↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】神の依り代である私が、幸せで平凡な生活を味わい始めたのは、特徴的なピンク色の髪をした少女と出会ってからのことでした。  作者: Sakusaku


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/17

第11章 : 長野 恵美

 010


「さあ、入って。自分の家だと思ってくつろいでね」


 数日後、璃々緒はもう一人の友達の家に姫子を連れてきた。彼女が病気だと聞いて見舞いに来たのだ。到着するとすぐに二人の腕を掴んで家の中へ引っ張り込んだ。


「まさか君がこんな風に来てくれるなんて。それに友達も連れてきて」


 彼女は姫子の顔を見て温かい笑顔を向けた。まるで病人のようには見えなかった。メグミは無理に元気なふりをしていたが、二人はそれほど心配していなかった。実際、彼女は苦しみながらも死に近い状態だった。


「こちらも同じよ。璃々緒の友達に会えるなんて」


「うんうん。私はメグミ。長野 メグミ(ながの めぐみ)。見ての通り、この家の主よ」


「姫子よ。不知火(しらぬい) 姫子(ひめこ)。あまり世間知らずで、変なことをしたらごめんなさいね」


 璃々緒は姫子が自分の苗字を明かしたことに小さく驚いた。特に長野の家の中で。しかしメグミだけなら大丈夫だろう。家の主人はいないのだから。


「それで、例の派手な兄ちゃんは?」


「今は故郷にいるわ。急用で来られないって」


 正確に言えば、今は安全な場所へ逃げているところだった。


「なるほどね。あ、そういえば数日前にお母さんが本を買ってきてくれたの」


「本?」


 するとメグミは三人だけに聞こえるように小声で言った。


「うん……外国の本よ。ちょっと読んでみたんだけど、すごく面白いお話だったわ」


 姫子はなぜメグミが本の話で小声になるのかわからなかったが、璃々緒は理解していた。


「じゃあ私の部屋に行きましょう。そこで本がいっぱいあるのよ」


「これよ」


 メグミは本の山を少女たちに見せた。彼女の部屋を見ると、読書が大好きだとわかる。部屋の周りに置かれた木の棚は本でいっぱいだった。


 それを見た姫子の目が輝き、すぐに一番上の本を開いた。しかし——


「読めない……」


 中には見慣れない曲がりくねった文字がぎっしり書かれていた。彼女が毎日読んだり書いたりする文字とは全く違っていた。


「あはは、ごめんごめん。つい忘れてたわ。君たちはこの人たちの言葉が読めないよね。じゃあ私が読んであげるわ。お母さんが昔からこの人たちの言葉を教えてくれてたの」


「お願いね」


 メグミは姫子が開いた本を取り、最初のページを開いた。


「あなたは魔法を信じますか? 私にとって魔法は素晴らしいものです。望むものを何でも叶えてくれます。ただ、多くの人はそれを魔女が呪いや殺人に使う異端のものだと見なします。それはきっと教会の誤った教えのせいでしょう」


 三人は彼女が本の内容を読み聞かせるのを、じっと聞いていた。


 最後には本当に眠ってしまい、二人が起こした。父と母がもうすぐ帰ってくる時間だったからだ。二人はいつもこんな風にしていたので慣れていた。日が経つにつれ、姫子は璃々緒がずっと彼女に触れさせたかった日常に、少しずつ近づいていった。


 夜になると、姫子は一ヶ月間の出来事を「母」のような存在である人に手紙を書いた。


 姫子から撫子への手紙


 撫子さん、こんにちは。お元気ですか? 一ヶ月しか経っていないのに、本当に撫子さんのことが恋しいです。今、璃々緒やみんなも元気です。最近は友達がたくさんできました。璃々緒、クロエちゃん、マーベルちゃん、メグミちゃん。一ヶ月でこんなに友達ができるなんてすごいでしょう?


 最近は父上と母上があまり家にいらっしゃらないので、いろいろなことを試してみました。お菓子を作ったり、本を読んだり、絵を描いたり、和歌を書いたり、太夫のお披露目を見たり……撫子さんは、饅頭を買うときにわがままを言っていた子供たちのことを覚えていますか? 最近は彼らとよく遊びます。主に鬼ごっこやかくれんぼです。夏になると子供たちは虫取りをします。私も大きなカブトムシを捕まえました。名前は金時(きんとき)です。かっこいいでしょう? あ、そうそう、みんなで川遊びもしました。子供たちがいつも誘ってくれるんです。


 来月は璃々緒の幼馴染が浅草に来るそうです。でも璃々緒はなぜか私に会わせたくないみたいです。その頃にはみんなで花火大会に行きます。すごく楽しみです。今までは音だけ聞いていたけど、本物を見られるんです。でも父上と母上がいるかどうかわかりません。でもいらっしゃっても、璃々緒が逃げ出す方法を見つけてくれますよ。


