親がいないので、普段あまり食べない魚や食材をたくさん買っていた。


「若君様と奥方様がいらっしゃらないので、普段あまり召し上がらないメニューを作ろうと思いまして」


「……撫子」


 あの人たちはいつも色々なことをしてくれた。私も贈り物には本気を出さなくては。


「撫子! 早く野菜を切って!」


 七波が叫んだ。


「若様は食堂でお待ちください」


 姫子は頷いて台所を出た。


「いいわねえ。私の子供たちが若様みたいにいたずらっ子じゃなくてくれればいいのに」


 撫子は疲れたような顔で言った。


「よく言うわね。あなたの子供はまだ十歳でしょう? 若様はもう十八よ。子供がいたずらしないのは子供じゃないわ」


「七波さんは子供がいないからわからないのよ。二人育てるのは本当に大変なの」


「大変だってわかってるのに、よく頑張って産んだわね」


 七波が頭を掻くと、撫子は少し照れくさそうに笑った。


「なんだか心配になってきたわ。私がいなくなったら代わりの子が若様に振り回されて辞めていかないか」


「ええ……七波さん、新しい子のことは何か知っていますか?」


 一人の使用人がふと思い出したように言った。


「若君様たちもよく覚えていないみたいだけど、手紙でわざわざ呼ぶくらいだから、普通の子じゃないでしょうね」


「まあ、それほど心配しなくても大丈夫かしら。若様と上手くやっていけるといいけど」


「撫子……」


「さあ、仕事を急ぎましょう。若様を待たせるのは悪いわ」


 食事が終わると、姫子は床についた。


「とっても美味しい!!! お肉なんて久しぶりで、食べるたびに夢を見てるみたい」


「何をおっしゃってるんですか……全然わかりませんよ」


 嬉しそうな顔をしていたのもつかの間、彼女は再び寂しげな表情に戻った。


「私も毎日こんなご飯が食べたいわ。撫子が実家に帰ったら、幸せな家族と再会できるのに……私は」


「若様……」


 撫子はすぐに彼女を抱きしめた。温かく、精一杯の慰めだった。


「最近は父上と母上があまり家に帰ってこないの。自由な時間は増えたけど、二人と他愛もない話がしたい」


「…………」


 でも私がここにいますよ——撫子はそう言おうとしたが、口に出さなかった。


 この子を長女のように思っているのは本当だが、彼女は姫子の母ではない。ただの側仕えに過ぎない。何年一緒にいようと、どれだけ絆が深かろうと、その事実は変わらない。


 若い女性はただ、泣き出しそうな少女を抱きしめることしかできなかった。


「若様……」


 そして彼女は人生で最も無謀な決断をした。

 両親が必死に隠してきた秘密を暴く決断を。


「外へ出てみませんか……?」


「すごい……これが夜の外なの?」


 撫子は十八年間、家に閉じ込められ、木の一本、草の一本、外の新鮮な空気さえ触れたことのない少女を、外へ連れ出した。


「きれいでしょう? もうすぐ夏ですね。空の星がとてもよく見えます」


 少女は頭上の光景に魅入られ、しばらく言葉を失った。まるで星に心を奪われたようだった。


「正直に言うと……『すごい』という言葉では足りないわ」


 撫子は無邪気な少女が初めて星を見る姿に、腹を抱えて笑った。


「もっとすごいものが他にもありますよ、若様」


「えっ……まだあるの!?」


 二人は階段を下り、大通りへ出た。そこには星空に劣らないほど美しく、胸を高鳴らせる光景が広がっていた。


 二人は深夜にもかかわらず人通りが多い大きな商業地へ向かった。少女が今まで触れたことのない色の光が染み渡る世界だった。


「若様は私の腕をしっかり掴んでいてくださいね。ここは人が多いので、はぐれたら大変です」


