しらない世界
部屋にグリフがやってきて何か喜んでいる。
ウォームラビット達の技術で剣や鎧が持ち歩かなくてもいいようになったんだって。
見せてくれたけど、成功した代わりにフカフカな椅子がビリビリに破れちゃった。
今度新しいのを持って来てくれるんだって。
グリフは帰ったけれど、私と御主人はウォームラビット達の働く研究所へ。
まだまだ準備中って感じで私も手を貸したんだ。
それでね、ラビッシュって子を紹介されたんだけど、いきなりすごいことを頼まれちゃったの。
あの草原にあったよく分からない所にまだ何か居るんだって。
御守りだって腕輪を渡され、私は草原に向かったんだ。
そこには何にもなかったんだけど、突然腕輪が輝いて、気づいたら知らない町で寝転がっていたの。
私は小さな子供になって、御主人もお友達も見当たらない。
本当にどうしよう。
行く当てもなく、直ぐに息切れしてしまうぐらいに体力がない。
走れる距離もそんなにないし、歩き続けると足が痛くなるし、本当にどうすればいいんだろう……。
ねぇ、誰か教えてよ。
お願いだから、帰る方法を教えてよ。
でも誰に話しかけても言葉が全然分からないんだ。
すごく、泣きたくなっちゃう。
どうしよう、どうしよう、どうすれば、どうすれば……。
延々にそれの繰り返し。
私は次第に気力を無くし、道の真ん中で膝を抱えてしまった。
せめて誰か隣に居てくれたなら。
そう思った瞬間、身に着けていた腕輪が光り……。
(あ、繋がりましたです。モモ様、ラビッシュです)
さっき知り合ったラビッシュの声。
とても心強い。
「ラビッシュ!」
(御主人様から事情は聞きましたです。たぶんあなたの精神と肉体は何らかの事情で自分が居た時代の人物と同調していると思うのです。まずはその時代の自分に会ってくださいです!)
「ラビッシュに会えば帰れるの!?」
(はいです! 先ずは一番大きな建物に進んでみて特徴を教えて下さいです!)
「うん!」
絶望から希望、私の顔は明るくなったの。
痛みも疲れも吹き飛んだんだ。
一番大きな建物は……あれかな?
歩いて行くともっと大きな建物が現れたんだ。
ずっとそこを目指して進み続けたよ。
「ねぇ、ここはどこなの?」
(あなたが居るのはたぶんラグリンジュです。ここは魔法の技術が発展した人の町、人間だけの楽園なのです)
その間にこの町の成り立ちとかを聞いたんだ。
「そうなんだー?」
(ええ、この時代に初めて魔法という概念が出来たのです。始まりの魔獣、クリアルクスの力によって――)
クリアルクスはありとあらゆる万象を操る唯一の存在だったんだって。
その寿命は永遠であり、人類にとっての災厄と呼べる存在だったの。
時には竜巻を、時には洪水を、地震すらも操り、害をもたらすんだ。
だから人類は抵抗したの。
ありとあらゆる手をもって抵抗して抵抗して抵抗して抵抗して、数千年をかけてようやく捕まえたんだって。
でもね、封じるのにも莫大な力が必要だったんだ。
それで創り出されたのが生きた電池で愛玩動物だったウォームラビット族なの。
ラビッシュもその一人だったんだって。
お陰で魔獣の封印は安定したらしいけど、想定外の自体が起こったんだって。
それが魔法、万象を操る物理法則の無い力。
魔獣の力か、ウォームラビットの力か、それとも封印の機械の影響かは分からないけど、その日から人類が魔法を操ることが出来るようになったんだって。
それは少しずつ発展して人類になくてはならない物になったって云っているよ。
「やっと着いた!」
それで色々な話を聞いてこの場所に辿り着いたんだ。
ひときわ大きくて、上を向いても頂上が見えないぐらいに高いんだ。
「ここからどうするの?」
(中に入りたいところだけれど、子供が簡単に入れる場所じゃないんです。まずはここの研究主任、シープ・ランド・リチュアを訪ねるですよ。彼女はこの隣の建物に住んでいるはずです)
「でも言葉が通じないんだよ?」
(それなら大丈夫、今調整を……できましたです! もう周りの声が聞き取れるんじゃないです?)
