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家ネコファンタジー 異世界で人になった雌猫は猫になった御主人と一緒に冒険をする  作者: 秀典
カラスさんカラスさん、なんでそんなに真っ黒なの?
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新たなるリュネの未来

 グラファアとの戦闘は長く激しく、皆は疲れ果てている。

 電撃が効かないギードが参戦したけど、あんまり状況は変わっていないよ。

 それでも諦めずに立ち向かい、倒そうとしていたんだ。

 そんな時にギルドのタウナが戦場に現れたの。

 皆の力を束ねて私に力を与えてくれたんだ。

 それは大きくて、暖かくて、枯れていた力を湧き上がらせたんだ。

 そのお陰でグラファアを退治することができたけど、リュネの方もどうにかしないとだね。

 私はギードを連れてお部屋に戻って行ったんだ。

 うわあああああっと、泣き叫ぶリュネの前で、


「まだ若いお前に全てを理解できるとは思わない。それでも一から説明するとしよう」


 ギードは落ち着いて口を開いたんだよ。


「俺が作られたのはグラファアという男が不死のゾンビを研究する為だった。多くの人体実験の中で、

突然変異とでもいえばいいのか、ベースとなった人間の意識……いや、その知識のみを得たのが始まりだ」


 どれだけダメージを死なないぐらい丈夫だったのはそのためだね。


「一時はグラファアの思考を理解しようとしたこともあるが、考えることができる俺にはどうしても理解して飲み込むことが出来なかったのだ。袂を分かつためにグラファアが俺を王妃に見せた時、奴の野望を伝えることには成功した。そして奴を捕まえようとしたのだが、ゾンビ化の実験は俺の知らぬ間に完成に至っていたらしい。城の兵士達が次々ゾンビ化して、その隙に奴は逃げ出したのだ。俺は奴を追いかけたが、結果取り逃がしてしまったのだ」


 お城のゾンビ事件、私も巻き込まれちゃったんだよ。

 多くの人が犠牲になった悲しい事件だね。


「奴の手掛かりを得るために俺は町中を駆けずり回った。その過程でお前の家を訪ねたのだ。しかし、お前の父親にもその毒牙が向けられていたのだ。俺と話している最中、突如ゾンビ化の進行が始まり、結果、火を放たねばならなくなった」


 それがリュネの家の事件の真相。


「分かれとは言わない、だがそうしなければ多くのゾンビを生み出し、果ては町が崩壊する事態にもなりえただろう。……それと、残念ながらお前の母親のことは分からない。その時にはお前の家を脱出した後だったからな。……あとはお前の知っている通りだ」


 話は終わったみたいだけれど、リュネは全然理解してくれないみたい。

 叫んだままで聞く耳を持ってくれないの。


「そうか、ならばお前の好きなようにしろ」


 だからギードがまた剣の柄を渡すように前に突き出したんだけど、


「それはダメだよー!」


(うん、ダメダメ!)


 私達が止めたんだよ。


「ではどうする、このまま気が晴れるまで泣き続けさせるのか?」


 そう聞かれるとどうすればいいのか分からないけど。

 うーん、本当にどうしよう?

 流石にこれを解決できる魔法はないよね?

 ちょっと悩んでいると、


「話は聞かせていただきました。私がそれを提供して差し上げましょう」


 この声はさっき助けてくれたタウナの声だ。

 気配は近くにないけれど、あ、冒険者カードから聞こえてくるみたい。


「そちらに向かいます。少々お待ちを」


 少しだけ待っていると、タウナが私の部屋に来てバンと扉を開けたんだ。


「ここからは私にお任せください。色々お世話になったお礼です」


 タウナはそう云って近づいてくる。

 怒り任せに暴れ出しそうなリュネの額にちょんと魔法の杖を当てるとスッと意識がなくなって眠っちゃったの。


「流石にこの年齢の子には重い話すぎますね。今は記憶を封印して少し記憶をいじらせてもらいましょう。もう少し物事が判断できるようになればまた違った決断ができるはずですから。ですがそれを維持するためには切っ掛けを作らせてはなりません。あなた方には速やかにこの国を出て行ってもらう必要があります。国を救って貰った英雄に云う言葉ではありませんが、なるべくなら受け入れてもらいたいですね」


「ああ、受け入れよう」


 ギードは直ぐに頷いたよ。

 結局先延ばし。

 でも今はその方がいいのかもしれない。

 私達も元々この国に住んでいた訳じゃないし、それはいいんだけど……。


(モモ、この子がどうなるのかちょっと聞いてみて)


「うん、あのね、リュネはこれからどうなるの?」


 折角助けたんだから気になっちゃうよ。


「そうですね、たぶんこのギルドで預かることになるでしょう。私も親代わりという訳には行きませんが、それなりの扱いと幸せは保証いたしますよ。食事も住居も、ついでに仕事の面でも心配はありませんから安心してください」


(モモ、それがリュネの為っていうなら従うしかないのかもね)


「そっか、でもこっそりなら見に来てもいいよね?」


「……まあそのぐらいなら構いませんよ。ただし、絶対内緒でお願いしますね。先ほどもいいましたがこの魔法が解けてしまうかもしれませんので」


「うん!」


 私はすっごく大きく頷いたんだよ。


「話がまとまりましたね。それでは英雄よ、我がギルドの持て成しを存分に堪能して御帰還くださいませ。さあ行きましょう。終わりと始まりの祝勝パーティーです」


 このお誘いに乗れば美味しいものが食べられる。

 でも、今私だけが御馳走になって、その料理は本当に美味しく食べられるのかな?