 それを聞いた姫子は撫子の手を強く握り、二人はこの商業地の賑わいの中へ入っていった。


「あら! 誰かと思ったら撫子じゃないか。こんな時間に夜食かい?」


 二人が止まったのは屋台だった。そこでは遊び心のあるおじさんが、蕎麦をこねているところだった。


「こんばんは、庄十郎さん。今夜は知り合いを連れて夜食に来ました」


「おお……これはこれは、美人さんじゃないか。もしかして君の隠し子かい?」


「違いますよ。これは私の姉の娘です。この子は田舎から出てきたばかりで、都のことはよく知らないんです」


 撫子は姫子を守るためにそう嘘をついた。姫子は何も知らずにその話を合わせた。


「へえ……君に姉がいたなんて知らなかったな。嬢ちゃんは何がいい?」


 庄十郎が姫子を見ると、姫子はびくりとした。


「あ……えっと……」


 その時、もう一人の客が屋台に座った。


「あ、おじさん。私、綺麗なお姉さんと照れ屋のお姉さんに蕎麦二つ。お願いね。私はうなぎ丼で」


「わかったよ、嬢ちゃん!」


 二人はピンク髪の珍しい少女を、少し驚いた顔で見つめた。


「あの……君は……」


「はじめまして、先輩」


 撫子は驚きのあまり言葉を失った。何か聞こうとしたが、少女は人差し指を唇に当て、親指で庄十郎を指した。


「ありがとう……えっと……」


「璃々緒よ。更屋敷 璃々緒。仲良くなりましょう?」


 璃々緒は姫子に優しい笑顔を向けた。撫子は彼女を信頼できると感じた。


「え……仲良くなるって、友達になるってこと?」


「うん! そうよ。周りに同い年の子があんまりいないから。同い年なんだし、友達が一人くらいいてもいいでしょ」


「友達……そう……」


 それは少女が今まで知らず、触れたこともない言葉だった。四歳の頃、使用人たちの会話から聞いたことはあったが、それが何を意味するのかわからなかった。


「できたよ! 蕎麦二つ、うなぎ丼一つ!」


「さあ、どうぞお二人さん。熱いうちが一番ですよ。いただきますね!!」


 二人は顔を見合わせて肩をすくめ、小さく笑った。


「「いただきます!」」


「美味しい!! これが蕎麦なの!? 毎日食べてるご飯よりずっと美味しい!!!」


「ははは、何だよ嬢ちゃん!! 初めて食べたみたいに言うなよ。まあ、俺の腕は名人級だからな」


「いつも通りですね、庄十郎さん」


「なんだと、この野郎!!!」


「うん……家で私が作るのと同じくらい美味しいわ」


「あれは褒めてるのかけなしてるのか」


 璃々緒は姫子と話し始めたが、主である少女が蕎麦を美味しそうに食べているのを見て邪魔をせず、うなぎ丼を食べ続けた。


 三人は二時間ほど食事と会話を楽しんだ。会計の時、撫子が払おうとしたが、璃々緒が割り勘が公平だと言い、全員で割り勘にした。


 三人は人通りが少し減ってきた商業地を歩いた。


「あの……撫子さん」


「なんですか、若様」


 姫子は足を止め、一軒の屋台を見つめた。どうやら甘いお菓子を売る店のようだった。


「あれは何? 子供たちがたくさん並んで買ってるわ」


「ああ……あれはまんじゅうです」


「まんじゅう? 聞いたことないわ」


 璃々緒は少し眉をひそめた。『本気でまんじゅうを知らないの? 親はどんな育て方をしたらこんな子になるんだ』——彼女は幼い頃から外の世界を知り、多様な人々と出会ってきた。だから銀のスプーンをくわえて生まれたお嬢様が、こんな庶民的なお菓子を知らないことに驚いた。


 璃々緒は知らなかった。姫子の人生がどのようなものか知らなかった。この家族が社会の闇でどのような儀式を行っているかも知らなかった。彼女が知っているのは、姫子が裕福な家の娘で、別の豪商と政略結婚させられるということだけだった。


