第10章 : 不知火姫子 4
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「ここが吉原なの? すごく豪華ね。桜がこんなにきれいに咲いているのも運がいいわ」
「昼間でも十分華やかですが、夜になったら本当にすごいんですよ」
「す……ご……い?」
少女たちは大通りを歩き、歩き疲れてお腹が空いたので近くの店の前で菓子を食べた。
「つまり……時々母国語が出てしまうんです。見逃してくださいね」
理由はわからないが、少女は了承した。菓子を食べながら見知った顔を見つけた。
「にゃー〜〜」
「この猫ちゃん!!!」
それは門の手前で出会った三毛猫だった。
「あっ! 土御門様、どこへ行ってたんですか。心配しましたよ」
「これがこの子の名前なの? ……す……ご……い?」
猫は甘い菓子の匂いを嗅ぎつけ、素早く姫子の膝に飛び乗り、転がりながら「にゃー」と甘えて菓子をねだった。
「この猫、まるで野良猫みたいね。どこへ消えたかわからなくて探し回ったわ。こっちに来なさい、この化け猫!」
マーベルが素早く猫を抱き上げ、腹に顔を埋めて強くキスをした。猫は嬉しそうに「にゃー」と鳴いた。
「マーベル、そんなに強くしないで。あ、はい、どうぞ。甘いお菓子」
猫は素早く菓子を口に運んだ。
「そういえば……この猫が君たちのものだとは知らなかったわ」
「実は土御門様はこの辺りの野良猫なんです。マーベルが可哀想だと思って店に連れて帰って、店の人たちで世話をしています。だからこんなに丸くなったんです」
「本当は私が『たこ』って名前をつけたんだけど、クロエが勝手に派手な名前をつけて、店の人たちもそれに賛成しちゃって」
「へえ……この店の皇帝ってことね」
「メスですよ」
「あら、そう。じゃあ皇后ね」
「猫は人間より上の存在ですわ」
「違うでしょ」
「ということは、君たちは遠い異国から来たのね。本当なんだ」
「ええ。私とマーベルは元々貧しい家庭で育ち、同じ村だったのでよく一緒に遊んでいました。でも親が育てきれなくなって、教会のシスターに預けられたんです」
「それ以来、私たちは神の教えを広める者として育てられました。いつも、神は私たち人間を導いてくださる存在だと教えられました」
「その場所にいた人々は、神が祈りと賛美を捧げる限り、私たちを守ってくださると信じていました」
「しかし、時が経つと故郷の土地で戦争が起き、人々が傷つき、飢え、絶望しました。私たちは神に身を捧げた者として、人々から頼りにされました。そしてその時、私たちは知ったのです……」
「どれだけ人が傷つき倒れようと、どれだけ飢え乾こうと、どれだけ絶望しようと、私たちが信じ、身を捧げた神は、一度も私たちを助けに来ませんでした」
「それでも人々は信じ続けました。中には『戦争は神が私たち罪人を罰したからだ』と言う者もいました。私たちが自分で招いたことなのに」
「そして長い間、祈りと賛美が何の効果ももたらさないとわかると、私たちは詐欺師だと非難されました。その一人に、私たちの両親もいました」
「異教徒ども、どこかで死ね。あれはそこにいた人々、そして私たちの両親の言葉です。だから故郷を懐かしむことはありません」
「でもここで生きる機会をいただいたので、私たちは残りの人生を精一杯生きることに決めました。目に見えないものはもう信じません」
「「二度と傷つかないために」」
彼女はただ静かに聞き、言葉を分析し、考えていた。理解できない感情を心の奥底に押し込めた。
彼女は無理に笑顔を作り、二人の少女に「大変だったのね」と言い、無理に同情の表情を浮かべた。
しかし小さな心は、ゆっくりと崩れ落ちる建物のように崩壊し始めていた。叫べるなら叫んでいただろう。
でもそんなことをすれば、自分はきっと狂ってしまう。璃々緒に迷惑をかけることになる。
震える唇、今にも涙が溢れそうな目を抑えきれなくなっていた。
誰しも彼女と同じだった。誰もが残酷な目に遭い、何も悪いことをしていないのに。
それでも皆、誰にも悟られぬよう隠し、心を決めて前に進む。でもそうすればするほど、テープで塞いだ傷口は少しずつ裂けていく。
結局、彼女たちはただ、時代を間違えて生まれてしまっただけだった。
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「あ……もうすぐ正午ね。マーベル、姫子をあそこへ連れて行きましょう」
「えっ……でももう夏なのに、春みたいにきれいなの?」
「花の園よ……」
「まったく……あの三人はどこへ行ったのよ。戻らないと若君様たちにバレてしまうわ。それに夏なのに桜があんなに咲いているなんてすごいわね。うーん……」
璃々緒は春が過ぎたのにまだ咲いている桜の木を見つめ、道端の菓子屋に気づいた。子供たちが菓子を食べながら楽しげに話しているのを見て、幼馴染と初めて出会った時のことを思い出した。
[ねえ君……一人で食べてて寂しくないの?]