 本当はもっと書きたいけど、紙が長くなりすぎてしまいます。また来年会いましょう。機会があったらまた手紙を書きます。時空くんとマエちゃんによろしくお伝えください。


 愛と想いを込めて 姫子




 翌日の午後遅くから夕方前、不知火顕正寺。


 馴染みの顔も、初めての顔も、整然と座り、目を閉じて瞑想し、奇妙な祈りを聞いていた。ある者は真剣に聞き、ある者は恍惚とした表情を浮かべていた。哲近と直美が戻ると、娘が儀式の準備を整えていた。二人は着替えてから、神託を伺う儀式をいつものように行った。今回は信者が前回より多かった。二人はこのことを外部に漏らしてはならないと信者に言い含めていたが、噂はいつも広がるものだった。


 しかし二人は気にしていなかった。むしろ老いた者たちの盲信に感謝さえしていた。この儀式は姫子が八歳の頃から行われており、子供が命令を理解できる年齢だった。


「皆様……儀式を始める前に、お知らせがあります」


 村人たちがざわついた。直美が手を叩いて静かにさせた。


「このところ、皆様もご存知かと思いますが、長野家の末娘が原因不明の病に倒れました。当主の坪見様も日本中の医師を招いて治療を試みましたが……」


 二人は悲しげな顔を作り、信者たちに嘘を語った。


「日本のどの医師も彼女を治すことはできませんでした。そして神様の神聖なる力により、本日の夕方、私たちは坪見様とご令嬢を当寺に招き、浄めの儀式を行うことになりました。昨夜、神様と相談を済ませました」


「そのため、今日の神託は皆様全員にお答えできないかもしれません。神様と皆様にお詫び申し上げます。私たちのような信心深い者が、皆様の問題より私事を優先してしまいました」


 信者たちは哲近の言葉を素直に受け入れた。そして儀式に参加しないことを申し出る者も現れた。そのようなことが起きると、信者の信仰は倍増した。


 長野家の者がここに来ると聞いて、璃々緒はすぐに眉をひそめた。


 原因不明の病の少女……まさかメグミちゃん? 璃々緒は昨日姫子を連れて会った明るい少女の顔を思い浮かべた。


 しかし彼らはこんな治療法を信じていないはずだ。長野家は何を考えているのだろう。


 長野家の社会的な役割は金融業で、税金の管理や貨幣の鋳造を監督していた。一時期は金貸しもしていたが、今は廃業していた。


 彼らは江戸中の財務を管理しているため、有力者たちから危険視され、誰も長野家と取引をしたがらなかった。金に目がくらむ池田でさえ関わりを避けていた。末娘のメグミはそれほど危険ではないが、危険なのは現当主だった。


 さらに有力者の間では、彼らが違法な武器や品物を所持しているという噂があった。それが本当であることを、彼らはまだ知らないかもしれない。そしてその品物を売ったのは他でもない——


 あるいは何か企んでいるのかもしれない……


 璃々緒は池田に馬込へ手紙を送り、福岡か大阪へ逃げるよう伝えた。


 予定ではあと数日で池田、玉雄、母が浅草に来るはずだった。しかし今すぐ彼らを浅草から遠ざけなければ、命が危ない。手紙は半月ほどかかるが、運が良ければ十日で届くはずだ。今の時間ならもう池田に届いているはずだった。