「そーかなー?」
ちょっと聞き耳を立ててみると、奥さんがどうとか旦那さんがどうとか他愛無い話をしているよ。
聞き取れるようになっているみたい。
これならいけそうだよ。
私はラビッシュの指示に従い隣の建物にコッソリ侵入したんだ。
「ラビッシュ、何処の部屋にいけばいいの?」
(確かここの四階、その一番右端の部屋だったです)
「わかったー!」
私はその場所にある扉をノックしてみたよ。
声をかけても返事が返ってこないんだ。
留守なのかも?
(たぶん仕事中ですよ。帰ってくるまで待つしかないです)
「うん、でもお腹空いたなぁ」
(帰って来るまでの辛抱ですよ)
「すぐ帰って来るかなぁ?」
(どうですかね……?)
お話ししながら待っていたけど、シープ・ランド・リチュアが戻って来たのは日が落ちてちょっと寒くなってからなの。
長身で長い銀髪、白衣と眼鏡、全体的に長細い。
そんな人が自分の部屋の前に居る私を見て、何事かとビックリしている。
「な、何者!?」
それでようやく言葉を発したと思ったらこんな感じなの。
(モモ様、何とか説得を)
そう云われてもどうすればいいのか困っちゃうよね。
私は必死に考えて……。
「うーん、え~っと、あのー……お母さん!」
そう答えたんだけれど、
「私はお前のようなでっかい子供を産んだ覚えはない! 人違いだ、帰れ!」
追い払うようにシッシって手を払っているよ。
「ラビッシュ、どうしよう?」
(こちらの事情を素直に説明するです。それしか方法はないのです)
「どうした、退かないのか。そうならば警察をよぶしかないぞ!」
シープはこんな感じだよ。
「私ね、今からずっとずっと遠い未来から来たんだよ! でも帰れなくなっちゃって、だから手を貸してほしいんだ!」
「子供の妄想を聞いている暇はない。本当だというのなら何か証拠を見せてみろ」
(仕方ないですね、この腕輪を渡してみてくださいです。自分が直接説明してみますです)
私は頷き、自分の腕にあった腕輪を取り外したの。
「これを身につければ説明してくれるって」
「これを? ふん、まあいい。試すだけはしてやる」
と、云いながらシープが指輪を取り付けた。
「……やはり何も起こらな……ん、声が聞こえて……?」
それからシープが距離を取り、すごく小声でラビッシュと言い合っている感じ。
きっと私のことをお願いしているんだろう。
大人しく待っていると、家の前に戻ってきたの。
「分かった、家の中に入れてやる。これは面白そうなことになってきたぞ」
それで私は家に通されたんだよ。
中は……あんまり掃除はしていないみたいだ。
研究で忙しいのかな?
それでご飯を用意してくれたから私は信用しちゃったんだ。
「いただきまーす!」
パクパクご飯を食べて満足したんだけれど、シープは私と話もせずにお酒を飲んで寝室に行っちゃった。
覗いて見たらもう寝ちゃっているの。
疲れているみたいだし、起こすのも可哀想だよね。
私はそっと扉を閉じて近くの椅子にゴロンって寝っ転がったんだ。
そして朝。
ふわーって起きると朝食の準備がしてあったんだよ。
パクパクって食べ終えると、
「おい、これを返す」
シープは渡していた腕輪を返してくれたの。
腕に装着したんだけど、ラビッシュは答えてくれないんだ。
まだ寝ているのかな?
「出かけるぞ、準備をしろ。……といっても何も無いか。私について来い」
「うん!」
連れていかれたのはこの建物の隣にある目的の場所。
アカシックベース、魔導研究所だったの。
中は病院みたいな感じ。
あんまり良い予感はしない。
「ここで何をするの?」
「決まっている、お前の体がどうなっているのか徹底的な検査だ。まあ安心しろ、MRIやCTをしてお前の血を抜かせてもらうだけだ」
「注射ああああ!?」
「何だ、苦手か? やらないというのなら協力はしないぞ」
注射はとても嫌いだけど、我慢しないと帰れないかも。
「ううう、わかったよー……」
私はそこで色々な検査をして注射とかもされちゃったんだ。
すっごくすっごく我慢したんだよ。
「未来人という割には今の人間と何の代わり映えもしないようだ」
「私、本当は猫の耳と尻尾とかあるんだよー。この世界に来てから別人になっちゃったみたい。本当はもうちょっと大人なの!」
「ほう、それは興味深いな。是非本人に会ってみたいものだ」
でもこれで進めるかも。
家猫のモモ
御主人(ヒロ)
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女イブレーテ(長女)
シャーンのお母さんテルナ
爺
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




