その鍵は
しらない世界に飛ばされた私。
小さな子供の姿になり、彷徨うことも出来ない。
そんな時に腕輪が輝く。
ラビッシュの声が聞こえて私の心は落ち着いたんだ。
指示に従って高い建物を目指すと、その隣の建物に住むシープという女性を訪ねたの。
何とか説得して泊めてもらえたんだよ。
検査を終えた私は建物の中を案内されたの。
この研究所は、魔法というものがどういう仕組みで発生するのか、どのような力が発現するのかの実験が行われているみたい。
ガラス張りの部屋の向こうで、指先に火を出したり数滴の水を垂らしたりする人の姿があるよ。
私が住んでいた時代と同じではあるけど、まだまだ発展途上という感じ。
それに、研究されているのはそれだけじゃないんだ。
亜人種やモンスターと呼ばれる者達。
彼等は人と獣などの混合体で、身体能力の強化を目的として作られているんだって。
素体となっているのは減刑を望む犯罪者とか、お金を貰って自ら望んだ人達だそうだよ。
あとは、ウォームラビット族かな。
彼等はこの建物の中でも至る所に存在しているの。
人のパートナーとして手を貸したり、自らの力を電気のように変換したり、ほら、そこの壁のガラスの棺にも収まっていたりするんだ。
私としてはちょっと可哀想な感じがするけど、出入りも自由で、リフレッシュもできるから大丈夫なんだって。
それなら私が口を出すことじゃないのかなぁ?
肝心なのは私がどう帰るってことだよね。
「ねぇ、ラビッシュはどこに居るの?」
「ラビッシュか、それならあそこだ。赤いスカーフをつけている奴だぞ」
シープが指をさした先。
ウォームラビットが走り回っている。
その中の一人が赤いスカーフをつけているよ。
「会わせてくれる?」
「構わない。が、今の奴に高度な知能はないぞ。未来の話をしたとしても通じはしないだろう」
そっか、今のラビッシュは向こうでの出来事を知らないんだよね。
「それじゃあどうすればいいの?」
私はシープに聞いてみたんだ。
「ふむ、未来の奴がいうには近い内に魔導炉が暴走して酷いことになるらしい。それを防げということらしいが、決まった未来があるというのに防げるのかという疑問だな。もし防げたとしても、お前達の世界が一瞬で変化することになるのか? それともその時点で別の世界となるか……魔法という物が存在するにしろ、物理法則に反している気がしてならないが?」
シープは何か色々考えているみたい。
結局どうすれば?
「えーっと、つまり私は何をするの?」
「ああ、そうだな。お前には炉の制御キーを持って来てもらいたい。当然だが簡単なことではないぞ。各所にある監視カメラや警備の手もあるからな」
「私にできるのかなぁ?」
今は力も弱くて速く動くこともできないんだよ。
「普通ならばできない。が、今日だけは別だ。極秘裏に警備システムのメンテナンスが行われる。約五分間、その間は目視でしかチェックすることはできない。つまりそこが狙い目だ。まだ時間はある、それまで徹底的にこの建物の地図を頭に叩きこめ」
「うん、それはいいけど、制御キーって見てすぐ分かる物なの?」
「ああ、すぐ分かる物だ。部屋の中央にある台座におかれているぞ」
「そっか、じゃあ頑張るよー!」
私はシープに渡された地図をじっくりと見続けたよ。
えーっと、制御キーがあるのは三階、この階だね。
ここからの道順も大丈夫。
準備万端、そして時間がやってきたの。
ブンって電気が落ちて暗くなったんだ。
「時間がない、さあ行け」
「うん、行ってきまーす!」
私は扉を開けて走って行ったよ。
周りには厳つい人達が歩いている。
なるべく捕まらないように、言い訳を考えながら三階に向かったんだ。
でもね、私は片目に傷がある色黒の大男に直ぐに捕まっちゃったの。
顔も形も全然違うけど、何となくベノムに似ているような……もしかして先祖の人?