 璃々緒は姫子を見て思った。


 もし残された家族が追われることになったら、若様も巻き込まれる可能性が高い。


 彼女は首を振り、そんなことにならないよう祈った。


 そして約束の時間が来た。駕籠を担いだ使用人たちが寺の門の前に並んだ。長野家が到着した。




 二週間前、長野家の主治医が帰った後、当主の坪見は娘と茶を飲みながら話していた。


 軽いノックの音がした。


「何か?」


「ご令嬢にお客様がいらっしゃいました」


 彼女は少し首を傾げ、使用人に茶と菓子をもう一組用意するよう命じた。


 客はメグミの寝室に入ってきた。穏やかで品の良い男だった。白を基調とした着物は女性のように柔らかく、笑顔は心を温かくした。


「あらまあ……一年ぶりかしら? こんなに大切なお客様が来てくださるなんて」


「たまにはありますよ、坪見様」


 彼はメグミの向かいに座り、ちょうど茶の支度が届いた。使用人が茶を注ごうとしたが、男は自分でやると断った。


「それで、何? 突然訪ねてくるなんて。まさか商売が傾いて金に困って来たんじゃないでしょうね?」


「まさか。私はあなたと二人だけで話したいことがあるんです」


 坪見は使用人を見て、ドアの方に目をやった。使用人は頭を下げて退出した。


「何の話? まさかあなたの商売が本当に傾いたとか?」


 女性は冗談めかして言ったが、彼が何を話すか大体予想がついていた。


「場所を変えた方がいいですか? メグミちゃんに聞かせるのはまずいでしょう」


 坪見は眠っている娘の頭を撫でた。


「心配いらないわ……この子はもう眠っているから、何を言っても聞こえないわ」


「そうですか……では、私が話すのは不知火家のことです」


 坪見は少し顔をしかめた。不知火家は自分たちと同じ古い家系だが、別の有力者の分家に過ぎない。なぜそんな重要でない名前を出すのだろう。


「たまたま耳にしたのですが、彼らが裏で何かをしているようです」


「ちょっと待って、片桐くん。あなたは僧侶である不知火家が不道徳なことをしていると言いたいのですか?」


 片桐と名乗る男は菓子を一口食べ、少し間を置いてから続けた。


「まだ確証はありませんが、私の調べによると、不知火家は寺で奇妙な儀式を行い、信者から財産を騙し取っているようです」


「……」


 坪見は目の前の男の言葉を信じたくなかったが、彼は根拠のない中傷をするような男ではなかった。


「最初は将軍に報告して対処しようと思いましたが、状況からして将軍も私の言葉だけでは信じないでしょう」


「だから私に助けを求めに来たのね……」


 片桐は頷いた。


「私が何をすればいいの?」


 片桐はためらわず冷たい声で言った。


「不知火家を『消す』手伝いをしていただきたいのです」


「自分が何を言っているかわかっていますか? もしそれが長野家や青山家ならまだしも、温厚で知られる宮地家の当主であるあなたが、一族を消すなど、きれいな結果には終わらないわよ」


 闇社会では、有力者が相手を消すことは可能だった。一族を消すとは、単に皆殺しにするだけではない。合併や事業を通じた資産の乗っ取りなど様々な方法があった。しかし相手の繋がりや影響力を考慮しなければ、自分が滅ぼされる可能性もあった。


「しかし不知火家がしていることは、許されることではありません」


「彼らと繋がっている者は?」


 片桐と坪見は、子家の一部が有力者と秘密の取引をしていることを知っていた。自分の家を守るためだった。不知火家が青山家のような危険な家と取引していれば、事態は深刻だった。


 片桐は首を横に振った。坪見は長野家のイメージとは正反対の提案をした。


「あなたが黙って見過ごせないのはわかるわ。でも息子や娘たちももう立派に育っているのよ。一時の感情で彼らの未来を台無しにしないで」


「わかっています……しかし」


 坪見はため息をついた。目の前の美しい青年の顔が曇っているのを見て、心が揺れた。


「それで、あなたの計画は?」


 止めることができないなら、一緒になるしかない。片桐は不知火家の行為がどれほど邪悪かを証明する証拠を求めていた。そして坪見は大胆な計画を思いついた。


 その計画は、宮地片桐が意図したものと大差なかった。




 現在。


 二人は長野家の現当主の到着に深々と頭を下げた。彼女は二人に微笑みかけた。璃々緒は体を強張らせ、姫子は少し呆然とした。


 もし何か起きたら、若様をすぐに掴んで逃げる。


「坪見様、ご足労いただきありがとうございます。では、ご令嬢をここにお寝かせください」


 直美は不思議な形の絹の布を指し示した。坪見は使用人に合図し、メグミを寺の中央の布の上に寝かせた。周囲は神の奇跡を見たい信者たちで囲まれていた。


 坪見は周りを見回し、片桐の言葉が正しいことを確信した。彼女は信者たちの恍惚とした表情を見てから、姫子に視線を移した。


 姫子は小さく身じろぎして応えた。坪見は優しく微笑み返した。


 [この子が片桐くんが言っていた神の依代なのかしら?]


 聞くところでは、彼女はただ座っているだけで、あとは両親がすべて取り仕切るらしい。


「坪見様、どうか手を合わせ、心を集中させてください」


 坪見はゆっくり目を閉じ、二人の言う通りにした。そして昨日の主治医の言葉を思い出した。


 [申し訳ありませんが、お嬢様の症状からすると、もう長くは持たないでしょう]


 [もう少し命を繋ぐことはできないの?]


 [できますが、それは彼女を苦しめるだけです]


 [うっ……! 母上、母上、痛い!! すごく痛いよ]


 [頑張って、メグミ。母さんはあなたが絶対に良くなると信じているわ]


 娘がもう長く生きられないことを心ではわかっていながら、彼女は娘を慰めるためにそう言った。


 だから彼女はただ娘の手を握り、離さなかった。そして間もなく、片桐と取引をし、娘の本当の気持ちを知った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。