 そして彼女は、幼馴染の池田がこのすべてを隠していることも知らなかった。彼は密輸商人であり、誰にも知られてはならない秘密を知っていた。だからこそ幼馴染にさえ隠していたのだ。なぜ隠すのか、彼自身もよくわかっていなかった。


「小麦粉をこねて丸め、中に餡を入れて揚げたお菓子ですよ」


 璃々緒は明るい表情で答えた。


「食べてみたいな……いい? 撫子さん」


「ええ、いいですよ」


 それを聞いた姫子はすぐに列に並びに行った。二人は後をついて行き、姫子が「早く早く」と呼んだ。


「璃々緒ちゃん……ね。君が『先輩』って呼んだ子が……つまり君が……」


「はい……哲近様から手紙で雇われて、代わりに仕えることになりました」


 彼女は懐から手紙を取り出して撫子に見せた。撫子がざっと目を通すと、本物の手紙だとすぐにわかった。


「でも君、まだ幼いのに……こんな仕事、大変じゃない?」


「大変ですよ。でも今頑張らないと、後が苦しくなりますから」


「そうね……」


 その時、饅頭を買った子供たちが喧嘩を始めた。姫子はそれを聞き、二人に近づいた。二人が止めるのも聞かず、彼女は進んでいった。


「ちょっと待ってよ、私が買ったんだから私のものよ!!」


「バカじゃないの!! それは私の金で買ったんだから私のものよ」


「はあっ!! でも一部は私の金でしょ!」


 並んでいた子供たちが文句を言い始めた。


「またこの二人だ。いつも喧嘩ばっかり」


「そうだよ。いい加減にしろよ。一個の饅頭で」


「ねえ二人とも、どうしたの? お姉さんに話してみない?」


 姫子は璃々緒の話し方を真似て、優しい笑顔で二人に声をかけた。撫子が近づこうとしたが、璃々緒に止められた。


「こいつが一個全部食べようとしてるのよ。私のお金なのに」


「ふざけないで!! でも一部はお前の金だけど、全部私のものよ!!」


 二人の喧嘩は激しくなり、頭をぶつけ合い、しばらくすると姫子の方を向いて指を差した。


「「こいつ/やつが悪いんだよ!!!」」


 姫子は考え込むように立っていたが、揚げたての饅頭をぴったり半分に割り、二人の手に渡した。


「あ……一個しかないから、分けっこしよう」


「いらない!!!」


「少なすぎ!! 一個丸ごと食べたいのよ」


 周囲に声が響き渡り、人々は姫子が子供たちに暴力を振るうのかと思った。

 しかし違った。


 姫子は手を叩いて二人の注意を引き、二人を抱きしめた。


「ねえ……こんなことで喧嘩するのはよくないよ。知ってる? 二人は友達なの?」


 抱擁を解き、二人の顔を優しく見つめた。それは撫子や使用人たちに向ける優しい目だった。二人はその優しい瞳を見て、思わず頷いた。


「そう……友達なんだね。実はね、お姉ちゃん、生まれて初めて友達ができたの。一人だけ、たった数分しか一緒にいられないけど、失くしたくない。だからお姉ちゃんは、友達関係をできるだけ長く続けたいって自分に言い聞かせてるの。ずっとじゃなくてもいい、せめて長く続いてほしい。喧嘩したら仲が壊れて、寂しさがまた戻ってくるよ。二人はそんな風になりたいの? 一緒に走り回った時間、笑った時間、一緒に甘いものを食べた時間……一個の揚げ饅頭で全部なくなっちゃうの?」