「おいお嬢ちゃん、勝手に走り回ったら行けねぇぜ。ここは重大な施設なんだからな」
ギロって睨まれてちょっと怖い。
「私おトイレ行きたいんだ! 早くしないと漏れちゃうよー!」
それでも勇気を出してバタバタと暴れたんだよ。
「トイレだぁ!? ちょ、待て、もらすんじゃねぇーぞ! 確かあっちに……」
と、別の場所に連れていかれようとしているけど、
「待って、あっちのトイレに忘れ物してるの。大事な物だからそこに行きたい!」
「はぁ!?」
私は制御キーがある部屋の近くにある場所を指さしたんだ。
「あー、もう、仕方ねぇなぁ!」
それで首根っこをつままれて子猫みたいにトイレまで連れていかれたんだよ。
そのオジサンは流石に入ってこなかったけど、ここからどうしようかなぁ?
時間もないし説得している時間はないの。
うーんとうーんと……あ、そうだ!
私は開けてあった扉をガチャッと閉めて隣のトイレから抜け出たんだ。
「た、大変だー。トイレの中に人が倒れているよー! おじさん、助けてあげて!」
「はぁ!? いやしかし俺が入るのは……。ああもう、女の人を呼んで来るからちょっと待っていろ!」
と、おじさんは仲間を呼ぼうとしているけれど、
「でも早くしないと死んじゃうかもしれないよ。おじさん、早く助けてあげてよー!」
私は涙ながらに訴えたの。
「う、いや……。分かった、行ってやる。その代わりこのことは秘密だぞ!」
「早く早く」
って私はオジサンの背中を押したよ。
中に入ったのを見届けて、私は鍵のある場所に向かったんだ。
おじさん、後で謝るから許してね!
扉の前に人は居ない。
今なら行けそうだったんだけど、
「おい止まれ、そこはお前のような子供が入れる部屋じゃないぞ!」
角から曲がって来た人と目があっちゃった。
「騙しやがったな、この悪ガキがあああ!」
それにトイレに入っていたオジサンにもバレちゃったよ。
鍵は取れても持ち帰れないかもしれないよ。
でも行かなきゃしょうがない。
私は部屋の扉を開けて中に入ったんだ。
二人とも私を追い掛けてくるけれど、もう制御キーは手の中なの。
「それは重大な物だ! 放さないと子供でも容赦はしないぞ!」
オジサンと集まってきた人達が私を囲むようにして武器を構えている。
私にも武器があれば、あの剣さえあれば戦えるのに!
その想いを感じ取り、制御キーが形を変えていく。
間違いない、これは……。
「キャットスレイヴ!」
こんなに昔からあるものだったんだね。
でもこれさえあれば、子供の体でもなんとかなる!
私はキャットスレイヴを一気に分岐させて全員を拘束させたよ。
「な、これは、なんだ!?」
トリニティだって動けなかったし、普通の人間じゃ解けもしないの。
「オジサンごめんなさい、後で謝るから許してね!」
「ま、待て!」
私は隙間をすり抜けて部屋を脱出したんだ。
でも外にも人が増えていくの。
私は危機を回避しながらシープが居る部屋に向かったよ。
あんまり距離はないはずなのに、物凄く長い時間に感じちゃった。
「取って来たよー! それでどうするの、いっぱい人が集まって来ちゃうよー!」
「……おや、まさか成功するとは思わなかった。まあそれはそれで上々だな。計画が一段階早く進められそうだ」
「なにそれー」
「簡単に言えば囮に使わせてもらったということだ。時間稼ぎ助かったぞ」
「じゃあもう大丈夫なのー?」
「私がやれることは大体終わらせた。もし炉に何かあった場合は研究所内部の扉を全てオープンにさせるようにしたぞ。これで実験体も逃げられる。あとは、その制御キーで直接内部を確認しに行くだけだ。暴走する時間が来る前に炉に急ぐぞ」
「うん!」
私とシープはドンドン流れてくる警備の人達を躱しながら一緒に地下深くに急いだんだ。
大きなタービン? みたいな物が真ん中で回っていてその下の大きな機械が魔導炉なんだって。
そのまま網目状の通路を進み地下深く。
辿り着いた心臓部。
「さて、制御キーを貸せ、それを使って炉の状態を調べる」
「いいけど、絶対皆ここに来るよ?」
「私を舐めるなよ、それまでに全て終わらせてやる!」
私がキャットスレイヴを渡すとシープはすごい勢いで指を動かして機械を調整していくの。
そして数分後、
「この下だ、全員急げ!」
ってオジサンの声が聞こえて来たんだ。
もうちょっと待っていてほしかったなぁ。
家猫のモモ
御主人(ヒロ)
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女イブレーテ(長女)
シャーンのお母さんテルナ
爺
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