[……別に。 一人で食べようが何人で食べようが大して変わらないよ]
[そう……璃々緒ね]
[……池田]
[噛みつかないよ。そんなに警戒しなくてもいいのに]
[……ごめん。じゃあお詫びに一個二個もらって]
[もう謝ったのに、お詫びの品を渡す必要ある?]
[えへへ……忘れてたけど……ただあげたいだけ。受け取ってよ]
[見慣れない顔だね。君、この辺りの子じゃないよね]
[うん……浅草から来たの。昨日ここに来たばかり]
[浅草! じゃあ君は都の子なんだ! いつか俺も行ってみたいよ。聞いた話だと、食べ物がいっぱいで光と音と色がすごいんだって]
[まあ、そんなところかな]
[行きたいなあ……]
[ねえ池田……遊ぼうぜ!]
[おい! まだ朝早いぞ。どこへ急ぐんだ]
[今日は玉雄も連れて行くよ。挨拶しなよ]
[こんにちは]
[はあ……行くなら行くけど、また山登りするなら俺は帰るからな]
[わかった!!!]
「昔のことを思い出すなんて……昔はもっと格好良かったのに。何食ったらあんな風になったんだろうな」
「まあ、彼のせいじゃないわね。私も昔はあんな感じだったし」
今になって、自分が変わったことに気づく。怖いほど変わった。あの頃の自分なら、来江の有力者の一人であるマエに堂々と話すことなんてできなかっただろう。
池田がいろいろ教えてくれたおかげかもしれない。
「ねえ池田……これ、欲しがってたよね。買ってきたよ。ほら! ありがとうって言いなよ」
「声が殴りたくなるわね」
彼がそんな風に振る舞うから、よく頭を痛くした。でも一緒にいると、いつも楽しかった。
『どうやら彼は突然、外国からの武器や品物の販売をやめたらしいわ』
「バカ野郎……」
バカな真似をするなら、もう少し控えめにやってくれよ……
「ここにいたの? 探し回ったわよ。もう帰らないと」
「あっ! 璃々緒、早く来て! この花見て、すごくきれいよ」
「そんなに強く引っ張らないでよ」
目の前には果てしなく続く花の園が広がっていた。璃々緒は目を見開き、その美しさに言葉を失った。
「ちょっと待って……もう夏なのに?」
彼女は夏に咲く花があることを知らなかった。だからこそ、その光景にさらに感動した。姫子はマーベルの手を握り、マーベルはクロエの手を握り、まるで幼稚園児のように手をつないで紫陽花の園へ走り出した。四人は果てしない花の海を、幸せそうに駆け回った。
「すごい……世界にこんなものがあるなんて思わなかった!」
一番興奮していたのは、やはり姫子だった。彼女は寺に閉じ込められていたから。
「そうですね……何度か見たことはありますが、それでも感動します」
この一ヶ月、姫子は外の世界をたくさん見て、学んだ。璃々緒も主を連れて様々なものを見せられるのが楽しかった。
「ここは皆で力を合わせて植えて、世話をしているんです。姫子がこんな顔をするのを見ると、すごくやりがいがあります」
「へへ」
すると璃々緒は、若君様たちがもうすぐ帰ってくることを思い出した。
「あの……若様、もう帰らないと」
「えっ……もう帰るの?」
二人の少女も午後の太夫の行列の準備をしなければならないことに気づき、ここで別れることにした。璃々緒には、姫子がまだもっとここにいたいのがはっきりわかった。
「若様……若君様たちがいない日には、またここに来ましょうね」
「嘘じゃないわよね……」
「若様も知ってるでしょう? 私は嘘をつきません。それに、若様に私のもう一人の友達にも会わせたいんです。でも時間的にまた今度にしましょう」
「もう一人の友達……いいわ。私も友達がいっぱい欲しいもの」
二人は美しい花の園を背に帰路についたが、姫子は何度も振り返り、再び来ることを心に誓うように花々を見つめた。帰り道で二人の外国の少女と出会い、「また会いましょう」と手を振り合った。