 二人は見知らぬ優しいお姉さんの穏やかな瞳を見つめ、互いに申し訳なさそうに見つめ合った。


「わかったら、ちゃんと謝りなさい……心にわだかまりが残らないように」


「……ごめん。本当はお前の金だったね。私、ただ饅頭が食べたかっただけ」


「……私もごめん。お前の金がなかったら饅頭買えなかったよ」


「やった! これでいい!! 二人とも偉いわ! おじさん!!!」


 彼女は先ほどまで事件を見ていた饅頭売りのおじさんに、明るい声で呼びかけた。


「はっ!……あ、あの……何か?」


「私の番が来たら、餡入り饅頭を十個、この二人にください!」


「「えっ!!!??」」


「わかりました」


 すると列に並んでいた十人ほどの子供たちが、事件を全部見ていた目で羨ましそうにこちらを見ていた。中にはひそひそ話す子もいた。それを見て姫子は再びおじさんを呼んだ。


「おじさん、饅頭は何個くらい残っていますか?」


「百個以上はあるかな。どうして?」


「この子たちに一人五個ずつ、全部買います。いいですか、撫子さん」


 撫子は小さく頷いた。


「「「「「「えええええっ!!!??」」」」」」


「もちろん、今日この商業地に来ている子供たちもね。好きな味の饅頭を、おじさんに注文していいよ!!!」


 その後、今日この商業地に来ていた子供たちは、饅頭屋の列に長く並んだ。


「ありがとう、お姉ちゃん!!!」


「饅頭ありがとうございます、お姉ちゃん」


「美味しく食べるね!!!」


 今日来た子供たちは皆、幸せそうな笑顔で家路についた。饅頭を受け取った皆が、姫子に次々とお礼を言った。


「饅頭、思ってたより美味しいね。外はカリカリ、中はふわふわで、餡も甘くて美味しい」


「ちょっと大げさすぎよ」


 璃々緒は少し呆れた顔で答えた。


「うん……今日持ってきたお金、全部使っちゃったわ。せっかく若様に色々食べさせてあげたかったのに」


「本当にごめんなさい」


「あ、もうこんな時間……そろそろ帰りましょうか」


 撫子は姫子を長く外に置いておけないことに気づいた。


「そうね。若様、帰りましょう」


「うん。じゃあ璃々緒……またね」


 姫子は小さく手を振った。璃々緒は大きく手を振って微笑んだ。


「またね! またこうして遊べるといいね」


「うん!!!」


 二組は手を振り合い、別々の道を歩き出した。


 璃々緒は今、言葉にできないほど安堵していた。


 ……最初はわがままなお嬢様かと思ったけど、意外と良い子だった。


 でもさっきの言葉、どういう意味? 「生まれて初めて友達ができた」って……それに、まるで外の世界を初めて知ったみたいな態度だった……


 考えすぎかな


 少女は人ごみの中で考え続けながら歩いた。

 幼馴染が隠していた真実がどれほど残酷なものか、彼女はまだ知らなかった。


 一日はあっという間に過ぎ、撫子が二年ぶりに実家へ帰る日が来た。彼女はちょうど故郷へ商品を運ぶ商人の一団と共に旅立った。


 その日、姫子は自分で早起きし、使用人たちと撫子と共に鍋を食べ、寺の門の前で見送った。


「体に気をつけてくださいね、若様。私がいない間は、代わりの子と仲良くしてください」


「はい……撫子さんも道中気をつけてね。あ……朝は寒いから、この着物をかけて。自分で縫ったの」


 撫子の顔が喜びに輝いた。彼女は主に最後の抱擁をした。


「ありがとうございます、若様。本当にありがとう」


 使用人たちは目の前の温かい光景に目を細めた。


「撫子、早くしろ。もう出発するぞ」


「呼ばれちゃったわ。行きますね」


「はい……来年また会いましょう」


「道中気をつけてね!!!!」「時空くんにけん玉忘れないで!!!!」「お弁当食べてね!!」「来年会おうね!!!!」「手紙ちょうだいね!!!!!」


 撫子は階段を下りながら皆に手を振り、商人の一団と共に姿を消した。


「私は夕方まで寝るわ。父上と母上が帰ってきたら起こしてね」


「はい」



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