「……ううん、私、我慢するよ。だってリュネも我慢してるんだもん」


「……そうですか、確かにそうかもしれませんね」


「あ、そうだ、それとね」


 私はごそごそと道具袋を漁ったの。


「これリュネに使ってあげて」


 持って来たお金を全部、ディズの分も全部タウナに手渡したんだ。

 私を助けてくれたこの人なら、きっとちゃんとやってくれるよね。

 でもこれで帰りの旅費もなくなっちゃったよ。


「ええ、確かに承りました。これは全てリュネの為に使わせていただきます」


「うん、お願いね!」


「それでは失礼を、皆様お元気で」


「タウナ、バイバイ!」


(色々ありがとう!)


 私達はお礼を言って別れたの。


「それでは俺も行くとしよう」


「ギード、どこに行くの?」


「さあな、気が向くままだ」


「だったらウィーディアに来ない? 私の知り合いとかもいっぱい居るんだよ!」


「遠慮しておく。お前と一緒にいることが万が一にでもこのリュネに知られればろくな事にはならないからな。だからここでお別れだ。もう会うことはない、さらばだ」


 ギードはもう歩みを始めている。

 その意思は変わることがないのかも。


「バイバイ、ギード」


(さようならギード、モモを助けてくれてありがとうね)


 私と御主人はその背中を見守ったの。

 あとは、私達が出発するだけだね。

 でもその前に、ちょっとだけおまじない。


「猫猫召喚、幸せの黒猫ちゃん!」


 ピョーンと飛びだした黒猫ちゃん。

 この子は敵の弱点を探してくれるけれど、名前の通りに幸せも探してくれるはずだよ。


「黒猫ちゃん、リュネの幸せを探してあげて」


 黒猫ちゃんは、いいよっと返事をしてリュネを見つめたの。

 それからリュネの中に飛び込んで、しばらくしたら戻ってきた。

 きっと幸せになるって云って消えて行ったよ。


「御主人、大丈夫だよね?」


(うん、きっと大丈夫だよ。さあ僕達も出発しよう。リュネが起きちゃったら不味いからね)


「じゃあ、元気でね。リュネ」


 私はリュネの頭を撫でてこの部屋を出たんだ。

 タウナも黒猫ちゃんも、大丈夫だって云ってるから絶対大丈夫だよね。

 そう信じているよ。

 私は御主人とディズを連れてウィーディアに向かって走り出したんだ。

 帰りはちょっと大変だけど、たぶんなんとかなるよね?


「にゃあああああ!」


 来た時は四日ぐらいかかった。

 何にも食べずに丸一日も走り続けたけれど、


「もう無理ー、お腹空いたよー!」


 私の体力は限界を迎えたんだ。

 町にはもう直ぐだけど、そこについてもご飯は食べられない。

 そんな絶望感が私の足を止めちゃったよ。


「お前が全部路銀を渡しちまったからどうにもならねぇんだろうが! 何で俺の分まで渡しちまうんだ!」


「えー、ディズって全然活躍してなかったからそのお礼?」


「……分かった、誰の礼なのかも全然納得もできねぇけどそいつは受け入れよう。で、だ、体力も飯もねぇ俺達がこれからどうするかってことだ! ウィーディアに着くまで時間が掛かるんだぞ」


「うーん、狩る? こう、シュッて!」


 私は爪で引っ掻く仕草をしたの。


「カル? ああ、狩りか。確かにそれなら金もかかんねぇな。俺達の速さならそう手間もかかんねぇだろ。残りの体力を使えばなんとかなりそうだ。だがな、それをどうやって調理するんだよ。火起こしするような道具すら持ってないんだぞ!」


「じゃあ生でいいよー」


「食えるかああ! ちゃんと管理した肉じゃねぇんだぞ、普通に病気になっちまうわ!」


(うーん、僕も生はちょっと遠慮したいかも。まあどうしてもそうせざるを得ないのならそうするしかないんだけど)


「じゃあ私が生肉を食べて二人を運ぶよー」


「そうなると俺とその猫は二日間何にも食えねぇんだが!? それにお前がもし病気にでもなったらもう本当にどうにもなんねぇぞ!」


「えー、じゃあどうすればいいのー?」


「そりゃあ、やっぱり仕事するしかねぇぜ」


 やっぱりそうなるのか。


「じゃあご飯を食べる仕事がいいなー!」


「そんな仕事があるわけねぇだろ! ほら行くぞ、こうしてたって腹が減るだけだからな!」


 私達は近くの町まで必死に歩いたんだよ。

家猫のモモ

御主人ごしゅじん(ヒロ)

王子シャーン

王女ルシフェリア

王女イブレーテ(長女)

シャーンのお母さんテルナ

グリフ・リスマイヤー

青鎧のブルース・グライブス

教育係アリア・ファイリーズ

赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)

桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)


ベノム(ブレードバード隊、隊長)


ルーカ(孤児)

プラム・オデッセイ(里帰り中)

ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)


クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)

シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)


剣と魔法の世界 ミドレイス

翼の生えた子供 ウリエリア

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